第62話 犯人、こいつでした!
期待外れな二次転職を終えた俺。
正直、かなり転職に期待を膨らませていたのもあってか、今は完全に意気消沈といったところだ。
しかしまだ第二ステージは終わっていない。
気は進まないけど、進まなくちゃ……。
「せめて俺以外のみんなが良い転職でありますように」
そんなささやかな願いを込めながら自分のターンを待っていると、
(おーい! おい! 気付いてんだろ? 見ろよ、俺っちを!!)
変な幻聴が聞こえるな、疲れてるのかな。
まぁ無視だ、無視。
(おい、ふざけんな童貞! いいのか? 今ステボにすっごくエロいの表示してるぜ?)
ぐっ……ダメだ、無視するんだ俺。
(我慢すんなって、見てくれないと俺っちが暇なんだよ。なぁ、これなんてすんごいぞ……ぐへへへへ)
あー、もう無理!
こいつしつこすぎ!
べ、別にエロいのが気になってる訳じゃないんだからね!!
「……っざけんな! つうか、何普通にしゃべってるんだよ。お前はステボだろ!?」
(そうそう、チミのズットモのステボさ! いや、サクセスが構ってくれないから音声機能追加したんだわ)
どういう設定!? 意味不明すぎる。
「勝手にシステムいじくるな! つか、まじお前なんなの?」
(だから言ってるだろ相棒。ズットモだって)
こんなズットモは知りません。
知っててもこんな奴とは友達になりません。
「御断りです、気安く話しかけないで下さい」
(つれないなぁ……わぁかった、わかったって、俺っちが悪かった。謝るから許してくれよ。ほれ、お詫びにこんな映像映しちゃうぜ? ぐへへへ……)
「何がぐへへへ……だ。ステボの癖に……って、エッロ!!」
(だろう? これで仲直りだぜ!)
「くっ……いいだろう。今回だけだかんな。あと、今のちょっと保存しておいてね」
決してエロに屈した訳じゃないぞ!
一回くらいは許してもいいと思っただけで……もっと見たい。
(オッケボーイ! やっとサクセスらしくなってきたな)
「俺らしくって……なんでステボが俺を……ん? いや、まさかな」
なんかこいつの正体が分かった気がする。
そういえば、ここは精神の世界。
装備を着た状態で入り込んだのならば……
(そのまさかだぜ、おいらだよ)
「と、と、とんずらぁぁぁ! おまえかぁぁぁ!」
(ピンポーン! 俺っちがいなくて寂しかったろ? まぁずっと一緒にいたがな、ぎゃははは!)
この失礼なバグ野郎は、やはりトンズラだった。
今考えれば、確かにこいつがいないのは不自然。
だけどまさかこんな形で入り込んでるなんて誰が想像できよう。
装備の次はステータスボードになってるとはな、ある意味可哀そう……いいや、普通に楽しんでるから可哀そうじゃないわ。
「寂しくなんかねぇっての。つか、方言どうした方言!」
(いやぁ、俺っちもよぉ、色々サクセスと旅してきて学んだっちゅうことだな。ちなみに俺っちは、敬愛するシルクから真似させてもらったぜ。あいつはまじで漢と書いて男だったわ)
「あぁ、シルクはな……って、そんな事はどうでもいい。まさかとは思うけど、第一ステージの出来事も、なんなら最初の転職も……」
(俺っちの仕業だぜ? どうだ? 面白かったろ?)
俺を苦しめた犯人、ここにいました。
「ちっとも面白くねぇ! つか、地獄を見たわ! おまえかぁぁぁぁぁ!!」
(ちょ、待て、落ち着け! 投げようとすんな。お前がやると俺にもなぜかダメージが入るんだよ! 頼む、な、落ち着いてくれ!)
「これが落ち着けるか! ていうか、なんでそもそもトンズラがシステムいじれるんだよ! おかしいだろ!」
(それなっ!)
「それなっ! じゃねぇ」
(いや、俺っちもわかんねぇんだけど、ほらサクセスの装備として一緒に取り込まれたっぺ? そしたら何かステボになっててよ、色々いじれたんだわ。サクセスの関係だけは)
「じゃあなんで最初からそう言わないんだよ」
(俺っちにもよくわからんが、さっきの神殿に行った事で色々いじれるようになったんだわ。それまでは結構制限されててうまくできなかったというか、まぁそんな感じ)
ふーむ、知らない奴なら到底信じる事ができない言だな。
でもこいつは、必要のない事で俺を騙したりしたことはない。
むしろなんでも馬鹿正直に話す奴だ、いや、馬鹿だ。
「まぁトンズラがそういうことで嘘つく奴ではないのは知ってる」
(さっすが相棒! 俺っち感動!)
「俺は俺から勘当したいよ、チミを」
(おっ、真似すんなよぉ~。ははぁん、さては俺っちの事好きだな?)
「言ってろ。それより俺の番が来た。仲間が困惑するからすれ違っても急に話しかけるなよ」
(大丈夫だっぺ。俺っちの音声機能はサクセスにしか聞こえないべさ)
「ふ~ん、つか、方言戻ってきてるよ、相棒さん」
(おっと、これはいけねぇっぺ。まぁとにかくまたよろしこな、相棒!)
まさかトンズラまでこの世界に来ているとは思わなかった。
というか、今までの悪夢はほぼ全部こいつのせい。
どうしてトンズラにそんな事ができたのかはわからないが、悪夢はともかくとして、俺のこの力はやっぱこいつのお蔭でもあるんだよなぁ……。
あと、エロ画像を自由に映せる機能だけはナイスだ。
ま、そんな訳では色々謎も解決したところで、第二ステージのゴールに向かって進んで行く。
その途中カリーとすれ違った。
「お、サクセス。転職できたのか?」
「……あぁ、一応ね。カリーがいい職業になれるのを願ってるよ」
「なんだそりゃ?」
俺のその言葉に首を傾げるカリー。
俺だってこんな職業じゃなければもっと明るく話せたんだけどな。
今はあまり話したくもない、というよりか……
(バーカ、イケメン爆発しろ! 〇んぽ〇んぽ!)
俺がそそくさとカリーから遠ざかったのにはもう一つあった。
さっきからうるさいんよ、こいつ(トンズラ)
カリーが見えてきてから、ずっと罵詈雑言を言い続けているのだ。
カリーに聞かれているんじゃないかと、少し冷や冷やしていたが、こいつが言うように本当に俺以外には聞こえてないらしい。
そして相手に聞こえないのをいいことに、こいつは好き勝手罵りまくってる。
過去に何があったかは知らんけど、よっぽどイケメンが憎いらしい。
トンズラだって黙ってればイケメンなのにな……とは口が裂けても言いたくないが。
……ほんとふざけた野郎だわ。
※ ※ ※
その後、俺はトンズラという頭のおかしなステボを携えて進んでいくのだが、相変わらずバトルマスばかりに止まっている。
今もファイヤーエレメント3匹を倒したところだ。
ちなみにエレメント系は経験値が多く、レベルアップ的には美味しい。
「こいつで転職してから10回目なんだけど。いい加減、他のマスにも止まってくれ、アイテムが欲しい!」
そう口にするのも何回目だろうか。
ここに来るまでの間、トンズラに対して、
システムをいじれるなら俺の好きな目に進ませて欲しい
と言ったのだが、それはできないそうだ。
ならなぜ俺は5か6、というかほぼ6しかでないのかと聞いてみるも
(そんなん知らねぇわ。普通に運じゃね?)
とか言ってるので、これに関しては本当に俺の運なのかもしれない。
もしくはこの世界に入る前の俺の運がそういう風に影響してしまったのか、本当に謎だ。
「ところでトンズラ。やっぱさ、転職してもレベルアップで通常ステータスが上がんないんだけど、これもお前のせいだったりする?」
(おいおい、なんでも俺っちのせいにすりゃいいってもんじゃねぇっぺ。ステータスの事は知らん! でもこの世界に来た時、そう言えば膨大に余ったステータスについて、面白半分で勃起力とか想像力とかにするって答えた記憶があるぜ!)
「いや、お前じゃん。普通に原因、お前じゃん! つか答えたって誰にだよ? ゲームマスター?」
(んー? わからん!)
「わからんって、なんでやねん!」
(わからんもんはわからんちん。)
わからんちんって……ダメだこりゃ。
やっぱりゲームマスターに聞くしかないのだろうけど、貴重な質問をこんな事で終わらせたくはない。
まぁわからないものを考えても仕方ないので、今できる事をするか。
そう……できる事……つまり
ーーご褒美タイム!!
「はぁ……もういいや、いずれにせよ宿屋に行けばいい話だし。ぐへへへ……」
(そうだな相棒。ぐひゃひゃひゃ……)
「……え?」
(えっ?)
トンズラの予期せぬ反応に思わず俺はステボを見てしまう。
うん、ステボには何も表示されていないなって、そうじゃねぇ。
「まさかトンズラにもあれが……」
(あれってあれか? いや、あの間は俺っちは俺っちで好きなの見てるぜ!)
「いや、ダメだろ」
と言いつつも、俺の想像を見ていないのでなければ問題はない気がする。
つうか、俺のあの情けない様子を見られていないだけマシだ。
(なんで? ウィンウィンじゃんかよ。一人だけいい思いすんなや。つか、アレのお蔭で色々エロ画像や動画を作れるっぺさ)
「なら、よし。後で見せろよな」
(オーケー相棒!)
【現在のステータス】
サクセス レベル21
狂人(童貞を拗らせた男)
生命力 400
精神力 400
ちから 200
みのまもり 200
すばやさ 200
うん 200
ちりょく 200
そうぞうりょく 700
(転職ボーナス200)
ぼっきりょく 700
(転職ボーナス200)
装備
せいなるつるぎ 攻撃力50
せいなるよろい 防御力40
せいなるかぶと 防御力30
せいなるたて 防御力30
1次スキル
・エレクト
・自家発電
・イメトレ
・武器創造
2次スキル
・狂人の友達
・無修正
・暴走
・オナスラッシュ
※ 今回からHP(生命力)とMP(精神力)表示します。
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