第61話 ずっ友!
第二ステージが始まり、一番最初に神殿近くに到着したのはやっぱり俺だった。
どういう訳か、俺のルーレットって5か6しか止まらないんだよね。
そんな訳だから必然的に誰よりも先に進んでしまうのだけど……
「……どうすっかね。」
神殿まで、後6マス。
確率的に考えると、8割は次のターンで神殿に入る事ができる。
心配であれば6のカードを使うこともできるのだが、勿体ない気もするんだよな。
というのも第二ステージに着いてから、俺はバトルマスしか止まっていないのよ。
第一ステージに比べてバトルマスが増えているのもあるけど、結構な確率でその間隔が5か6であるため、黄色マスや青マスには一切止まれていない。
その為、俺の持っている数字カードは第一ステージでゲットした物しかないため、宿屋に行くのに使うためにも温存しておきたいのだ。
ちなみにバトルマスでの戦闘についてだが、第一ステージの時とは違って、俺専用っぽい敵は現れていない。
現れたのは、マグマリザードンやレッドエレメント、マグマン岩等の火属性魔物のみ。
それらも多分強敵に違いなのだろうけど、ぶっちゃけ今の俺のステータスだと攻撃はほとんどくらわないし、なんならこっちの攻撃一撃で屠る事ができた。
そんな普通の戦いをしていると、第一ステージのあれは一体なんだったのだろうと思い返したりもするが、きっとこれが通常なんだろう。
そんな訳で今のところ強さについては十分なので、絶対に転職をしなければならないという訳でもないんだよなぁ。
まぁ先を見据えるならば、第二ステージで転職をしないという選択肢は存在しないんだけどね。
だけどそれと、この一週目でカードを使ってまで神殿に行くかは別の話。
だって、この一回目のチャレンジが間違いなく失敗に終わるから。
なぜならば俺のように5,6の数字ばかりなら神殿に寄ることも可能だが、そうでない場合、神殿への道を選ぶとかなりのターンロスになってしまう。
ここまできて分かったことだが、こっちの道からゴールに行くには、もう一度来た道を戻るしかないのだ。
となれば、今回のチャレンジでゴールに辿りつけない仲間が出てくるはずなので、最悪俺は次のチャレンジで神殿に行けばいいだけ。
ここで貴重な数字カードを使う必要はないのだよ。
そんな訳で、少し気楽な気持ちでルーレットを回す俺。
6が出ても良し、出なくても良し、あとは運に身を任せよう。
「……ていうときに限って、やっぱ出るんだよね……6」
出たらラッキー位に思っていたが、やっぱり出ちゃいました。
8割が6なので出ない方が珍しいのだけど、そんな状態でも期待していないと出てくれる俺の運よ。
「おし、んじゃま、転職できるかどうかわからんけど行ってみっぺ」
軽い足取りでマス目を進んで行く俺。
第二ステージに入った当初は暑くて死にそうだったけど、どういう訳か、先に進むにつれてあまり暑さを感じなくなっている。
感覚がマヒしているのか……って暑さにマヒとか関係ないよなぁっとか考えていると、いつの間にか神殿の前に到着していた。
目の前の神殿はマーダ神殿にも似た作りであり、近づくにつれて門が自動で開いて行く。
中はどんな感じなんだろう
……って期待していたのだが、
「手抜き感半端ないな!!」
外から見ると壮観に見えていた神殿。
しかし門を潜って(くぐって)みれば、何のことは無い……ただ、真ん中に大きな岩があるだけで他に何もないという場所。
拍子抜けもいいところである。
「これまでのパターンだと、この岩に触れればいいんだよな? いきなりターニャとか出てきたりしないだろうな」
そんな独り言を呟きながらも、俺は岩に触れてみた。
すると岩ではなく、ステボが光り輝く!
☆ ☆ ☆
転職が可能です。
あなたの転職可能な職業は
・賢者
・狂人(童貞を拗らせた男)
になります。
いずれかの職業を選択してください。
☆ ☆ ☆
そんな文字がステボに浮かんできたんだけど、なんなんまじで。
童貞を拗らせた男とかさ、選ぶ奴いると思うかね?
まぁ今回はちゃんとまともな職業の賢者も選択できるので、文句を言うつもりはないけど。
そして俺が選ぶ方はというと、もちろん決まっている。
つか、賢者しかないでしょ。
もはやこれは二択ではない。
一択だ。
そう決めるや、すぐさま賢者の文字をポチっとクリック。
すると……
☆ ☆ ☆
賢者ですね。
一度この選択をすると、再選択はできません。
本当によろしいですか? ※注
☆ ☆ ☆
「おいおい、そう言われるとなんか怖いな。ん?【※注】ってなんだ?」
なんとなく気になったその文字を一応クリックしてみることに。
ーーー!?
☆ ☆ ☆
賢者に転職すると、今までのステータスがリセットされます。
賢者タイムにより、特別ステータスは消去され、かつ、それによって上昇したステータスも0となります。
賢者レベル1のステータスは、オール20固定で、使えるのは初期魔法のみです。
くれぐれも選択する際は注意してください。
☆ ☆ ☆
「……え? なにこれ、つうと、今あるこのぶっ飛んだステータスが20になるってことか?」
衝撃的な事実に、俺は一度【戻る】の文字を連打していた。
「アブねぇ、これ罠だ。いや待てよ、狂人の方が良いと決まった訳じゃないよな? でも一応そっちも見てみるか」
賢者を選択しようとしていたのだが、今度は狂人の方をクリックしてみる。
ーーすると今度は……
☆ ☆ ☆
童貞を拗らせた男 でよろしいですか?
チキン野郎。
さっさとこっちを選んでおけや、チ〇カス。
お前が賢者とか……ぷークスクス!
☆ ☆ ☆
「おい……ケンカなら買うぞこら!!」
なぜか狂人をクリックすると、煽り文句が飛んでくるクソ仕様だった。
「落ち着け俺。こんな文言に惑わされるな……」
その場で深呼吸をする事で、少しだけ気を落ち着かせる俺。
そして再びステボを見ると……
☆ ☆ ☆
説明聞きたい? YES NO
☆ ☆ ☆
今度は※注ではなく、普通に説明を聞けるようだ。
なんか言い方というか、文章がやけに腹が立つ感じだけど……
癪であるが、聞かない訳にはいかない。
仕方なく俺はYESを押した。
☆ ☆ ☆
オッケー、童貞ボーイ。
狂人に転職すると、ステータスはそのまま引き継がれ、特殊能力もそのままだ。
新しく追加されるスキルは、どれもエキサイティングなスキルだぜ。
そして何よりも、ステータス上限が解放される。
選ばない手はないだろ? なぁ、チェリー君。
ねぇ、今どんな気持ち?
選びたくないけど、こっちを選ぶんだよね?
ねぇ、ねぇ、今、どんな気持ち?
ぷー、クスクスクス……ぎゃははははは!
☆ ☆ ☆
「…………。」
完全な煽りに俺は言葉を失った。
そう、怒りでな。
だが、悔しいけどこいつが言うように俺は狂人を選ぶだろう。
でもな……
俺は転職選択欄において狂人を選択するのだが、ただクリックするのではない。
ステボの画面を拡大し、【狂人】の文字が拳大になると、そこに怒りを込めて殴りながらクリックしてやった。
すると……
☆ ☆ ☆
痛っ! 何すんだクソ童貞!!
☆ ☆ ☆
「ふぅ……スッキリした!」
訳も分からずステボに煽られるというなんとも珍しい経験をした俺だが、思いっきりステボをどついたことで少しだけ溜飲が下がる。
どついた瞬間、何かよくわからないけど本当に何かを殴った感触があったんだけど、きっと気のせいだよな。
いずれにしてもこれで俺の転職先は【狂人】となってしまった。
というか、それよりもこのステボだよ。
第一ステージ、いや、この場所に来るまでこんな事はなかった。
もしかしたらだが、実は最初から俺には賢者になるという選択は存在せず、ここに訪れた段階で狂人に自動で転職していたのではないかとも思う。
そしてこのステボの状態こそが、狂人という職業のスキルだったりして。
普通はそんな事ないんだろうけど、自分で言うのもなんだけど俺だしな……
特殊な条件とかで、実際には門を潜った段階で狂人に転職していて、さっきの出来事は全部後付け的な……いや流石に考えすぎかな?
なんて事を考えていると、ステボにまた文字が表示される。
☆ ☆ ☆
よくわかったな、相棒!!
☆ ☆ ☆
「おい……心読めるんかい!! つか、あんた絶対ゲームマスターだよな?」
心を読まれるのはここに来て二度目。
であれば、思い当たるのはそれしかない。
あいつは俺をおもちゃにして楽しんでいるんだ!!
☆ ☆ ☆
ブブーー! 残念
俺っちはゲームマスターではない。
だけど、これからは俺っちと話せるようになったぜ。
スキル見てみっか?
☆ ☆ ☆
嘘か本当かわからないが、ゲームマスターの仕業ではないらしい。
つかステボと意思疎通できるとか……まじで嫌なんですけど?
そう思いながらも、自分のステータスを確認してみると……
サクセス レベル1
狂人(童貞を拗らせた男)
ちから 200
みのまもり 200
すばやさ 200
うん 200
ちりょく 200
そうぞうりょく 500
(転職ボーナス200)
ぼっきりょく 500
(転職ボーナス200)
装備
せいなるつるぎ 攻撃力50
せいなるよろい 防御力40
せいなるかぶと 防御力30
せいなるたて 防御力30
スキル
・エレクト
・自家発電
・イメトレ
・武器創造
・狂人の友達
・無修正
レベルはやはり1からか。
しかしステボの説明のとおりステータスはそのまま引き継いでいて、上限の文字も消えている。
あとは新スキルとして
【狂人の友達】
と
【無修正】
新スキルは名前からして碌なスキルではない予感しかしないのだが、一応説明欄をクリック。
【狂人の友達】 :ステボに意思が宿る
【無修正】:モザイクを任意に消すことができる
「うわぁ……いらねぇわ、この新スキル」
ステボの説明を見て呟く俺。
するとステボが勝手に文字を表示して答える。
☆ ☆ ☆
ナニ言ってんだよ!? 俺らズットモだろ!
☆ ☆ ☆
「いや、それはない! つか、ズットモってなんだよ、散々俺の事煽っておいてよ!」
☆ ☆ ☆
ちいせぇこと気にすんなや、相棒。
お? ちいせぇのはアレだけにしときぃ。
ぎゃはははは
☆ ☆ ☆
「うざっ!! まじでこのスキルいらないんだけど! 返品返品!!」
ステボを見るのが嫌になってきた俺だが、もう諦めるしかない。
つか、なんかこの性格に既視感があるんだけど……誰だっけかな。
いや、考えるだけ無駄だ。
できるだけ無視の方針で行こう。
とりあえず強くなれるのは間違いないんだし、このまま進むしか……ないよな。
はぁ……ほんと、最悪な転職だったぜ。
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