第54話 俺のタァァーン!
遂に来てしまった、俺のターン……
正直、今の俺はルーレットを回すのが嫌で仕方がない。
だってそうだろ?
紙ステータスにクソスキル持ち。
おまけに装備品はティッシュ箱だけ。
こんな状態で一体どうしろと?
カリーが止まった6マス先のバトルマスに行った瞬間お陀仏だ。
だけどここで俺だけが立ち止まる訳にはいかない。
俺は腹を括ってルーレット回し始めた。
「6はくんな! まじでくんな!」
シロマと同じように願いを込めてルーレット盤を見守る俺。
すると俺が出した数字は……
「……5か。見た感じ地面の色は白いけど……とにかく行ってみるしかないか」
渋々といった感じで歩き始める俺。
そして5マス目に到着するや、みんなに伝える。
「色は白。地面には……サイコロ? ぽいのが書いてある!」
俺は情報を共有した。
カリーだけはここを既に通過しているのでわかっていたかもしれないが、他のみんなは俺より後ろなんだから伝える意味はあるだろう。
「サイコロかぁ……ハンチョウ元気かな……」
軽く現実逃避をする俺。
まぁとりあえずバトルマスでないことは確かなのでホッとしていたのだが、これで終わりというわけではない。
地面を見てわかってはいたが、案の定、マップ中央に拳大のサイコロが落ちている。
「よくわかんないけど、これを振れってことかな?」
そう言ってポイっとそのサイコロを投げてみると、サイコロの目は6となった。
「6か……昨日は6に随分助けられたっけな。いやいや昨日の余韻に浸っている場合じゃないか」
すると上空の掲示板に再び文字が表示された。
プレイヤー:サクセス
6マス進んでください。
「おっと、まだ進めるのか。一番弱い俺が一番進むとかどんな皮肉だよ。けど、あんま俺の姿見られたくないし丁度いいかもな」
ひたすら卑屈になっている俺だが、掲示板に従って再度6マス進んだ。
ーーすると
「ま、まじかよ!! バトルマスだ!!」
なんとここに来て一番止まりたくないバトルマスに止まってしまった俺。
どう考えてもお先真っ暗であるが、せめて敵が複数でないことだけを祈る。
そして現れた敵は……
「ほっ……よかった。ゴブリン1匹か……って、なんかさっきカリーが戦っていた奴と色が違くね?」
俺の前に現れたのは醜悪な見た目のゴブリンには違いないが、さっきと異なってピンク色の服を纏い、手には包丁のようなものを持っている。
あまり直視したくはないが、あの腰の布はスカートのつもりだろうか?
いや、こいつが人間と同じとは限らない。
こいつが何かはわからないが、普通に考えればカリーが戦ったゴブリンの上位種だろう。
そんな事を考えていると、俺の目の前にステータスボードが勝手に浮かび上がってきた。
「あれ? オープンって言ってないのに……もしかしてカリーもこうだったのか?」
どうやら戦闘になるとステータスボードが自動で表示されるらしい。
そしてそのステータスボードには
モンスター名 メスゴブリン
と表示されている。
もしかしたら攻撃をしたり、攻撃された時のダメージ等もここに表示されるのかもしれない。
意識しないでも表示されるのは便利だな。
本当に無駄にハイテクだぜ、エルフの技術。
しかしメスゴブリンか。
どっちなんだろうな?
雄、雌で違うならば、ゴブリン(雌)とかの方が妥当かもしれない。
そう考えるとメスってのは、性別ではなくてあの手に持っている刃物を表しているのかも。
最初は包丁かと思ったが、包丁より小ぶりだし、医者が使っているメスって言われた方が納得だ。
いずれにせよ、あれに刺されたくはないなぁ……
そんな考察をしながらも、不安を胸に戦闘は開始される。
「ん?? これがカリーが言っていたやつか」
戦闘が始まると直ぐに俺の体は硬直して動かなくなった。
どうやら素早さの関係で、先制攻撃は向こうのようである。
するとメスゴブリンはゆっくりと俺に歩いて近づき、舌なめずりをし始めた。
その頬は紅潮しているようにも見え、なぜかその視線が俺の下半身に向いている気がする。
いや、まじで嫌な予感しかしないんですけどぉ!!
だが予想外な事に、俺はメスゴブリンに攻撃されることなく俺の硬直は解除された。
不思議に思った俺はステータスボードを見てみると……
※ メスゴブリン は 欲情している
メスゴブリン は マゴマゴし始めた
「ぶはっ!! メスってやっぱり雌の事なの? え? まじ? いや、こんな無抵抗な状態でヤラれたりしないよね? 本当に大丈夫だよね? 俺の初めてがゴブリンだなんて鬼畜過ぎるだろ!!」
貞操の危機を感じた俺は、全身が泡立つと同時に物凄い汗が流れ落ちてきた。
そして動いた瞬間に少しだけ飛んでしまった俺の汗を、動けないはずのメスゴブリンは俊敏に動き出し、それを口でキャッチして美味しそうに口をモゴモゴする。
「い……い、い、嫌だぁぁ!! 誰か助けてくれ! こんなの嫌だぁぁ!!」
「グヒャヒャヒャヒャ……ヒャッハー!!」
俺の恐怖に怯える姿を見て、メスゴブリンは更に興奮し始めた。
「何かないか!? 何か! こいつを倒す何かはないのか? くそ! こうなりゃヤケだ! くらえ!!」
俺は無我夢中になり、手に持っていたティッシュ箱のカドでメスゴブリンを叩く。
※ メスゴブリン は 0 のダメージを受けた。
メスゴブリン は ティッシュ箱を見て 更に欲情した。
「だぁぁぁぁ!! ない! まじでない!! 俺のアホ!! こんなもんで叩いたって意味がないことくらいわかるだろうが!!」
俺は唯一窮地を抜け出せるであろうチャンスを無にした。
それによって訪れるのは……メスゴブリンのターン。
そして俺は動けない。
もうこれは完全に18禁なやつだ。
「あぁ……みんなごめんな。それと母さん。先イク息子をお許しください」
完全に生……いや性を諦めた俺。
だがしかし……
※ ゴブリン は サクセス を攻撃する。
その文字がステータスボードに表示された瞬間、メスゴブリンは俺のおまたに右手を指し伸ばすも、なんとその右手は俺の股間に触れるやいなや、弾き飛ばされた。
※ ゴブリンは サクセスの急所を ねらった
がしかし あまりの硬さに弾かれ 10のダメージを受けた。
「は? まさか……ぼっきりょくか?」
ここにきてまさかの活躍を果たすゴミステータス!
どうやら俺の全身は紙装甲であるが、ち〇こだけはカッチカチの防御力を誇っているようだ。
それどころか、他を受け付けずに反射までする始末。
今日ほど息子に感謝した日はない。
「見えたぞ!! 俺の勝機が!!」
今までの流れから俺がすべきことは……ただ一つ。
そう……スキル:エレクト(勃起する)だ!!
俺のターンになった瞬間、俺はこのクソスキルを唱える。
「くらえ!! エレクト!!」
俺がそのスキルを唱えた瞬間……股間からにょきにょきと巨大なバットが生えてきた。
「先端がモザイク……いや、そんなことは関係ねぇ! これで殴ればいいんだろ!?」
俺は腰を真横に振ってスイングすることで攻撃しようとしたのだが、なんとエレクトを使った事で俺のターンは終わってしまったため動けない。
仕方なくステータスボードに目を向けると……
※ サクセス は エレクト を 唱えた。
サクセス は 勃起した。
メスゴブリン は 怯えている。
どうやら俺のナニはゴブリンですらも恐怖させる代物のようだ。
そしてどういう訳か、直ぐに俺の体は動けるようになる。
※ メスゴブリン は 怯えて動けない。
なんとここにきて、再び俺のターンが舞い戻ってきた。
このチャンスを逃す手はない。
俺は巨大化した息子を前に、メスゴブリンに向かってじわりじわりと近づいていく。
近づくにつれ、メスゴブリンの荒くなる息遣いが聞こえてきた。
それが恐怖からなのか……はたまた興奮からなのか俺には判断できないし、したくもない。
だけどこれだけは言わせてくれ。
「俺の童貞を奪うのはお前じゃない!!」
そう叫ぶやいなや、俺は腰を大きく後ろに引き、巨大になったアレを思いっきり前に突き出し……いや、突き刺した!
するとものの見事にメスゴブリンのお腹に刺さると……なんとそのまま貫通し、メスゴブリンが光の粒子となって消える。
最後にメスゴブリンは「ごぶ……ごぶぶ……」と言っていたが、どういう訳か俺には
「そこ……違う穴……」
と聞こえた気がするが気のせいだろう。
うん、そうに違いない。
そしてステータスボードには……
※ サクセス は メスゴブリン を 攻撃した。
メスゴブリン は 4545 のダメージをうけた。
メスゴブリン は たおれた。
経験値 50ポイント 獲得
500パサロをてにいれた。
「4545!? バグってんだろこれ!!」
謎のダメージ判定に驚きを隠せない俺。
だが、それよりも……
「やった!! やったぞ!! 俺は守ったぞぉぉぉ!!」
俺の全身を歓喜が包み込んだ。
貞操の危機を脱した俺だが、そこに更なる興奮が……
パララッパッパッパー!!
パララッパッパッパー!!
パララッパッパッパー!!
※ サクセス の レベル が 2 になりました。
サクセス の レベル が 3 になりました。
サクセス の レベル が 4 になりました。
サクセス の ちから が 0 あがった。
サクセス の みのまもり が 0 あがった。
サクセス の すばやさ が 0 あがった。
サクセス の ちりょく が 0 あがった。
サクセス の うん が 0 あがった。
サクセス の ぼっきりょく が 30 あがった。
サクセス の そうぞうりょく が 30 あがった。
「やった! レベルアップ! っておい!!」
レベルアップに喜ぶのも束の間、なんとステータスで上がったのは謎のステータスのみ。
あまりにあんまりなその結果。
もしかして俺はこの先もあんな恥ずかしい戦闘をし続けなければならないのだろうか……
みんなが遠くにいて……本当によかった。
そう心から安堵する俺だった……って、まだ終わらないから!
「不安しかねぇよ!!!」
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