第49話 エルフの事情
スロットで稼いだメダルをロザーナに換金した俺は、他の仲間の様子を見に行くため、イーゼと共に地下三階へと向かっている。
ちなみに今回手に入ったロザーナは
42380枚
5万枚まで後8千枚弱必要なんだけど、俺の他にも三人が頑張っているのだから、今日一日での達成も夢ではない。
「いやしかし、本当にここは面白いな」
「そうですわね。わたくしもまさか王城の下にこのような場所があるとは思いませんでしたわ」
「でもさ、秘密クラブという割に人……というかエルフが多くないか?」
ここに来る前、この場所は王族であるイーゼも知らない場所ということだったので、秘密クラブに入れるのは数少ない限られた者のみだと思っていた。
しかしながら実際に秘密クラブ内を見て回ってみると、少なく見積もっても千人以上の者が遊戯を楽しんでいる。
ただその中には、街で見たようなエルフ以外の種族は見当たらず、そのほとんどがエルフであった。
ほとんどと表現したのには理由があって、実はここにきて初めて自分と同じ人間も目撃したのである。
ごく少数ではあるが、本当にエルフの国にも人間がいた。
エルフの王族にとって人間は憎き種族、というか会うことすら禁忌と聞いていたのだが、多分ここにいる人間はその中でも例外にあたる者達なのだろう。
どの人間もかなり羽振りの良さそうな雰囲気で豪華な服装に身を包んでいるし、いうなれば豪商といったところだろうか。
とはいえ別に自分達以外の人間が恋しい訳でもないし、声を掛けるようなことはしないんだけどね。
そんな事を思いながらも、話はイーゼとの会話に戻る。
「そうですわね。でもわたくしは納得しましたわ」
「納得?」
「はい。エルバトルに着いてからというものの、外を歩くエルフの数が少なすぎると思っていましたの。前に話した通り、この王城には数千を超えるエルフが住んでおります。それであればもう少し外でも見かけると思っていたのですが……こんなところにいたのですわね」
そういえばエルバトルに来てから、街の外で見かけたエルフは衛兵だけだな。普通に考えればすぐにおかしいと気付くものだけど、色々衝撃的な事が多すぎて、気にしてなかったわ。
「言われてみれば確かに。でもさ、これほど多くのエルフが秘密クラブにいるならさ、イーゼもここの存在に気付いてもおかしくなかったんじゃね?」
「そうですわね。当時からここは存在していたでしょうが、私の興味はこの国の外にあったため気付かなかったのかもしれませんわ。それとこれは想像なのですが、これだけ多くのエルフに秘密クラブを開放したのはもしかしたらわたくしが……」
「そのとおりじゃ」
イーゼがそこまで言いかけた瞬間、突然現れた女王様が話に割って入って来る。
「母上!?」
「女王様?」
「ふむ、どうやら初日から大分稼いだようじゃな。流石は我が夫となる男じゃ」
既に俺がスロットで大勝したことは女王の耳に入っていたようだ。
あれだけお祭り騒ぎとなればすぐに噂も広まるわな。
……それよりも
「あの、すみません。さっきイーゼが言いかけたことなのですが……」
「うむ。イーゲ……いやイーゼは王族であり女王である妾の子にも関わらず、エルフの国を捨てて外の世界へと飛び出してしまった。それをきっかけにエルフの国を抜け出そうとする者が増えたのじゃよ。それを防ぐ方策の一つとして、この数十年間、秘密クラブのVIPカードを大量に発行して、各家庭に少しづつ配っていったのじゃ」
「なるほど、それでこんなにもエルフがいるのですね」
「そうじゃ。しかしその弊害で自宅と秘密クラブに引きこもる者が増えたことで別の弊害も出てきておるがのう。だが逆にこのスロットやパチンコ等の開発に意欲的な者も増え、秘密クラブのクオリティも上がっているのも事実じゃ。複雑な心境じゃよ」
なるほどね。女王も苦労しているんだなぁ。
まぁその原因が自分の子供であるイーゼによるものであれば、親として尻ぬぐいをしなくてはならないのはしょうがないことだけど。
そしてそんな話を聞いていても、素知らぬ顔をしているイーゼはやはりメンタル化け物である。
「それで母上。なぜここに?」
「なぜじゃと? それは決まっておるじゃろ。勝利の余韻に浸っているであろうダーリンに更なる快楽を貪ってもらおうと……」
そう口にしながら、魅惑の腰つきでクネクネとセクシーアピールをする女王だが、俺の前にイーゼが立ち塞がる。
「させませんわ! まだわたくしがそばにいるのです。触れるのは厳禁ですわ」
「ちっ! そろそろ警戒が緩む頃かと思ったのじゃがのう。ではさらばじゃ」
そう言って、再び女王は俺達の前から立ち去っていってしまった。
いやまじで何を考えているんだろ。
というかやはりイーゼはこれを警戒して俺から離れなかったわけか。
なんか凄く愛を感じるね。
何よりも俺を優先してくれる感が、俺の男心をくすぐるぜ。
「ありがとな、イーゼ」
「いえ、むしろわたくしの方こそですわ。こうしてサクセス様を独占できるのですもの。今は至福の時間でしてよ」
そう口にしながら俺の腕にギュッとしがみつくイーゼ。
いや本当に可愛いな。いつもこんな感じなら俺はイーゼの事以外考えられなくなりそうなんだけど……ね、こういうことをしなければ……。
「公衆の面前でやめてもらえます?」
そう。いつも通り、さりげなく俺の下腹部をサワサワして刺激してくるイーゼ。
俺の体だけが目的なのかよ!!
「仕方ありませんわ。また後にしますわ」
「いや、ダメだからね? まぁいいや、とりあえず地下三階に着いたし誰かいないか見に行くぞ」
そう言ってイーゼの腕を振りほどいた俺は、そのままサクサクと進んで行く。
「あぁん、待ってくださいませサクセスさまぁ」
※ ※ ※
「おっ、結構出てるじゃん」
地下3階で仲間達を探していると、さっそくカリーを発見する。
女王のアドバイスを受けたカリーは、その言葉の通り、地下三階のパチンコフロアで海釣り物語を打っていた。
そしてカリーの椅子の後ろには、銀玉がビッシリつまった箱が12箱積まれている。
「あぁ、サクセスか。そっちはどうだ?」
「俺はスロットをやってたんだけど、大分稼げたよ。カリーも出しているね」
「ん~、まぁな。さっきまで16箱あったんだけど、今丁度ハマってきちまってよ。まだやり足りない気もあるが、サクセスが終えたなら俺もやめ時かもな」
そう言ってパチンコ玉を打ち出すのを止めるカリー。
「え? 気にしないでいいよ」
「いや、こういうのはやめ時が肝心だ。とりあえずこれでどの位ロザーナと交換できるかはわからないけど、足しにはなんだろ」
「うーん、まぁカリーがそう言うなら」
「サクセスは他のメンバーを探しに来てるんだろ? 俺も交換終えたら合流するから先に行っててくれ」
「オッケー。じゃあまた後で」
カリーとは換金が終わったら合流する約束をし、俺は再び地下三階フロアを歩いていく。
すると、ロザーナ落としフロアでなにやら人だかりができているのに気付いた。
「なんだろあれ? 何かあったのかな?」
「サクセス様と同じように誰かが沢山だしているのかもしれませんね。見に行きますか?」
「あぁ、もしかしたらシロマやリーチュンも見に来ているかもしれないしね」
そういって人込みをかき分けて、注目されているロザーナ落としの機械に近づいていく。
「嬢ちゃん頑張れ! 後一歩だぞ!」
「イけるイける、クレイジーガール!!」
「ここまで来たら逝ってこい!!」
近づくにつれて周囲からの応援の声が沢山聞こえてくる。
嬢ちゃんってまさかな……
ようやく台の近くまで来れた俺は、その台に座っている人物を目にする。
「シロマ!?」
このフロアを沸かせている人物は、まさかのシロマであった。
彼女は俺が声を掛けた事にも気づくことなく、台を真剣に見つめながら集中していた。
そして凄い勢いで大量のメダルをステージに向けて放出するシロマ。
一体どうやってあれほどのメダルを一気に投入したのかはわからないが、それを見ている観衆は歓声を上げる。
「出た! マシンガン発射!!」
「その指先にしびれるぅーー!」
「俺のもその指で発射させてぇぇーー!」
マシンガン発射?
いや、それよりも一部聞き捨てならない事を口にしている者がいるが……
それはともかくとして、シロマはこの数時間の間でかなり高等技術を身に付けたようだ。
それにどの程度の意味があるのかはわからないけど。
そして遂に……
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