第48話 僥倖!!
「まじ? いや、期待しちゃだめだ! 無心……そう無心だ!!」
と言いながらも、内心で期待しまくりの俺。
まさかギャンブルでここまで興奮するとはな、今なら少しだけシロマの気持ちがわかる。
さっきから心臓がバクバクだぜ。
「くそ、俺は後攻か」
まずは対戦相手のガイジが三つあるサイコロを転がす。
サイコロリン対決自体は二回目であるため、既にどういうルールかは知っている。
三つあるサイコロの内、二つが同じ数字であると、残った一つの数字がサイコロの強さとなる。
例を言うならば、115の場合、強さは5で、116なら強さは6の為、116の勝ちだ。
その他にも、456はシゴロと呼ばれて、強さ数値でいうなら7相当。
更にその上には同じ数字が3つ揃うゾロ目。
強さでいうと、111が強さ8で最大は666である。
逆に123はヒフミと呼ばれ、出た瞬間負け確定だ。
124の様に数字が揃わなくても、相手が123を出せば勝ちが確定する。
イーゼ曰く、復活演出とやらでこれは出るらしい。
そして肝心のガイジが出した数字であるが……
「116かよっ!! 強すぎだろ!」
なんとガイジが出した数字は通常目の中では最強の116。
これに勝つには456以上が必要であり、勝敗は絶望的と言っていい。
「くそっ! 頼む班長!! 456を頼む! まじで頼む!!」
神に祈りを捧げながら、俺は気合を入れてレバーを叩くと……
6……6……
ま、まさか……と思ったその時である
……プチュン。
あと最後の数字というところで、突然魔液晶の画面がブラックアウトする。
まじかよ、ここに来て壊れたとかありえねぇだろ!!
焦った俺はレバーを叩いたり、ボタンを押してみるも全く反応がない。
こんなのありかよ……そう思った次の瞬間であった。
なんと真っ黒になった画面中央に、ドでかい金色の文字が浮かびあがる。
僥倖!!!
その二文字が画面一杯に浮き上がると、次にガイジの泣き顔がバーン! と映し出される。
「え? え? えぇぇぇ?」
何が起きたのかわからず困惑していると、次の映像で最後のサイコロの数字が映しだされた。
6
「……あ、あ、当たったぁぁぁ!!」
なんと班長が出した数字は
6・6・6
6のゾロ目だった!!
「最強目キタァァァ!!! 勝った! 勝ったぞ!!」
あまりの興奮に席を立ってしまった俺は、後ろにいるイーゼに抱き着いた。
「流石ですわ!!」
「あぁ、やっと勝ったよ! うわぁ……まじで嬉しい」
初めての大当たりに、大喜びをする俺。
ずっと勝てなかったのもあり、不安になり続けた一時間。
それもあってか、大当たりの喜びもひとしおである。
周りの人も俺達が初心者だというのには気付いている為、何人かの人はパチパチパチと笑顔で拍手を送ってくれていた。
なんにせよ、ようやく初ボーナス。
あとはこのボーナスがどのボーナスかだな。
この台のボーナスは三種類あり、青7、赤7、黒BAR揃い。
一番良いのが青7で、一番悪いのがBARだ。
あ、三つと言ったが一応プレミアと呼ばれる滅多に出ないボーナスとして、青7赤7青7というのもあるらしいが、まぁ100万分の1と書かれていたので除外する。
それなので、俺が願うのは当然……
「青7……青7こい!!」
トン……
最初のボタンで左のリールを止める。
すると中央に青7が止まった。
これで青7確定! と勘違いして笑顔を浮かべながらイーゼに振り返るが、イーゼは首を横に振る。
「まだわかりませんわ。青7の上の赤7が斜めに揃うこともありますの」
「まじか……だけど!!」
トン……
二つ目のリール中央には、なんと赤7が揃ってしまった。
つまりこれはさっきイーゼが言った赤7が斜めに揃うということ。
とはいえ、赤7でもBARよりはマシだから、少し残念だけど良しとしよう。
そう思って最後のリールを止めた俺だが……
トン……
「……え?」
一瞬頭がバグった。
意味が分からない。
そして周囲の人も気になっていたのか、みんな俺の台を見ていたのだが、その人たちが息を飲み込む音が聞こえてくる。
そう、てっきり俺は赤7が斜めに揃って、赤7ビッグボーナスだと思っていたのだ。
しかし、リールが滑った。
そう、滑ってしまって右斜め下に止まるはずの赤7が止まらなかったのである。
それがどういうことかと言うと……
青7 赤7 青7
これがリール中央に揃ったということ。
つまり俺は……ここに来て100万分の1をツモッてしまったのである。
「うおぉぉぉ!! すげぇぇぇ!」
「俺も3年これを打ってるけど初めて見たぞ!!」
「坊主やるなぁぁ!!」
一時の静寂の後、周囲の人が騒ぎ始める。
「サクセス様! プレミアです! プレミアですわ!!」
「お、お、おう。あ……やば……なんか手が震えてきた」
あまりの幸運に手がプルプルしてしまう俺。
やはり俺の運は最強であった……。
「は、は、ハンチョーーーー!!!」
気付けば俺は両手を上げて叫んでいた。
「ハンチョッ! ハンチョ! ハンチョー!!」
それに呼応するかのように、周りの人もハンチョウコールをしている。
やばいなにこれ? まじで気持ちぃぃ。
つか……
チョーーーギモヂィィィィィィィ!!!
体全身が歓喜に震えた俺だが、しばらくして冷静を取り戻し、台に向き直る。
「よし! こっからジャンジャンバリバリ出すぞ!!」
「はいっ! サクセス様!」
初めてのビッグボーナス。
それもプレミア!
どんなものかと思いながらもレバーを叩くと、さっきまで洞窟にいた班長が、地上に出て食い歩きを始めた。
その間、コインはジャガジャガと増え続けて、気付けば下皿がメダルで一杯になる。
すると今度は、突然キーンという金切り音が聞こえると、班長が鍋をつつき始めた。
「サクセス様。連チャン確定ですわ」
どうやらボーナスがもう一つ貰えるらしい。
そしてボーナスを終えてみると、画面に表示された数字は420枚。
一回のボーナスで手に入れたのは、2万パサロにもならない枚数であり、正直ガッカリした。
プレミアというくらいだから、その10倍は最低でも出すと思いきや、なんのことはない、連チャン確定であったとしても、投資金額には遠く及ばない数値。
だが……
「兄ちゃん、初めてだろ? ガッカリしなくていいぜ、多分これは……終わらねぇ」
突然横にきた小太りのエルフの人がそう告げる。
どういう意味かはわからないが、どう見ても玄人っぽい雰囲気の人だし、信じてみるのもありだろう。
そしてその人が言う通り、その後も俺はボーナスが終わる度に青7が揃い続け、一向にボーナスが終わる気配がない。
「うひょ~。やめられない、止まらない!!」
気が付けば、1箱メダル千枚入る箱が、俺の後ろに山積みされていく。
もうこれは終わらないのではないだろうか?
そんな思いを感じ始めるも、楽しすぎてヤバイ。
「なぁ、イーゼ。今俺は何枚くらい持ってるんだ?」
「2万枚はくだらないかと……凄まじいですわ」
なるほど、いつのまにか20箱以上積んでいたのか。
「ちなみにロザーナに換金するとどの位かな?」
「わかりませんが、先ほどのエルフに聞いたところ、等価と言っておりましたので、4万ロザーナ以上ですわ。上手くいけば、サクセス様だけで5万ロザーナ達成です」
まじかよ! 班長さまさまだわ!
「お、じゃあ後少しだな! うっしゃ、頑張るべ!!」
と気合を入れてレバーを叩き続けていた俺だが、突然ボーナス画面が結婚式場に変わり、スーツを着た班長とウェディングドレスを着た、カンチョウをしてきたババァが現れる。
「え? なにこれ? ちょっと、キモイんだけど……なんでババァと結婚してんだよ……」
「あ……サクセス様。エンディングですわ。どうやらサクセス様はメダルを出し尽くしたようです」
出し尽くした?
え? どゆこと?
「まじ? 終わりなの?」
「はい。この台はコンプリート機能というのがあるらしく、メダル排出数の上限が決まっており、上限に達するとエンディングが流れて、以降はプレイできないらしいですわ」
それを聞いた俺は、後少しと言ったところであったが為に、滅茶苦茶凹んだ。
この幸福タイムが遂に終わってしまうのかと……
そして画面がブラックアウトすると、最後に
congratulation
の文字を残し、そのまま画面は固まってしまった。
どうやら完全に終わりらしい。
「ふぅ……まぁこんだけ出せば十分か。他のみんなも出しているかもしれないしな」
「はい、十分ですわ!」
「いや、本当に面白かったわ。スロット最高! エルフの国最高! 秘密クラブ最高!! そして班長サイコーーー!」
こうして俺は大量のメダルをロザーナへと換金し、他のフロアにいる仲間達の様子を見に行くのであった。
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