第47話 激アツ!?
「さてっと、どうすっかな……」
地下4階に来てみたものの、俺は暫らくはこのフロアで遊戯している者達を見て回っていた。
直ぐに色々プレイしてみたい気持ちもあったが、とりあえず最初は慎重に様子を窺う。
これこそがギャンブルをやる上で大事な事だと俺は知っているからだ。
「ゆっくり決めればよろしいかと。それよりも意外なことにシロマさんはおりませんでしたわね」
「みたいだな。てっきりこのフロアのロザーナ落としエリアにいると思ったんだけどね。」
イーゼの言う通り、どうやらここにシロマはいないようだ。
さっき颯爽と消えていったのでてっきりここにいると思っていたのだけど、一通り回ってみて見当たらないのだから多分違う階にいるのだろう。
シロマがどこで何をやっているのかも気になるところだが、いずれにしても俺もそろそろやる遊技を決めなければ……
「おしっ、決めた! 俺はスロットをやるぞ」
「はいっ!」
※ ※ ※
「うーん……やっぱり種類が多いな。宗吉……マリオンゴッド……志村の拳……どれが出るかな?」
スロットフロアに来てみたものの、台の種類が多すぎてどれをやればいいか迷っている俺。
どの台も面白そうであるが、さっき上げた三つの台については他の台よりも多く設置されていて、プレイしている人も多い。つまりは人気台ということだ。
人気があるということは多くメダルを出すのだとは思うが、人気であるが故に空いている席は限られている。
そしてこの状況から考えれば、空いている席はハズレの可能性が高い。
であれば、あまり人が座っていない種類の台で選ぶ方がいいか……それともやはり人気台を打つべきか……悩むな。
俺が台の前をウロウロしながら迷っていると、イーゼが俺の裾を引っ張る。
「これなんかいかがです? エロDEカーニバル……凄くセクシーで面白そうですわ」
「ブハッ! なんじゃこりゃ……えっろ。って違う違う。こんな台じゃ集中できんわ!」
「あら、残念ですわ」
イーゼが勧めてきたのはバニースーツを纏ったセクシーなお姉ちゃん達が沢山出てくる、エロ妖しいスロット。
この台も人気のようで、「でひゅでひゅ」言いながら打っている人が多く座っている。
見た感じメダルが出ている人は少なそうだが、どの人の顔も満足そうだ。
「まぁいつまでも見ているだけじゃ始まらないし、試しにどれか打ってみようかな」
といいながらも、実は既にいくつか候補を絞ってある。
まずは爆裂機と札の刺さっている
イソジンA、スーパーけもの王
この二つは特に気になった機種であるが、冊子を見る限り技術介入要素が高いとも書いてあったので保留にした台だ。
そしてもう一つの候補が、初心者推奨の札が刺さっている
おっす! 班長
この台は初心者推奨と書かれている割に、玄人っぽい人が結構打っていたので気になっていた。
あとは今の三つの中でどれを選ぶかだが……やっぱこれだよな。
「やはりそちらにしたのですね」
「あぁ、俺の勘がこれを打てと言っている」
と格好つけて言ってみたものの、これで出なかったらめちゃくちゃ恥ずかしい奴だな。
しかし、その言葉を聞いたイーゼは
「サクセス様なら今日一番の大爆裂ですわ!」
と疑うことなく信じている。
嬉しい反面、はっきり言ってプレッシャーだ。
とはいえ、とりあえず俺は目当ての台に座る。
さっき見て回った時に軽く冊子は見ていたが、難しい要素はそんなにないみたいだった。
「まず一万パサロをここに入れてっと、おっ、出て来たな」
説明書きを見たり、他の人のやっている様子を見て、スロットの始め方は問題ない。
ここのフロアのレートだと、一万パサロで250枚のメダルがメダルサンドから出てくる。
後はそのメダル三枚を投入口に入れてレバーを叩けば、リールが回るはずだ。
「おし! やるぞ!」
気合を入れてレバーを叩く。
すると中年っぽいおっさんエルフが魔液晶の中で動き始める。
よくわからないけど、このオッサンは鉱山みたいなところで何かを採掘する仕事をしているようだ。
鉱脈でも見つかると当たりなのかな?
と思っていたのだが、全然違った。
普通にこのおっさんはクズで、イカサマしながらギャンブルで周りの人から金を巻きあげている。
そして強敵みたいなやつにギャンブルで勝てば大当たりっぽい。
※ ※ ※
「ダメだ……全然あたらねぇ。つうか、対決演出は結構出てるのに、全然勝てないとか嘘だろ。なんで毎回、このセロとかいうツンツン頭に負けるんだよ……」
回し続けて早一時間。
その間、ボーナスはゼロだ。
3枚掛けで一回転しか回らないのもあり、10万パサロあった軍資金は既に残り3万まで減っていた。
これが最高レートの威力か……
「まだまだですわ! これからですわよ!」
俺の後ろに立って見ているイーゼは、ずっと俺を応援し続け、更には色々なことを教えてくれている。
この台の横に置かれた冊子は結構分厚く、丁寧に沢山書いてある為、イーゼがそれを熟読して新しい演出が出る度に解説してくれるわけだが、ぶっちゃけ周囲の目があるので恥ずかしい。
と言っても、今はそんな事が気にならないくらい焦っているがな。
このままだと素寒貧になってしまうぜ。
「お、また対決に入った! 今度こそ、勝つ!」
「対戦相手とやる種目で勝率が変わりますわ! って、あぁ……いえ、でもサクセス様なら……」
魔液晶の画面を見て、あからさまにガッカリするイーゼ。
それもそのはず。
今回の対戦相手と種目は、俺が毎回負け続けた組み合わせと同じだからだ。
そう、対戦相手は天才セロ。
そして種目はクイズバトル。
こんな中年オッサンが勝てるはずがねぇ……だが、諦めない!
「三度目の……いや七度目の正直だ!」
俺は気合を入れてレバーを叩く!
ーーーそして
「負けた……」
負けるとは思っていたが、やはりあっさり負けてしまった俺。
完全に顔色が絶望一色である。
後ろに立っているはずのイーゼも、流石に言葉が出ないようで静かだ。
遂に7枚目の1万パサロ分のメダルが消えたことで、再び俺は8枚目の1万パサロを投入。
そして心が折れ始めた俺は、ゆっくりとした手つきでメダルを投入口に入れると、レバーを軽く叩いた。
すると……
「イカサマ開始ィィィ!!」
突然台が叫び声をあげる。
あまりの声量に、油断していたのもあって椅子を後ろに倒しそうになった。
「サクセス様!! チャンスですわ!」
「確かにチャンスっぽい演出だけど、これ何なん?」
「冊子によりますと、このステージの後にもう一度対決が行われるようですわ。そしてこのステージの画面左にある三つのサイコロが点灯すると当たり確定みたいですわ」
それを聞いた俺は、再度気合を入れなおす。
「おっしゃ! こっから巻き返してやる!」
息を吹き返した俺は、勢いよくレバーを叩いていく。
すると……
「お? 誰だこいつ?」
突然画面の中にババァが現れると、班長に対してカンチョウをかました。
「おい、ばばぁ。班長に何しやがる……」
「いえ! サクセス様! これはチャンスです!」
突然主人公が見知らぬババァに攻撃されたことで焦った俺だが、どうやらこれはチャンス演出らしい。
確かにカンチョウをされた班長は……
「んんん……ぎもぢぃぃぃぃぃぃぃ!!」
と気持ち悪い喜声を上げ、見ると画面左に表示されているサイコロの一つが点灯した。
何この台……キモイんですけど。
とまぁそれはともかくとして、流れは来てる。
あと二つサイコロが光れば、確定だ!!
「うし! どんどん行くぞ!」
「はいっ! 頑張るのですわ!」
と良い感じで流れが来ていたはずなのだが、後一歩及ばず、サイコロが二つ点灯状態で対決が始まってしまった。
これでは勝利確定にはならない……が少なくとも今までで一番好機なのは間違いないだろう。
「くぅ~緊張するな。ガワトネとかいうオッサンの指示で二つ目のサイコロはできたけど……まぁやるしかない。大丈夫、今度こそいけるはずだ!!」
そして再び気合を入れてレバーを叩く。
次の画面で表示されたのは……
種目 サイコロリン
対戦相手 ガイジ
「お? さっきと相手も種目も違うぞ?」
「サクセス様! 激熱ですわ!!」
どうやらこれは滅茶苦茶チャンスらしい。
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