第14話 神々の力①

 そんな切ない空気の中、突然、どこからともなく声が聞こえてくる。



「大丈夫じゃ。心配せんでもワシらには考えがある。」



「この声は……時空神様!!」



 突然聞こえた声に対して、ターニャは驚くような声を出した。


 時空神って、確かシロマを天空職に転職させた神だったような……。


 さっきターニャ自身も言っていたが、この場には他の神もいるのだろうか?


 考えがあるということは、ターニャは犠牲にならなくていい?



 そんな事を考えていると、時空神と思われる者は言葉を続ける。 



「これ以上この場で干渉はできぬが、信じて進むがよい。」



 なんとその言葉を最後に、話が終わってしまった。


 突然割って入ってきた割には碌な(ろくな)説明もなしに一方的に話を終わらせてしまう。


「信じて進むがよい」とかだけ言われても、できるはずもない……と思っていたのだが、どうやらターニャは違ったようだ。


 

「とんずら。聞いて。天上の神々が私達を守ってくれるわ。やるわよ。」



 今の言葉だけでターニャは完全に吹っ切れている。


 なぜそう思うかというと、その言葉に悲しみが消えていたからだ。



「んだども……」


「いいから! 私に任せなさい!!」



 それでも納得いかないとんずらをターニャは力強い言葉でねじ伏せる。



ーーそして



 ターニャは神気を解放し……初めてその姿を精神世界に顕現させた。



 青く輝く髪に、透き通るような白い肌。


 切れ長なまつ毛に、整った顔立ち。


 その姿は正に絶世の美女と言える姿であり、女神であることをそのオーラだけでも証明している。


 当たり前かもしれないが、実物は女神像よりも数倍美しかった。



「サクセスさん。終わりました。この姿で会うのは初めてですね」


「……あ、え、いや、あ、はい。」



 思わず緊張して声が出ない俺。


 そのくらいターニャ……いや、女神様の纏うオーラは別格であったのだ。



「神格が上がったお蔭でこの精神世界にも私の姿を映すことができるようになりました。それと、新たに授かった力があります。」


「授かった力?」


「はい。私は転職を司る女神。ですので、更に上位の職業へと転職させることができます。といっても天空職は特別であるため無理ですが。」



 どうやら女神パワーがアップしたことで、色々とできることが増えたようだ。



「本当ですか? まさか聖戦士より上の……」



 今の話が事実ならば、俺は一体どんな職業になれるのだろうか?


 かなり興味が沸く。



ーーしかし



「申し訳ありません。やはり聖戦士は特別な職業でして、それが可能なのはとんずらだけです。ですが、魔心は更に上位の職業へと転職が可能になりました」



 聖戦士は無理か……。


 そういえば後一つの項目が埋まらないとって、とんずらが言ってたっけ。


 結構戦ったり、色々あったけどまだわからないのかな?


 だが魔心が上位に転職できるというならありがたい。


 俺は既に転職条件を満たしているということみたいだな。



「それなら転職をさせて欲しい。けど、その前にもう少し細かく説明して欲しいです」



 俺がそう聞く、ターニャは新しい転職の力について説明してくれた。



  今までの転職は基本職と上級職の二つ。


 ここに、更にその上の超級職までの転職が可能になったそうだ。


 俺は魔心(上級職)が魔人(超級職)になるらしい。


 魔人と聞くと、ビビアンと一緒にいた賢者シャナクが魔人になったと聞いたが、感覚的にいうとそれとほぼ同じだそうだ。


 それを聞くと魔人に転職するのは危険な気がしたが、そんなことはないらしい。


 シャナクの場合は魔の力に完全に飲み込まれた魔人であり、転職の魔人は魔を制御した状態になることのようだ。


 もっと簡単に言うと、シャナクの場合は完全に魔と同化しているが、職業の魔人は、魔物の力を借りるだけに過ぎないということ。


 それだけだと、何となく魔心と変わらない気がするのだが、中身は全然違う。


 今までの俺はゲロゲロとフュージョン(同化)ができたが、それには魂が削られ、最悪同化したままになるというリスクがあった。


 そのまま同化してしまえば、シャナクとほとんど同じである。


 しかしこの魔人という職業であれば、さっき言ったリスクなしに同化を解除できるようになり、かつ、同化していない状態でも魂の結びついた魔物のステータスの2割が常に上昇するそうだ。


 魔王以上に強いゲロゲロのステータスの二割が俺に常時上乗せされるというのは、正直やばすぎる力だと思う。


 ただ魔人の同化には時間制限があるらしいので、ホイホイと同化するわけにもいかないけれども、そもそも同化しない状態で倒せない敵がいるとは思えない。



 まじで最強過ぎる。



 ちなみに転職の条件は、魔物との融合を果たしたことがあり、かつ、人に戻ることができたもの。


 つまりムッツさんの力とか卑弥呼の秘薬でなんとかなった俺だからこそ、なれる職業だ。


 そういった転職条件から、この超級職は、他の超級職とも一線を画した職業であり、多分この先俺以外になれる者は現れないだろうとターニャは言っている。

 

 そこまで聞いた俺はある事に気付いた。


 それはシャナクの魔人化の解除についてである。


 魔人の原理について色々わかったからこそ、シャナクの魔人化の解除についてもっと詳しくわかるのではないかと思ったのだ。


 以前ターニャは天空職になった者ならば、何かわかるかもしれないと言っていたので、具体的にはほとんど何もしらないものだと思っていたのだが、どうやらあの時からこの原理については知っていたらしい。


 ターニャが考えていたのは、



 魔を強制的に引きはがす、魔法もしくはアイテム。


 

 魔を引きはがした時に魂を保護する魔法もしくはアイテム。



この二つがあれば魔人化の解除は可能らしい。



 そしてそれらについては、既にミーニャ達がそのアイテムを手に入れているそうだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る