第143話 ジェラシーモーニング
「おはようシロマ……とみんな集まっているな。」
昨日はシロマと一緒にゲロゲロを連れて美食巡りをしていた。
思いの外、シロマはこの街に詳しくなっており、色んな場所に案内してくれて、ここでしか食べられない
たこ焼き
お好み焼き
を筆頭に、多くのグルメを堪能する。
そんな中、カリーとロゼが宿にしけこむのを目撃した俺は、焦りというか、劣等感というか、そういった負の感情に侵されて、邪魔をしようとするがシロマに止められてしまった。
悔しい……
代わりにシロマとイチャイチャしたいと思うも、ゲロゲロに邪魔をされてうまい事いかない。
そんなモヤモヤした一日ではあったが、それでも美味い物を沢山食べられたのだから満足としておこう。
そして今日、朝起きて食堂に行くと、出かけていた全員が既に集まっていた。
「おはようございます、サクセスさん。お先に朝食を頂いています。」
見ると、シロマの更は既に空になっており、コーヒーを飲んでまったりしている。
昨日あれだけ食べたのだから、正直俺は朝食を食べる気が起きないが、シロマは違うらしい。
女の胃袋は強いと聞いた事があるけど、正にその通りだな。
「シロマは凄いな。俺はまだ胃がムカムカしていて……ミルクだけでいいや。」
俺はそう言って、ミルクの入った瓶を手に取り、コップに注ぐ。
それをグイっと一気に喉に流し込むと、ふと窓辺の席で朝からイチャイチャしているカップルが目についた。
「ほら、カリー。口にお米がついてるよ。」
そういってカリーの口についたコメを指でとって、自分の口の中に入れるロゼ。
「悪いな、ロゼ。」
「いいのよ。」
…………。
爆ぜろ……
リア充爆発しろぉぉぉぉ!
二人のバカップルぷりに怒りがこみ上げてくる俺。
朝からあんなものを目にするとは……しかも以前より、かなりパワーアップしてやがる。
やっぱり昨日二人は……
くそーーーー!
裏切者め!!
そんなジェラシー渦巻く俺の下にイモコが近づいてきた。
「師匠。昨日は申し訳なかったでござる。しかし、お陰様で挨拶をする事ができたでござる。」
「お、イモコ。それは良かったな。ちなみに聞いてもいいか? 会いたかった人ってのは家族かなんかか?」
「家族……以上の存在かもしれないでござるな。某にとっては。彼らは共にこの国の為に戦ってきた戦友たちでござる。」
そう口にするイモコの顔には哀愁が漂っている。
昔の仲間達を思い出しているのかな?
「そっか、みんな元気だったか?」
「そうでござるな。向こうで元気でいてくれていると信じているでござるよ。」
「向こうで?」
「そうでござる。死者は天国に行くと、この国では言い伝えられているでござるよ。彼らは己の命を賭して使命を全うしたでござる故、必ず天国にいるでござる」
あ、やべ。
もしかしてまた地雷踏んだかな?
「もしかして会いに行っていたのは……」
「そうでござる。散っていった戦友の墓、一つ一つに挨拶をしてきたでござる。仲間達の想いを達する事ができた報告も兼ねて……でござるが。これで先に逝った仲間達も浮かばれるでござるよ。」
先に逝った仲間。
辛いな。
今ならその気持ちが痛い程わかる。
「そうか……悪い事を聞いたな。」
「とんでもないでござる。全て師匠のお蔭でござるよ。これで某に思い残すことはないでござる。これからは全力で師匠の役に立つでござる!」
イモコはそう言いながら、拳を握りしめた。
その決意は強く固いもののようだ。
「これから……ね。俺はこれまでもイモコには十分以上に役に立ってもらったと思ってるけどね。だけど……俺からも言わせてくれ。これからもよろしくな!」
俺はそう言ってイモコに手を差し伸べると、イモコはその手を強く握った。
ーーそしてその時丁度、宿の扉が開く。
「皆様、おはようございます。私はサスケ様の使いで、ギンチヨと申します。どうぞお見知りおきを。」
和服を着た、ロングヘアーの美女が現れた。
凛とした佇まいに、切れ長のまつ毛。
実に美しい。
サスケの使いと聞いていたので、てっきりまた蛙顔が現れると思っていたから、これは予想外だ。
「こ、こ、こちらこそ、よろしくだべ。」
うっかり訛りが出る俺。
「はい。よろしくお願いいたします。サクセス様。聞いていた以上に素敵な殿方で緊張してしまいます。」
凛とした表情からうっとりとした表情に変わるギンチヨ。
すると、シロマが俺の前に出てくる。
「ギンチヨさん。要件を伝えてもらえないでしょうか?」
シロマの目つきが鋭いのは気のせいだろうか……
「失礼しました。それではお城までご案内いたします。外に馬車を待たせてありますので、どうぞお乗りくださいませ。」
俺はその言葉に疑問が浮かんだ。
「あれ? サスケはともかくとしてセイメイは待たなくていいのか?」
「はい。ひみ……セイメイ様はお先にお城でお待ちしております。ですので心配はご無用でございます。」
今なんか言いかけたな。
ひみ……秘密? まさかどっきりか!?
まぁいいか、どっきりでもなんでも招かれているなら行かなきゃな。
「オッケー。んじゃみんな馬車に乗ろうぜ! おい! そこのバカップル達もさっさと乗れよな!」
宿の扉を出る際、振り返ると未だにカリー達がイチャイチャしているのが目に映る。
なんとなく苛っとした俺は、そう毒づいた。
「誰がバカップルだ、サクセス。朝から嫉妬するなよ。」
すると、カリーは恥ずかしそうな顔もせず、普通に返してくる。
なんかその余裕が更にムカツク。
「ふんっ!」
俺はカリーの言葉を無視して馬車に乗り込み始めた。
こうして俺達は邪魔大国の城へと招かれるのであった。
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