第135話 二人なら(後編)
まだ戦闘を開始してから間もないにも関わらず、あまりのウロボロスの弱さに拍子抜けしそうになる俺。
とはいえ、いくら弱くても死なないというのは大きなアドバンテージではある。
どれ程力の差があろうとも、このままでは最後にはやられるのは自分だ。
そうならないためにも、なんとかウロボロスを滅する方法を模索しなくてはならない。
「とりあえず苦しそうにしてるし、首……いっちゃうか。」
今度の狙いはあの三つの竜の首だ。
セイメイから聞いた話だと、昔、竜神と呼ばれる存在は、ヤマタノオロチという三つ首のドラゴンを倒す時、一度に三つの首を落とす事によって倒したという伝説があるらしい。
まぁそうは言っても、シャイニングで首どころか全てを一気に滅したにも関わらず、復活したくらいだし、今更そんな伝説をなぞったところで……とは思う。
だがさっきまでとはウロボロスの様子が違うし、とりあえず試してみる事にする。
【ドラゴニックブレード】x3
未だ動きを見せないウロボロスに対し、俺は3発の斬撃を飛ばした。
もちろん狙いは、その巨大な竜の首だ。
再び巨大な斬撃がウロボロスの首に向かって飛んで行くと、三つの首がズバッと刎ね飛ばされる。
が……それは今までの様に黒い塵になる事なく、パァンと弾けるように消滅した。
どうやら壊す部位によって、反応が違うらしい。
これによってなんとなくだが、少しだけ見えてきた気がする。
さっきまで、竜の首は斬ると直ぐに黒い塵に変わり、瞬時に再生されていた。
だが今回は瞬時に再生する事なく、斬った首の付け根あたりがボコボコいって、再生しようとしている。
俺の攻撃が変わったからか、それともウロボロスに異変があったかはわからないが、とりあえず今の俺の攻撃によって、間違いなくウロボロスは弱まっているようだ。
そこから導かれる答えは一つ。
ウロボロスの本体は今見えているこの姿ではなく、この辺り一面に舞っている黒い塵の集合体だという事だ。
そしてそれを纏めている核が、あのヤマタノオロチの姿の竜の中に必ずあるということだろう。
それを壊せるかどうかが重要なのだろうが、なんとなく、今の俺ならば壊せる気がしてきた。
その根拠は、俺の攻撃は間違いなくあの黒い塵を滅しているから。
この変化がもしも核を壊せる力だとしたならば……後は核を探すだ……け?
!?
ウロボロスの首を斬り飛ばし、これまでの状況を冷静に分析していたところ、突然ウロボロスの胴体の中心がボコボコと膨れ上がってきた。
「嘘……だろ? まさか……」
そして俺は目を疑う。
なんとウロボロスの胴体に浮かび上がってきたのは……再び卑弥呼の顔だったからだ。
「りゅ……りゅうじんざまぁぁ」
突然卑弥呼の顔が声を上げる。
「卑弥呼! 卑弥呼なのか!? 今助ける! 俺はどうすればいい!?」
「ごごにぃぃ、ごごにぃぃ」
「ここ? そこなのか? そこにいるのか?」
卑弥呼の声に俺は必死に答えるも、それ以上の言葉はなく、やがて卑弥呼の顔は再びウロボロスの胴体へと消えていった。
「クソっ! これじゃ何もできないじゃないか!」
卑弥呼がその姿を見せた事で、俺は思い出してしまった。
ウロボロスの中に卑弥呼がいるという事実を。
故に、攻撃する手が止まる。
ーーすると
(サクセス。大丈夫。僕がいるから、一緒に背負うから……だから目をそらさないで。本当はもうわかっているはずだよ)
直接心に届くゲロゲロのその声。
そう、ゲロゲロが言うように本当は理解していた。
卑弥呼が顔を出したのは、俺に核の場所を教え、俺に倒されるためだ。
卑弥呼を殺さない限り、ウロボロスを殺す事はできない。
本当は全部わかっていた。
だが、それでも目を背けようとしたんだ、俺は……
俺には覚悟が足りなかった。
仲間の誰よりも戦う事の意味を理解していなかったのは自分だ。
相手を殺すという事は自分も殺される可能性がある。
絶対に大丈夫なんていう保証はどこにもないんだ。
その中で常に最善の選択をとり続けなければならない。
戦いとは常に死と隣り合わせ。
その覚悟が足りないせいで、今回カリーが犠牲になった。
つまりこの結果を招いたのは他の誰でもない……俺だ。
「俺は……俺は……おれはぁぁぁ!!!」
(大丈夫。自分を責めないで。それにこれからは、サクセスは一人じゃない。全部僕と一緒だから……)
忘れようと……いや考えないようにしていた事を再び思い起こし、俺は胸の奥から苦しくなってしまった。
だが、それでもさっきまでとは違う。
ゲロゲロがいるから。
ゲロゲロと一緒だから耐えられる。
俺はもう……目をそらさない!
「あぁ、そうだな。もう俺は逃げない。だから……俺と一緒に背負ってくれ! ゲロゲロ」
(もちろんだよ!)
【ドラゴニックメテオ!!】
俺の全身が輝く黄金色に包まれる。
同時に俺は剣を前に突き出しながら、卑弥呼がいた場所へと向かっていき、そしてウロボロスの胴を突き破った。
そして次の瞬間……
巨大なウロボロスの全ては光の粒子へと変わっていき……やがて消える。
ウロボロスの核を貫いた俺は、遂に伝説の化け物をこの手で葬るのであった。
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