第127話 光の行方
「やったのかっ!?」
「卑弥呼!!」
その時、俺とカリーは同じタイミングで叫んでいた。
朱雀と共にイモコが突撃してからどのくらいが経ったであろうか。
数分にも感じられるし、数十秒だったかもしれない。
イモコがウロボロス本体に攻撃したと同時に、龍頭達の動きは止まった。
そしてその後、俺達はウロボロスの後ろから黄金の光が突き抜けていくのを目にする。
それを見た俺達は遂にイモコがウロボロスを倒した……いや、倒してしまったと思っていた。
カリーの顔には喜色が浮かび、俺の顔は多分青ざめていただろう。
ウロボロスが死ぬという事は、卑弥呼を殺したという事。
それは世界的にみれば、喜ばしいなんてレベルのものではないだろう。
ウロボロスが復活した今、世界は滅亡の危機に瀕していた。
それが消滅したとあれば、どれだけ犠牲があったとしても、世界にとって朗報な事は間違いない。
だがそれでも俺にとって仲間を失うというのは、絶望を感じるに十分な出来事だ。
喜ぶ事なんてできるはずもない。
俺の目からは自然と涙が零れ落ち、俺は顔を俯かせた。
そして涙が伝うその頬。
そこに暖かい温もりを感じる。
ふと見ると、セイメイがその手で俺の頬に伝う涙を拭っていた。
「サクセス様。お顔を上げて下さい。これで世界は救われたのです。」
「ぜ……ぜいめい……お、俺は……俺はまたずぐえながった……。」
セイメイに言葉を返そうとするが、涙で上手く声が出せない。
「サクセス様……ありがとうございます。しかしながらこれだけは言わせていただきます。卑弥呼様はその役目を全うされて喜んでいるはずです。ですから、お顔を上げて下さい。」
セイメイは優しく俺を諭した。
しかし、本当に泣きたいのは俺よりもセイメイのはず。
そしてそうなってしまったのは、偏に俺の力が足りなかったからだ。
その現実が俺の心を責め立てる。
「だげど……もっど、もっど、ほがにほうぼうがあったがもしれない……。ごめん、ぜいめい。ごめん……卑弥呼」
「謝らないで下さい! そんな事はありません。これは運命だったのです。ですから……え? どういうことですか!?」
突然セイメイの声が驚きに変わる。
それにつられて、ゆっくりと俺は顔を上げると……
ーーなんとウロボロスが再び活動を再開し始めた。
「ど、どういうことだ? 卑弥呼は! 卑弥呼は無事なのか!?」
「わかりません! しかし、今はそれよりもイモコ殿の救出です!」
その言葉に俺は大事な事を思い出す。
黄金の光を纏った何かはウロボロスから抜けて、遠くに飛ばされていた。
あれがイモコならば危険だ。
ウロボロスの追撃がイモコに向かう可能性が高い。
すると、そこにカリーが走って駆け寄ってくる。
「サクセス!! 作戦は失敗だ! イモコを回収したら逃げるぞ!!」
「カリー! どういう事なんだよ!?」
やばい状況だとわかった俺は焦っていた。
そしてこっちにきたカリーの顔を見れば、カリーも同じ気持ちなのがわかる。
「俺にもわからねぇ。しかし、失敗したことだけはわかる。時間がない。シロマちゃん、さっきの光が飛んだ付近にゲートは出せるか?」
「はい、見ていましたので、概ねの場所は把握しています。それなので近くにならゲートを繋げる事ができます。それとゲロちゃんなら、イモコさんの場所が匂いでわかるはずです。」
俺が困惑している間にも、シロマとカリーは話を進める。
俺もボケっとしている場合ではない。
イモコの命が懸かっているいるんだ、まずは行動しなきゃだめだ。
「ゲロゲロ、イモコの位置はわかりそうか?」
「ゲロ(任せて!)」
「よし、じゃあ俺とシロマとゲロゲロでイモコを探しに行ってくる。シロマ、頼む。」
俺がそう指示を出すと、早速シロマが行動する。
「はい。【ゲート】」
ゲートが現れたのを見て、俺は直ぐに入ろうとするがカリーがそれを止めた。
「待てサクセス。こっちにはまだサスケとロゼが残っている。サクセスはライトプリズンに戻っててくれ。イモコの救出はシロマちゃんと俺がいく。」
「だけど……。」
卑弥呼の事があったからなのか、できれば俺自身がイモコを救出に行きたい。
カリーやシロマを信用していないわけではないが、それでも何かあった時、そこに自分がいられないのだけは嫌だ。
俺はそう思い、カリーの言葉を拒否しようとしたところ、今度はセイメイが口を開く。
「サクセス様、私もそのようにするのがよろしいかと……。大変恐縮ではございますが、私も既に戦力としては使い物にならない状態でございます。」
そう言いながら、セイメイはふらついた足で立とうとした。
それを見て、俺は考えを改める。
俺が守るべき相手はイモコだけではない。
目の前にこんなに弱った仲間がいる。
そして後方では戦う事ができない仲間もいる。
それならば、俺は誰を守る?
全員だろ!
仲間を信頼するんだ。
そして全員で生きて帰る。
そう心の中で自問自答をした後、俺は無理に立とうとするセイメイの肩を掴んで引き上げた。
「無理すんな、セイメイ。俺の肩に掴まれ。わかった、じゃあカリー、イモコを頼んだぞ。」
「任せておけ。それよりもみんなを頼むな、サクセス。」
カリーはそう言うと、ゲートを潜り抜けていき、それに続くようにゲロゲロを抱いたシロマも入っていく。
「何がどうなってるかわからないが、まずは全員の安全が優先だ。セイメイ、悪いけどじっとしててくれよ。」
「は、はい。え? あ、ちょっと……サクセス様!?」
俺はセイメイをお姫様抱っこすると、セイメイは顔を赤らめながらも俺にギュッと掴まった。
そんなセイメイの反応を無視しつつ、俺はそのままダッシュでライトプリズンに戻る。
セイメイは思ったよりも軽いおかげで、俺の速度が落ちることはない。
だがしかし、さっきからなんか嬉しそうに俺に抱き着いて見えるのは気のせいだろうか?
抱き上げて見ると、なんだか骨格というか体つきも女の子っぽいし、なんだかこっちまで変な気分になる。
若干息子が反応しそうになっているがきっと気のせいだろう……うん、そうに違いない。
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