最弱装備でサクセス！〜どうのつるぎとかわの防具しか買えなかった俺だけどセットスキル【レアリティ777】の効果がチート過ぎて伝説の戦士になってしまった〜

第125話 感応

【仲間視点】

　サクセス達がセイメイの防衛にあたるのを見ると、カリーはすぐさまイモコの援護に向かった。

　イモコはウロボロスまで残り半分までの距離といったところで、多くの龍頭に囲まれている。

　実際カリーにイモコの姿が見えた訳ではないが、あれだけの数の龍頭が一カ所に群がっているのであれば、その中心にイモコがいるのは間違いない。

　イモコの力ならばどれだけ龍頭に襲われようと負ける事はないとは思うが、先に進めていないのを見る限り、大分苦戦をしているようだ。

「イモコ！！　無事か！？」

　カリーはようやく龍頭の群がる場所まで追いつくや叫んだ。

　すると、やはり龍頭の群がる中からイモコの声が返ってくる。

「某は無事でござる！　しかし、数が多くて先に進めないでござる！」

　イモコの声を聞いたカリーは少しだけ安心する。

　その声が思いの外元気であったからだ。

　流石にあれだけの数の敵を相手にするには、体力的にも精神的にもかなり苦しいはず。

　イモコの技術と速度ならば攻撃をくらうことは無いとは思うが、それだって体力が残っていればの話。

　カリーは駆け付けるのが遅くなってしまった事に申し訳ない気持ちを胸にしまい、意識を目の前の敵に集中した。

「わかった！　今そっちにいくから待っててくれ。……それと、当たるなよ！」

　カリーはシルクから引き継いだ大鉾を取り出すと、その鉾に炎を付与する。

　【ブレイズスラッシュ】

　大鉾の薙ぎ払いから炎の波が龍頭に押し寄せていく。

　荒波の様に猛った炎の波は龍頭達を飲み込むと、そのまま空に向かっていった。

　カリーはイモコの位置を返ってきた声の位置から把握すると、ギリギリイモコに当たらない高さで大鉾を薙ぎ払ったのである。

　そしてその読みは正しく、炎の波はイモコの頭上に舞い上がるとイモコに当たる事なく、増援で向かってきている龍頭達を飲み込んで消えた。

　これにより多くの龍頭が一時的に減り、イモコの姿がカリーの目にはっきりと映る。

　声からはわからなかったが、イモコの服は大分破れており、体からもところどころ血が噴き出している。

　イモコなら……と思っていたが、流石にあの数相手ではイモコも無事ではなかったようだ。

　実際イモコはかなりギリギリの戦いであり、カリーが来るのがあと一分遅ければかなり危険な状態であった。

　故にイモコは無理して先に進む事はせずに、その場で耐え忍びながら仲間を待っていたのである。

　瞬時にその状況を把握したカリーは、直ぐにイモコの場所まで駆け付けると、その隣に並んだ。

「かたじけないでござる。」

「遅くなってすまない。よく耐えてくれた。セイメイも無事だ。今はサクセス達が守ってくれている。後少しだけ耐えるぞ、イモコ。そうすれば四聖獣の援護が来るはずだ。」

「御意！！」

　そこからイモコとカリーは怒涛の勢いで龍頭達を殲滅し始めた。

　イモコ一人では流石に防御の関係もあり、増え続ける龍頭達を掻い潜る事は出来なかったが、カリーが来た事によってその殲滅速度は倍増し、少しづつだが龍頭の増援スピードを殲滅速度が上回り始める。

「イモコ、四聖獣はまだだけど、今なら抜けられるんじゃないか？」

　カリーはここを受け持つ事でイモコを先に進ませようと考えた。

ーーだが

「やめておくでござる。ここを抜けたところで、その先で同じように囲まれるだけでござる。焦らず待つでござるよ。」

　イモコは刀を振りながら、そう答える。

「そうか……そうだな。俺は焦り過ぎているみたいだな。流石は大将軍様だ。」

「やめるでござる。今はただのイモコでござるよ。」

　しかしながら、二人に軽口を叩き合うくらいの余裕が少しだが生まれ始めてきたのも事実。

　それであれば……とカリーは思ったようだが、イモコの現状判断の方が正しい。

　龍頭の数は無限とも思えるほど膨大であり、ここを抜けたところで同じ様に囲まれるのは間違いなかった。

　少しだけ先に進めたところで意味はない。

　やはり四聖獣を伴いながら前に進むしか方法はなかった。

　そのまましばらく膠着状態が続いていくが、やがて後方から眩い光が近づいてくる。

ーーそれと同時にカリーが叫んだ。

「今だイモコ！　行け！！」

　近づく光が四聖獣だと気付いたカリーは、イモコの前に出て龍頭を斬り裂くと、道を作ってイモコを走らせた。

「御意！！」

　今度はカリーの言葉に素直に従うイモコ。

　イモコにも今が好機な事がわかっていたからである。

　すると朱雀、青龍、白虎、玄武が続き、イモコの五方を囲み始めた。

　先頭に白虎、真ん中にイモコ、イモコの上に朱雀、左に青龍、右に玄武……そして殿にカリーという陣形。

　そして４匹の四聖獣達は、龍頭をものともせずに前に突き進んでいく。

　どういう訳か、四聖獣から発せられる光に龍頭達は怯み始め、その隙に四聖獣達は龍頭を次々と屠っていった。

「行ける！　行けるぞ！　イモコ！」

「想像以上でござるな！　流石は四聖獣様でござる。」

　イモコやカリーが攻撃する間もなく、集まってくる龍頭達は消えていく。

　だがそれでも、ウロボロスに近づくにつれて龍頭の数も増えてきた。

　それにより四聖獣の動きが少し遅くなるが、増えた分はカリーが矢で射貫く事でカバーする。

ーーだが、ウロボロスまで後少しというところで……

「ぢがう……ぢがうのじゃ……ざぁぁがぁぁれぇぇ！　あ～の～がぁだぁぁぁおぉぉぉぉ！！」

　突然卑弥呼が叫び始めると暴れ始める。

　巨大な頭が跳ねるように動き始める事で、大地が大きく揺れた。

　その揺れにイモコとカリーの足が一瞬止まる。

「なんだ！？　何が起こっている？　卑弥呼は何を言っているんだ！？」

「わからないでござる！　しかし、某達に下がれと言いたかったのかもしれないでござる。」

　突然の状況に困惑する二人

「下がる？　卑弥呼の意識はまだあると思うか？」

「多分でござるが、まだあると思うでござる。予想でござるが、体の制御ができないくらいに、卑弥呼様の核が侵食されているかもしれぬ」

　だが、それでもやるべきことは変わらない。

「イモコ……。」

「御意。それでも某達には行くしか道はないでござる！」

　イモコはその揺るぎない眼差しを卑弥呼の眉間に目を向けると、次に真上にいる朱雀を見た。

「朱雀殿、しばし背を某に貸してもらってもよろしいでござるか？」

　四聖獣に言葉が通じるとは思えないが、それでもイモコはそう口にする。

　すると驚く事に、朱雀はその声に応じるように下降してきた。

　その様子を見て、イモコは飛びあがり朱雀の背に乗る。

「行け！！　イモコ！！」

「おぉぉぉぉ！！　某の刃……必ずウロボロスの核に届かせるでござるよ！！」

　イモコは雄たけびを上げると、目を閉じ突きの構えをとった。

　イモコはこれまでずっと考えていた。

ーーどうすればあの巨大なウロボロスの核を貫けるか……と。

　核がどれほど本体の奥にあるかはわからないが、イモコの攻撃手段だけではその刃を通らせる事は不可能だろう。

　しかし、四聖獣の協力があれば可能性はあると気付いた。

　だがそれも朱雀と意識の共有ができる事が前提。

　イチかバチかの賭けではあったが、朱雀がその背に乗せてくれたことでイモコは確信する。

ーーウロボロスの核に刃を届かせることができる。

　足りない距離は朱雀と一緒に縮めればいい。

　イモコが溜めた全力の突きを朱雀の突撃と合わせて放つのだ。

　それであれば、ウロボロスの表面を突き破り核まで届くはず。

　スサノオは言った。

　イモコの刀はウロボロスを斬る事ができると。

　それであれば必ずイモコの刃をウロボロスを貫けるはずだ。

　そして聖なる炎を纏った朱雀は、イモコの意思を理解し、巨大な卑弥呼の頭の眉間の前で静止する。

「むぅぅぅりぃぃぃじゃぁぁぁぁ！！」

　それを見た卑弥呼は再び口を大きく開いて叫んだ。

　同時に、先ほどとは比べ物にならない程の龍頭が一気に襲い掛かってくる。

「早くしろ！　イモコ！！」

　それを目にしたカリーは、思わず叫んだ。

　そして一斉にイモコに向かって龍頭が襲い掛かった瞬間……

ーー朱雀は卑弥呼の眉間に向かって突撃するのであった。