第69話 秘密会議 後編
「んで、観光っていうけど、この国は広いんだろ?」
今度はカリーがセイメイに質問する。
「その通りです。その為、2グループに分けて観光します。今いるメンバーは私を含め、ゲロゲロ殿を入れて8名でございます。二人で観光と言うのは怪しまれますので、二手がベストでしょう。」
カリーの質問の意味を理解し、セイメイはその先の説明を続ける。
「メンバー割りは私の独断で分けたいと思います。サクセス様、イモコ殿、シルク殿が一つの組。もう一組はその他全員でございます。」
つまり、もう一つの組は
カリー、シロマ、ロゼッタ、セイメイ、ゲロゲロ
あれ? 3人組と5人組?
「人数振りおかしくね? つか、それ本当に戦力で分けた? カリー筆頭のハーレム組と、むさい男組で分けてない?」
イケメンの男一人に、美女2人。セイメイも女装すれば女にしか見えないから男の娘枠。そしてそこにゲロゲロというペット枠。
それに対して、こっちは上半身裸の天狗面の爺さんと中年の侍と俺。
完全にこれ、勝ち組と負け組じゃねぇかよ! おいぃぃぃ!
俺は頭に浮かんだイメージを元にそう確認するも、セイメイは何も言わない。
「確かにそれが順当でござるな。」
すると、その割り振りにイモコも納得した声を上げた。だが、その時俺はある事が頭を過る。
(ちょっと納得いかないけど……これってチャンスじゃね?)
カリーがハーレムを築いて動く事は腹立たしいが、そのお蔭で俺はシロマの監視から逃れることが可能だ。
この面子なら大手を振ってトビタティンティンに行けるぞ!!
「ま、まぁ、イモコもそう言うんじゃ、俺は反論ないけどぉ?」
少しだけ胡散臭いセリフになってしまう俺。だが、これに反対したのはカリーとシロマだった。
「わりぃ、セイメイ。俺はサクセスと一緒に行動しちゃダメか?」
「待ってください! それなら私もです。サクセスさんから目を離したらいけません!」
おい、シロマ。それはどういう意味だい?
どんだけ俺は信用ないんだよ。
まぁ、間違ってませんけど……。
しかし、二人の抗議にセイメイは首を横に振った。
「受け入れて下さい。私だって……私だってサクセス様と一緒にいたいのです! しかし、個人の感情より卑弥呼様を救出するための最善法を選びました。これが唯一無二の組み分けでございます。異論は……認めたくありませんが、サクセス様がどうしても私をというのであれば……?」
(おい! 潤んだ瞳で俺を見るな、セイメイ!)
つか、自分で言ってて曲げようとするなよな。ほらみろ、カリーとシロマが白い目で見ているぞ。
だが、ここで再びシルクが割って入った。
「カリー。俺っちを信じるでがんす。」
シルクが口にしたのはそれだけだったが、カリーはそれを聞いて安心した笑みを浮かべている。
「わかった。お前を信じるぜ、シルク。」
よくわからないが、カリーの不安についてシルクは理解しているという事だろうか? よっぽどカリーはシルクを信頼しているんだな。そう言えばカリーはいつも俺を一人にしないようにしていた。多分、フェイルっていう勇者関連で何か思う事があるんだろう。
ーーだが
「私は納得いきません!」
やはりシロマだけは猛反対している。正直に言えば凄く嬉しいのだが、色々と複雑だ。
すると、ここで初めてロゼッタが口を開く。
「シロマちゃん。シロマちゃんはサクセスさんの事がそんなに信用できないの?」
そう言葉を吐いたロゼッタは、珍しく厳しい目をシロマに向けていた。なんかわかんないけど、俺にまで圧を感じさせる。
「そ、それは……。でも、私はもうサクセスさんと離れたくないんです。」
そうか。思い返せば、シロマ達は決死の覚悟で試練を受ける為に俺から離れた。今でもそれを引きずっているのだろう。しかも、再会するのが遅ければ俺は死んでいたんだ。シロマが心配するのも無理はない。結局は、俺が頼りないせいなんだよな……。
シロマの言葉からその想いを察した。それは嬉しくもあるが、それ以上に自分の不甲斐なさに胸を痛める。大好きな子をここまで不安にさせる俺は……彼氏として失格だ。
そんな情けない顔をする俺を見て、ゲロゲロは俺の顔をペロペロしながら……言った。
「ゲロロロン。(僕も離れるのは嫌。でもシロマいるなら、直ぐ飛んでいける)」
ゲロゲロはみんなの言葉はわからないが、俺の言葉や思いがわかる。つまり、俺の言葉や気持ちだけで何となくみんなが何を話しているのか理解しているのだ。本当に賢いモフモフである。
「ありがとうゲロゲロ……っ!? って、それどういうことだ?」
そこで俺は気づいた。ゲロゲロの意味深な言葉に。
「どうしたサクセス? ゲロゲロは何て言ったんだ?」
俺がゲロゲロの言葉に驚くと、カリーが聞いてきた。
「いや、ゲロゲロが……シロマと一緒なら直ぐに俺のところに飛べるって言ったから。」
俺がそう口にすると、シロマはハッと気づいた顔をした。
「もしかしてゲロちゃん。サクセスさんとの繋がりで、サクセスさんのところまでゲートを案内できるのですか?」
シロマは驚きながらそう口にするも、俺はそれが無理だとわかる。なぜならば、ゲロゲロと意識を繋げるのは俺だけだ。シロマとは共有できない……できないよね? 試した事ないけど。
―――しかし
「ゲロン(できるよ。)」
なんと、ゲロゲロはできると断言した。
シロマの言葉を理解できないはずのゲロゲロだが、なんとなく何を聞かれたのかわかったらしい。そしてゲロゲロは俺の膝の上からシロマの膝に移ると、その手を軽く甘噛みした。
「……嘘? え? これって……」
「どうしたシロマ?」
「……感じるんです。サクセスさんを……」
え? 今何て言った? めっちゃエロい事いわんかった?
俺はその言葉を聞いて興奮していると、カリーがシロマに確認する。
「それはサクセスのいる場所を明確にわかるという事かな? シロマちゃん。」
「はい。ゲロちゃんに噛まれた瞬間、サクセスさんの位置を感じました。凄いです、凄いですよこれ!!」
シロマが新しい発見に興奮している。そして俺も別の意味で興奮している。できればもう一度言ってほしい。ワンモアプリーズ!
「それでは、シロマ殿。納得したという事でよろしいでしょうか?」
そんな興奮する二人を前に、少し冷たい目をしたセイメイが言った。なんかよくわからんが、変な嫉妬心みたいなものをセイメイから感じるぞ。君は男の子ですよ? 嫉妬する相手を間違えている。
「そうですね。これがあれば問題ありません。サクセスさんに何かあってもゲロちゃんはわかるだろうし、そうすれば私達も直ぐに向かえます。わかりました。組み分けはそれでかまいません。」
どうやらシロマは納得したようだ。まぁなにはともあれ、これで面子は確定した。残すは場所だな。
「それではこれから観光する場所についてですが、サクセス様達はここより左回りで、私達は右回りでゆっくり観光をしていきます。全て回り終われば、間違いなく卑弥呼様と接触できると信じております。」
おお! それなら行ける……行けるぞ! ティンティン!
俺がセイメイから場所の指定を受け喜んでいると、セイメイが追加で注意事項を指示する。
「それと私も含めてですが、観光においてイモコ殿とシルク殿は今よりも更に変装をしてもらいます。妲己の周囲者から不審に思われるわけにはいきませんので。」
その言葉を聞いて、俺はここに来てからの謎が一つ解けた。
この国に入ってここに来るまでの間、俺達全員は三度笠と呼ばれる、顔が隠せる笠を被っていた。今日は日差しが強いからだと思っていたが、どうやら違ったらしい。でもいくら3人が有名だからって卑弥呼を探してるってわかるはずないと思うけど。まぁ警戒するにこしたことはないか。
「わかったでござる。しかし、それであれば、またあの笠を被れば良いでござらんか?」
「いえ。確かに一日位ならいいです。しかし観光中ずっとは逆に怪しまれます。変装着については、用意してありますので、明日以降二人にはそれを着てもらいます。私も嫌々ですが……女装しますので我慢してください。」
やっぱりセイメイは女装するのか。まぁ、セイメイが女装すれば男には絶対見えないだろうな。ちょっとだけ見て見たい気もするな。
「わかったでござる。」
「仕方ないでがんすな。」
セイメイの決定に二人は頷く。まぁ、シルクの恰好はもともと変装なんだが、あれはどうみても怪しすぎるからな。頭がおかしい人として注目を浴びそう……というか、浴び続けてきた……ここに来るまで。
「よし、概ね決まったな。後は特にないか? セイメイ。」
俺は話がまとまったので最後に質問をすると、セイメイが辛そうに口を開いた。
「最後に一つだけ……ございます。これからは、分かれた他の組の者と話さないようにしてください。もちろん、この場所は別です。しかし、それ以外では……他人を装ってもらいます。」
「そこまでする必要あるのか? だって、此処に来るまで見てる者もいただろう?」
「今日はまだ誰にも警戒されておりません。普段、通りかかる人をそこまで注目はしないはずです。しかし、毎日歩いていれば、必ずどこかで目につきます。それですので……心苦しいですが、この宿の中であっても他人の振りをしてもらいます。」
本当に心苦しそうだな、セイメイ。まぁ俺としても、他のみんなを無視するのはつらい。まぁ、卑弥呼を追いやる程の相手だからこその警戒だろうな。
「わかった。じゃあとりあえず、明日以降は他人だ。ここ以外ではな。」
俺がそう言うと全員が静かに頷いた。
まぁなんつうか俺も辛いけど、カリーとロゼッタちゃんが別でなくてそれだけは良かったと思う。
とりあえず、明日から観光か……楽しみだぜ。
待ってろよ、ティンティンの美女たち!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます