第87話 教官の意地
【カリー視点】
「おー、おー、やってるねぇ。つか、あいつ更にヤバくなってねぇか? 優秀な生徒を持つと大変だな。」
現在、カリーは化け物サメこと、ギガロドンに追われながら海上を駆け抜けている。
振り返れば、余裕でカリーを丸ごと飲み込める程の大口を開けたサメが迫ってきているにも係わらず(かかわらず)、その表情は余裕そのものだった。
そしてギガロドンの後方で、サクセスによって引き起こされている、天変地異とも呼べる程の戦闘状況を見て、カリーは「はぁ……」という呆れにも似た溜息をつく。
呆れというよりかは、呆気にとられると言った方が正しいのだろうか。
あまりに凄すぎる光景を前に、もはや驚愕を通り越してしまっているのだ。
「あの分じゃ、あっという間に片付いちまうな。んじゃ、こっちもそろそろいいか。サクセスばかりに格好つけさせるわけにもいかないだろ。俺が囮だけじゃないってところを見せてやるぜ! なぁ、デカブツさんよぉ!」
その声と同時に、カリーは突然急停止すると、そのまま急旋回した。
そして、いつの間にかその手に握られている槍を、ギガロドンの大きく開いた口内目掛けて投擲する。
【紫電槍砲】
すると、紫の電流を纏った槍は、螺旋状に回転しながら飛んでいき、そしてそれは、口内から上顎を貫通させて空に舞った。
その瞬間、ギガロドンの体全体に激しい電流が走る。
バチバチバチバチッ!!
ギガロドンの口に大きな穴が開くと、その巨大な体から煙が上がった。
どうやらこの敵は、炎ではなく、雷が弱点らしい。
それに気づいたカリーは、ニィっと口角をあげる。
突破口が見えた!
「おっ! 効いてる効いてる! でもまだ弱いな。ここから一気に攻めるぜ!」
次にカリーが取り出したのは、リヴァイアサンとの戦闘の時にも使った、巨大な弓。
この弓は、好きな属性の矢を連続で飛ばす事ができる、カリーお気に入りの武器の一つである。
その名も
【サジタリウス】
カリーは、先の攻撃で動きが停まったギガロドンを目掛け、再度追撃を開始した。
【乱れうち(雷撃の矢)】
ズバババァァン!
ズバババァァン!
ズバババァァン!
「ギュウオォォォォ!!」
サジタリウスから放たれた100発にも及ぶ雷撃の矢は、ギガロドンの巨大な体の至るところに突き刺さり、追加の雷撃効果を与える。
外皮が分厚く、矢は浅くしか刺さらないものの、体の内側に流れ込む電流は止められない。
あまりの激痛から、ギガロドンは大きな叫び声をあげた。
「ハンっ! デカいだけなら、ただの的だぜ。やりようはいくらでもあるんだよ!」
そこからカリーは更にギガロドンに接近すると、空高く舞い上がる。
カリーが次に取り出したのは、これも以前使った事のある巨大な戦斧。
ちなみにだが、一体どうやってこれほど大きな武器を次々に取り出しているかというと、【ウェポンボックス】と呼ばれる、ブレイブロードの固有スキルに秘密がある。
このスキルは、武器や攻撃アイテムを無限に収納し、それをいつでも取り出すことができる、便利な四次元ポケットだった。
あらゆる武器を使いこなす、ブレイブロードにとって、正に必須のスキル。
そして、カリーは、ギガロドンの眉間を狙って、その斧を振り落とす!!
「これでトドメだ! 【サンダースマッシュ】」
ズドォォォォン!
カリーの重撃は、ギガロドンの眉間を割った。
すると、ギガロドンは完全に沈黙し、やがてその身を魔石に変えていく。
「ふぅう。中々良い感じのコンボだったな。聞いていたとおり外皮は堅かったが、雷が弱点で助かったぜ。」
カリーはそう呟くと、ついでとばかりに、海に沈んでいった巨大な魔石を拾う。
「こりゃあ、売ればいい金になりそうだ。サムスピジャポンに買い取ってくれる場所があるといいがな。おっと、あっちも終わったみたいだ。ここは教官として、余裕の態度を見せてやらねば……。」
カリーが見据える先は、既に天変地異がおさまり、静まりかえっている。
そして一人の影がそこから、激しい水しぶきをあげて超速で近づいて来るのであった。
カリー……YOU WIN
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます