第65話 スケジューリング
「さて、初日から色々楽しませてもらったけど、そろそろ今後の予定を話し合うぞ。とりあえず、サムスピジャポンに着いてからの話と、そこに行くまでに自分達が何をするかについて話そうか。」
ブリーフィングルームに着くなり、俺は話を切り出した。
とりあえず1ヵ月という期間を無駄にしたくはないし、そしてそれ以降の話についても早めに話し合った方がいい。
「んで、どっちから話し合うんだ?」
「そうだな。まずは、1ヵ月間何をするかだな。と言っても俺の中では、既にやる事は決まってるけど。」
カリーからの質問に俺は即答した。
既に自分に足りないものはわかっている。
1ヵ月でどこまで身になるかはわからないが、それをみっちりとこなすつもりだ。
「ほう。んじゃ話してくれ。」
「まず一つは、カリーに稽古をつけてもらう。と言っても、船上で訓練をして船をぶっ壊してしまうと大変だから、激しくないものは船の上で、激しいものは海の上でやろう。」
「海の上? まさか、あれを使うのか?」
そう、あれだ。
あれを初めて見た時から、使ってみたかったんだ。
だって、めっちゃ綺麗だったし。
「あぁ、カリーはひのきのぼうに雷を付与できただろ? ということは俺の装備にもできるんじゃないのか?」
「確かにできる。だけど、訓練の度に船を停めるわけにはいかないだろ?」
ごもっとも。
船は常に走り続けているし、海の上で立ち止まっているわけにはいかない。
だけど……
「俺とカリーなら、普通に追いつけるだろ? それに、もしも海の魔物に襲われた時の為にも慣れておきたい。ダメかな?」
とはいえ、これも全てカリー頼み。
カリーが嫌と言えばご破算な、粗末な計画である。
「いや、いいぜ。まさかサクセスがそこまで考えてるとは思わなかっただけだ。それじゃあ、朝と昼に訓練をするか。夜は……遊んでもいいだろ?」
よかった、どうやらカリーも賛成のようだ。
ちょっと間があったから、もしかしたら断られるかと思ってしまったよ。
夜は遊びたいか……。
まぁ、俺も同じ気持ちだからそれも問題ないね。
「そうだな、夜は自由行動にしよう。だけど、酒はダメとは言わないけど、少しだけにしてくれよ。モンスターが襲ってくるのは日中に限らないはずだから、深酔いは禁止。」
昼間のカリーを見て、一応釘をさしておく。
とはいえ、別にカリーは酒飲みってわけではないだろうから、平気だとは思うけど。
「まぁ当然だな。わかった、訓練メニューは俺が考えといてやるよ。」
「助かる。じゃあ次に……」
「師匠! ちょっとよろしいでござるか? その訓練、某も混ざってもかまわないでござるか?」
突然、イモコが机に身を乗り出す。
その表情は鬼気迫る感じだ。
「え、あ、いや……うん。いいんだけど、イモコは色々大変だろ? 大丈夫なのか?」
「問題ないでござる。航行に支障はきたさないようにするでござる。」
「うん、まぁ、それならいいよ。問題ないよな?」
一応カリーに確認する。
「問題はないけど、海上戦はやめておけ。イモコじゃ船に追いつけない。」
「残念でござるが、それは仕方ないでござるな。」
「あぁ、でもその代わりの事はやってやるよ。ん? いや、いけるか。あの方法なら。イモコ、喜べ。イモコにも海上訓練させられそうだ。」
「本当でござるか!?」
「あぁ、大丈夫だ。」
「感激でござるよ!」
カリーの言葉に目を輝かせるイモコ。
イモコは本当に修行に貪欲だな。
「それとシロマは夕方に俺の訓練に付き合って欲しい。シロマが知っている光魔法等の知識について聞きたい。それと、できれば俺にアドバイスをしてくれるとありがたいんだが。」
「わかりました、それではみなさんが修行している間、私は畑仕事して待っていますね。」
シロマもなぜか楽しそうである。
今回の事で畑仕事が好きになったのかもしれない。
まぁ、あれを畑仕事といっていいのかは疑問だがな。
「期待してる。そして、俺の新しい魔法やスキルもな。」
「はい! 任せて下さい!」
とりあえず当面、船でやる事は決まった。
次はサムスピジャポンに着いてからの話をしよう。
「イモコ、女神の導が指す方は、どこの国の方角かわかるか?」
「そうでござるな。もっと近づかないとわからないでござるが、多分、祭の国タマタマあたりでござるな。光は更にその先を指しているでござるから、そこからは馬車に乗り換えて向かうでござるよ。」
タマタマ……。
名前がイカレ過ぎてるぜ。
やばいんじゃね、その国?
「タマタマか……。変な名前だな、その名前を付けた国主はきっと頭がおかしい。んで、そこはどうなんだ? ルールは厳しかったりするのか?」
「タマタマは良くも悪くも普通の小国でござる。特産品も名所もなければ、逆に悪いところもない場所でござる。」
「なるほど、わかった。そこから先はどんな国を通るんだ?」
「そのまま北上すると卑弥呼様が統治する邪魔大国があるでござる。もしも邪魔大国より先を示すようなら、卑弥呼様にお目通りする必要があるでござるよ。」
タマタマに邪魔大国……そして卑弥呼。
とりあえず、サムスピジャポンで活動するなら、卑弥呼から先に許可は取った方がよさそうだな。
うん、決まった。
「よし、じゃあ話し合いは終わりだ。思ったよりも早かったな。とりあえず、今日はみんな自由にしててくれ。」
俺がそういうと、カリーとシロマが席を立つ。
「じゃあ俺は釣りでもすっかな。」
「私は植物園を見てきます。」
二人とも、楽しそうだな……。
釣りは俺も興味あるから、俺もカリーと一緒に釣りをしようかな。
「某は……もう少し師匠と話すことがあるでござる。少しだけいいでござるか?」
カリーとシロマがやる事を決めて部屋を出ると、イモコに呼び止められた。
なぜかイモコは申し訳なさそうに顔を俯けて(うつむけて)いる。
どうしたんだろ?
随分深刻そうだな。
「ん? どうしたイモコ。俺だけでいいのか?」
「はい……いいでござる。某は、師匠に謝らなければならないでござるよ……。」
イモコが謝る?
なぜ?
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