第64話 チュッパチャップス

「それはいいんだが、シロマの精神力は大丈夫か?」


「はい、スイカ一つくらいでしたら全く問題ありません。しかし、木となるとちょっとわかりませんので、とりあえずやってみようかと思います。」



 シロマはそう言うと、さっそくブドウの種をビニールハウスの端の方に植え始める。



「準備が終わりました。それでは、サクセスさんとセイメイさんも先ほどと同じようにお願いします。それと、セイメイさん、先ほどより少し多めに水を出す事は可能ですか?」


「はい、問題はないかと……。しかし、これは夢でも見ているようです。シロマ様はもしかして、豊穣の神ウカノミタマ様の生まれ変わりなのでしょうか?」



 ウカノミタマ?

 初めて聞くな。



「いいえ、私はただのサクセスさんの恋人ですよ。さぁ、それではやりましょう。」



 シロマはその言葉に突っ込んだりしなかった。

 どうやら、ウカノミタマを知ってるっぽい。

 しかし、そんなことはどうでもいい。


 他の男に対して、自分の恋人だと説明するシロマ。

 その漢気に惚れた。

 いや、惚れてるが、こうやって目の前で言われると、照れくささよりも、なんというか嬉しすぎるぜ!



「シロマちゃんは相変わらずだな。本当にいい子じゃねぇか、サクセス。」


「あぁ、俺の自慢の恋人だよ。」



 俺がそう言うと、なぜかシロマの顔が赤い。

 自分で言っておきながら、言われると照れているのだろうか。

 そんなシロマも可愛すぎるぜ。



 そして今度はさっきより広いスペースで、ブドウの栽培を始める。



「あ、サクセスさんも、肥料は多めに用意していてください。」


「大丈夫、ブドウなら実家でも作ってたからな。任せとけ!」


「はい! 任せました。」


 

 俺の言葉に可憐な笑顔を向けるシロマ。

 どうやら農業が楽しいようだ。

 俺との相性はバッチシだな、いつでも農家の嫁になれるぜ。



 オラんとこ、嫁にくるだべよぉ~。



 そして、遂にブドウ育成計画が始まる。

 今度はさっきと違って、芽が出るとそれが小さな木となり、みるみるうちに大きくなっていく。

 さっきよりも成長はゆっくりだが、それでも十分に早い。


 正味10分もしない内に、目の前に立派な木が聳え立った。

 とはいえ、ブドウの木はそんなに大きな木ではなく、枝が横に広がっている。

 ちょっとビニールハウスを突き破るのでは? と冷や冷やしたが、どうやら大丈夫みたいだ。

 多分、その辺もシロマはわかっていたのだろう。


 そして木に花が咲き、枝に沢山の実ができ始める。



「おぉ~すっげぇ! これは、まじですっげぇ~!!」



 ビニールハウスに広がるブドウの木。

 まさか一つの木にこれだけブドウができるとは思わなかった。



「成功……です。でも、ちょっとこれは……辛いですね。一日一回が限度みたいです。」



 シロマはそう言うと、その場にへたり込む。

 どうやら、流石に木を成長させるにはかなり負担が大きいようだった。

 通常、実ができる程育つのに2から3年かかる。

 そしてここまで大きな成木になるには、おおよそ7,8年は必要だ。



「大丈夫か、シロマ? 無理しすぎだ。もう少し小さくても良かったんだぞ。」


「はい……。ですが、折角ですからできるだけ大きくしたくて……。」


「ありがとうな、シロマ。でも次からは無理しなくていい。時間はあるから、木になるタイプは少しづつ大きくさせていこうな。」


「はい、でも大分自分の力がわかってきました。これも私にとって訓練です。」



 シロマの殊勝な心掛けには本当に脱帽させられる。

 この子の向上心の高さは俺以上だ。

 俺もシロマを見習って、強くならなければならないな。



「なぁ、サクセス。せっかくシロマちゃんが頑張ってくれたんだから、ブドウ狩りしねぇか?」



 するとカリーが期待した目でぶどうを見ながら聞いて来た。

 そういえば、カリーが好きな果物はブドウだと言っていたな。

 今回できたブドウは、粒が大きな巨峰と呼ばれる種類で、甘味も強い。

 カリーにしてみれば大好きな果物が美味しそうに実ってるんだから、今すぐにでも食べたいのであろう。



「それは名案でござるよ。食後のデザートに丁度いいでござる。」



 イモコも珍しく乗ってきたんだし、断る理由もないな。 

 でも、最初に食べる権利があるのは……



「確かにそうだな。よし! 今からブドウ狩りすっぞ! でも、最初に食べるのはシロマな。」



 俺がそういうと、カリーが手に持った短剣でブドウを一房切り取り、俺に渡す。



「ほれ、サクセス。シロマちゃんは疲れてるだろうから、サクセスが食べさせてやれ。」



 かぁぁぁ!

 こいつは、本当にこういうところがイケメンだな。

 さり気ない気づかいが凄い。

 これで彼女いないとか嘘だろ。

 


 俺はカリーからブドウを受けると、シロマの口に一粒持っていく。



「シロマ、口を開けて。はい、あ~ん。」



 俺はシロマの口に指を入れると、プチュッと潰して、皮の中身をシロマの口に入れた。



「ん……甘い……です。」



 シロマは美味しそうに目を瞑って食べると、シロマの口内でぶどうの皮を摘まんでいる俺の指までしゃぶり始めた。




 チュパッ チュパッ……

 レロレロ……




 お……おぉ……おおおおおお!

 ゆ、指が……吸いつかれて……

 え、えろい……えろすぎるだろぉぉぉぉ!



 あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!



「はぁはぁ……はぁはぁ……よ、よかったなシロマ。」


「はい! 皮についた甘味が最高でした!」



 俺が少し息を荒げつつシロマに言うと、シロマはとても喜んでいる。

 だが、そんな俺の様子を見て、カリーが心配してきた。



「どうしたサクセス? どっか具合悪いか?」


「だ、大丈夫だ。それより、みんなも好きに食べてくれ。俺は、もう少しシロマに食べさせてから食べるから。」



 この快感を1回で終わらせるなんて、俺には考えられない。

 ぶどうなんて、もはやどうでもいい。

 


 はやく……早くもう一度しゃぶっておくれ!!



「いえ、サクセスさん。私はもう大丈夫ですよ。食べさせていただきありがとうございます。今はお腹いっぱいですので、私の事は気にせずに食べて下さい。」



 え?

 終わり?

 うそーん。

 ちょっと待ってよ。

 ブドウより、俺は指をしゃぶられたいんだ!!



「あ、あと一つどうだ? せっかくだから、最後にもう一口食べた方がいいと思うよ。」



 俺が悲痛な面持ちで、シロマに食べるように願い出る。



「そうですね……。わかりました、では一ついただきます。」



 よっしゃ!

 GO TO チュッパチュパ!



 だがしかし、俺の願いが叶う事は無かった……。

 シロマは俺の手にあるブドウを一つつまんで、自分で口の中に入れてしまう。



 あぁぁぁぁぁぁぁ。



 チュパチュパ……



 そして、名残惜しそうに口の中でブドウの皮を舐めまわし、手の平にデロっと皮を吐き出す。


 その姿が何故かとても淫靡な光景に見えて、下腹部が……いや、息子が完全体になった。


 わからないが、これはこれでありな気がする。

 なんでだ? やっぱ溜まってるのかな、俺……。



「ご馳走様でした。とても美味しいですね。サクセスさんも、どうぞ。」



 今度はシロマが俺の口にブドウを入れてくれる。


 

 うし、おかえしじゃ!!



 っと思ったら、シロマは俺の口の仲間で指を入れてくれなかった……。



 どうしてだ!

 俺にレロレロさせてくれよ!



「あ、あまいっす……。」


「え!? どうして泣いてるんですか?」


「い、いや、ブドウが美味しすぎて……。」


「それは良かったです。作ったかいがありました。」



 こうして、本日のチュッパチャップス……いや、ブドウ狩りは終わった。

 無事に果実が作れることがわかったのは大きい。

 快適な船旅が更に快適になることは間違いなしだ。


 

 それと折角スイカができたのだから、スイカ割をしたいところだが、やめておいた。

 俺とカリーがスイカ割をしたら、多分床に穴が開きそうだからな。

 夕食のデザートに食べることにしよう。



 ということで、思わぬ食後のデザートに大満足した俺達は、再びブリーフィングルームに移動するのであった。







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