第47話 報酬の分配

 褒賞授与式を終えた俺達は、一度、寝泊まりしている宿に戻る事にした。



 ドサッ



 俺は部屋に入るなり、テーブルの上に今回の褒賞で得た金貨の入った袋を置く。



「さて、カリー、イモコ。ここに今回の褒賞で得た金が50万ゴールドある。これを3人で山分けしたい。」



 俺は、部屋に集まったカリーとイモコに褒賞の分配を申し出た。


 今回、ガンダッダの討伐及び一味の捕縛において、二人の功績は大きい。

 その功績を俺が独り占めにする気もなければ、こういった金の話は直ぐにでもした方がいいと思ったからだ。



「……あのな、サクセス。前も言ったが、今回の討伐はお前がやったことだ。俺は関係もなければ、報酬をもらう気もない。」


「某も同じでござる。某はただ船を出しただけにござる。それに、元々ここの警備隊長をしていた時から、それは某の仕事であり、それを師匠に助けてもらっておいて、某が報酬をもらうわけにはいかないでござるよ。」



 俺の予想通り、カリーとイモコは報酬の分配を断った。

 だが、そう言うわけにはいかないんだ。



「二人の気持ちは分かった。ただ一つ勘違いしているぞ。イモコがいなければガンダッダは追えなかったし、カリーがいなければ一味の捕縛もできなければ、リヴァイアサンの討伐もできなかった。つまり、今回は俺だけの力ではない。」



 俺は事実をありのまま、しっかりと二人に伝える。

 二人とも自分の功績を過小評価し過ぎなのだ。



「サクセスの言いたいことはわかるが、それでも俺はいらないぜ。」



 カリーは真剣な目つきで俺を見据えて言う。

 多分、こういう目になった相手には何を言っても聞いてはもらえないだろう。



「わかった。じゃあこれは俺が全部貰う。その上で聞かせてもらうが、カリーは俺の仲間だよな? そして、イモコは俺の弟子、これに間違いはないか?」


「当たり前だろ。俺はサクセスの仲間だし、この世界を救うまで、最後まで一緒にいるつもりだ。」


「某も、師匠に弟子と認められるならば、弟子に間違いござらぬ。」



 二人とも俺の質問に、当然のように答えた。



「よし、じゃあ俺は仲間としてカリーに10万ゴールドを預ける。これで今後の旅に役立つ物をそろえてくれ。そしてイモコには20万ゴールドを預ける。これでイモコの部下にお小遣いをあげて欲しい。今後も船旅で力を借りるんだ、それくらいはしてやってくれ。それから、今後の船旅に必要な物なんかは、全部その金でそろえて欲しい。残り20万ゴールドは俺が預かる。今後必要な物ができた時に使う予定だ。カリーもイモコも必要な物で金が足りなかったら言ってくれ、この金から出すから。」



 今回の報奨金は全て俺の物。

 ならば、その金を俺がどう使ったって文句ないよね?



「ふっ……。なるほどな。参ったね、サクセスには全てお見通しだったってわけか。あぁ、いいぜ。じゃあこれで俺は必要なアイテムを揃える。丁度いいから、これからもう一度ギルド本部行って色々見てくるわ。」



 カリーはそう言うと、そのまま部屋を出て行く。

 そして、イモコは……



「師匠。師匠がそうおっしゃるならば、某は従うのみでござる。この金で船の整備、備蓄品をそろえ、そして部下達にも特別ボーナスを渡すでござるよ。ですが、それが終わったら……。」


「あぁ、稽古しようか。そうだな、できるだけ広いところがいい。どこかいいところあったりするか?」



 俺の言葉にイモコの目が輝く。

 その顔はまるで、飯をもらう前のゲロゲロにそっくりだった。


 こいつどれだけ稽古したいんだよ!



「嬉しいでござる。それでは、この町の北側に大きな闘技場があるでござる。今は大会のシーズンでないでござるから、某が言えば貸してもらえるでござるよ。」


「大会? コロシアムでもあるのか?」


「コロシアムではないでござるが、年に一回、武闘大会があるでござる。人同士が戦って武術を競うのでござるよ、某はそこで一度優勝したでござる。」



 へぇ~、武闘大会か。

 なんか、その響きを聞くだけで……オラ、わくわくすっぞ!

 というか、イモコは優勝しているのか。

 やはり普通の基準で考えると、イモコはかなり強者みたいだな。



「スゲェじゃんイモコ! しかも武闘大会って面白そう! 見たかったなぁ、武闘大会。うし! じゃあ今日は挑戦者として、やらせてもらうかな。」


「勘弁するでござるよ。師匠が見てもつまらない試合しかないでござる。とりあえず、そこを借りてくるでござるから、師匠も少ししたら向かって欲しいでござる。」


「オッケー。わかった、んじゃシロマとゲロゲロも一緒に来てくれ。何かあった時、シロマがいてくれれば回復してもらえるし、折角だからゲロゲロにも稽古を手伝ってもらうとするか。」



「はい。私は大丈夫です。それに、近くにいれば死んでもなんとかできるはずですから。」


 さり気なく怖い事をサラッと言うシロマ。

 その目は俺ではなく、イモコを見ていた。



 別にイモコを殺す気はないんですけど?

 俺の事どういう目で見ているのか、今度じっくり確認する必要がありそうだな。



 ゲロオ!(僕も全力で戦う!!)



 ゲロゲロは全身からオーラを放ち、毛を逆立てている。



 ゲロゲロちゃん……。

 お願いだから手加減してね。

 殺気漏れてるわよ?

 っつか、殺す気満々か!?



「よし、じゃあ俺達は準備してから向かうかな。」



「了解でござる! では行って参るでござる!」



 イモコは嬉しそうに意気揚々と部屋を出て行った。

 そんなに稽古が嬉しいもんかねぇ~。


 というか、俺ちゃんと教えられるかな……不安だ。

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