第46話 褒賞授与式②
「その辺にするでアール。次に今回のガンダッダ討伐及び一味の捕縛に対する褒賞を授与するでアール。」
お! きたきた!!
今回は何がもらえるかな?
ここは貿易が盛んらしいから、珍しいアイテムとかあるかもしれん!
俺が期待に目を輝かせていると、ボクネンジンは後ろに置いてある宝箱を持ち上げて、俺に渡す。
思ったよりも宝箱は大きくはない……が小さくもない。
まぁ、量より質!!
「ありがとうございます。中を見てもいいですか?」
「当然でアール、確認するでアール。」
俺は期待を胸に小箱くらいの大きさの宝箱を開けると、中には直径5センチ位の獅子の絵が掘られたメダルと1万ゴールド硬貨が数十枚、そして紙の巻物が1通入っていた。
「このメダルと、この巻物は?」
もしも、巻物やメダルがアイテムであるならば、その詳細が頭に浮かぶはずだが、何も入ってこない。
つまり、装備品とか消費アイテムではないらしい。
「そのメダルは、【英雄のメダル】でアール。世界的に大きな貢献をした冒険者のみが持つことを許された、名誉あるメダルでアール。そのメダルを冒険者ギルドで見せれば、どこの町であっても、ギルドマスターと同じ権限を行使できるでアールよ。」
え? ギルドマスターと同じ?
どこでも?
それってやばくね?
「す、すごいですね。でも、この町のギルドマスターだけの権限でそれを渡すことが許されるのですか?」
「心配無用でアール。ここにいるアバロン王とボウサム王の助力で、世界の半数の許可は得ているでアール。」
世界の半数って……。
どんだけこの世界に国があるのかわからないけど、凄すぎる。
さすが大国アバロンの王とカジノの国ヒルダームの王だな。
「は、はは……ボウサム王、アバロン王、ありがとうございます。」
「当然の事だぜ、サクセス。つか、ボウサム王とかお前が言うなよ。」
「余としても当然じゃ。友人であり、英雄でもあるサクセスの活躍。世界が認めるべきじゃ。」
俺の感謝の言葉に二人がそう答えた。
なんだろうな、こうやって認められるのは本当に嬉しい。
だけどそれと同時に、ここにイーゼとリーチュンがいないことに寂しさも感じる。
「おっほん! でアール。次にその巻物は【貿易駐留許可証】でアール。サクセス殿はこれより、船で旅をすると聞いたでアール。であれば、それがあればどの国に行っても、船を駐留させることができるでアールよ。」
「おぉ!! それは助かる!」
思わず声が出てしまった。
これから船旅を始めようとしている俺達にとっては、この上ないアイテム。
幸先が良すぎるだろ。
「それと最後に30万ゴールドが入っているでアール。それでこの町の褒賞は終わりでアール。」
「30万!? 凄い……。ありがとうございます。謹んでお受け取ります。」
全ての褒賞の確認が終わると、ボクネンジン達は後ろに少し下がった。
ーーそして、今度はボッサンが前にくる。
「おう、俺からはこれだ。受け取ってくれサクセス。」
ボッサンはそういうと、俺に何かのチケットのような紙の束を渡してきた。
「え? いや、ボッサン関係なくない? もらえないよ。」
「あぁ? いいんだよ。俺にとってこの町は故郷みてぇなもんだ。それを救ってくれたサクセスには、個人的にお礼がしてぇだけだ。それに、それは俺が持ってても意味がないしな。」
「まぁ、そこまで言うなら貰っておくよ。後、宿屋の手配とかありがとう。すげぇいいところだったよ。」
「がっはっは。だろ? あそこはVIPしか使えないんだぜ? まぁ、この町に英雄以上のVIPなんていないがな。」
そういってボッサンは豪快に笑う。
てか、ここ公式の場だけど、王様があれでいいのかな?
まぁ、俺も大概だけど……。
そして俺はボッサンから渡されたチケットの束を確認する。
【すごろく回数券】
ふぁっつ!?
なにこれ?
すごろく?
「あのぉ~、ボッサン? これ何? ゴミ?」
「馬鹿野郎、ゴミじゃねぇよ。それはこの世界のどこかにある闇カジノのチケットだ。俺が世界中を旅した時に集めたレア中のレアアイテムだぜ。そのチケットがあれば、【すごろく】ってゲームができて、見た事もねぇレアアイテムが手に入るらしいぜ。まぁ、結局どこにあるかはわからずじまいだけどな。がっはっは!」
なんだそれ?
超ワクワクするじゃん!
でも、場所わからねぇのかよ。
「フォッフォッフォ、運がいいのう、サクセス。余からの褒賞は、それに関係あるアイテムじゃよ。ほれ。我が国からの褒賞をもって参れ。」
関係のあるアイテム?
もしかして、ガンダッダ討伐報酬はすごろくの場所を記した地図とか?
センニンは俺の前に来て家来に命令すると、見たことがあるハゲたおっさんが宝箱を持ってくる。
ん?
このハゲ頭……誰だっけ?
そうだ、カッパだ。
カッパ元大臣。
服装から見て、大臣には戻って無さそうだが、傍仕えまでは昇進したようだ。
やるな、カッパ。
「開けていいですか?」
「よい。それは以前依頼しておったガンダッダ討伐の報酬じゃ。」
センニンの許可が下りた事で、俺は宝箱を開いた。
中に入っていたのは、さっきと同じで1万ゴールド硬貨と金色のカード?
「これは……?」
「フォッフォッフォ。それはさっきボウサム王が言っておった闇カジノの会員権じゃ。それがないと、チケットを持っていても闇カジノには入れぬ。余も闇カジノの場所はわからぬが、その会員権があると、闇カジノ会場が近くなった時に光るようじゃ。そして、秘密の出入口が現れるらしいのじゃよ。まぁ、ワシももう少し若かったら探しに行ったんじゃがの。あと、ゴールドは20万ゴールドじゃ。」
なるほど、つまりチケットを持っていてもこのカードがないと闇カジノには行けないと。
ボッサンが探しても見つからないわけだ。
まじかぁ~、すげぇ面白そうじゃん。
俺が二人の王の話を聞いてワクワクしていると、なぜか後ろから熱が伝わってくる。
「カジノ……闇カジノ……レアアイテム……。」
振り返ると、シロマが何故か俺以上に興奮した様子でブツブツと言っている。
そういえば、シロマはギャンブルジャンキーだった。
だが、運は物凄く悪い……。
変なところで火をつけてしまったな。
「シ、シロマ!? おーい、シロマ! 戻ってこぉーい。」
完全に違う世界にトリップしているシロマ。
いくら呼んでも返事がない。
しかたない、とりあえず放っておこう。
「すげぇな! アバロン王! それが噂のVIPカードか! どうりで俺が見つけられなかったわけだぜ!」
「フォッフォッフォ、これを手に入れたのは偶然じゃよ。」
「いや、それにしてもスゲェよ。なぁ、サクセス。闇カジノ見つけたら、俺も一緒に連れてってくれねぇか?」
闇カジノのVIPカードを見て興奮したのはシロマだけではなかった。
ボッサンもまた、大興奮で鼻息を荒くしている。
「いやいや、ボッサンは王だろ!? 俺はいいけど、国を放って王が闇カジノとか……国民が許さないっしょ?」
「っぐ……。確かにそうだな。くそ、なんで俺は王なんだぁぁ!!」
ボッサンが両手で頭を抱えて叫ぶ。
だが、それでも行くといわないところからも、どうやら一応、王としての自覚はあるらしい。
「まぁそれはそうと、ギルドマスターの皆さん、そしてアバロン王、ボウサム王! 素晴らしい褒賞をありがとうございます! これからも、世界の為に活躍することをここに誓います!」
褒賞の授与を終え、俺が今後の意気込みを高らかに宣言すると、再度その場に拍手が巻き起こる。
「頑張れよ! サクセス! お前にこの世界はかかってるからな!」
ボッサンが最後にそう叫ぶと、俺達は一礼をして、その場から出る事にする。
こうして、俺達の授与式は終わりを告げ、明日よりサムスピジャポンに向けての旅が始まるのであった。
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