第6話 ドワーフの嫁
カンカンカンカンっ!!
キーーンッ! キーーンッ!
「おらぁぁ! もっと強く! 気合だ! 気合だ! 気合だ!」
「パパ! これ仕上がったよ!」
「馬鹿野郎!! どこがだ! 装備が泣いてるじゃねぇか! 最初からやり直せ!」
「はい! パパ!」
「ん? そっちはどうしたぁ? そんなんじゃだめだ! やり直し! 甘えてんじゃねぇぞ! 魂を込めてやんだよ!!」
さっきから下の階より聞こえる、ペポシの怒号が凄い。
槌で打つ金属音も凄いが、それよりもペポシの声の方がでかかった。
その声はデカいだけではなく、鬼気迫るような気迫すら感じられる。
さっきまでのペポシとは、まるで別人だ。
いったい今、下はどうなっているのだろうか?
というか、俺の装備は大丈夫なのか?
壊されたりしてないよね?
俺は、あまりに激しい声と音に不安になり、気になって下の階へ降りて見に行ったら……
「部外者は来るんじゃねぇ! 邪魔だ! 上で大人しくまっとれ!」
と怒鳴られてしまった。
元々、ペポシの顔は強面ではあったが、あれは完全に別人である。
正に鬼の形相。
ドワーフの鍛冶姿、はんぱねぇ。
怒られてしまった俺は、そのままダッシュで踵を返すが、なんだか嫌な気持ちにはならなかった。
なんでだろうか、多分、あの本気の姿が格好いいと思ったからかもしれないな。
なんにせよ、邪魔するのはよそう。
「ふぅ~。まぁしかし、確かに今まで、武器の手入れとかしてこなかったからなぁ……。今頃、トンズラは……ぷぷぷっ」
なんとなく、トンズラが熱いハンマーで叩かれているのを想像すると笑えてくる。
一体、どんな感触なんだろうなぁ……。
意外に気持ちよくなっていたりして。
とそんな事を考えながら、ぼ~っと一人でいると、階段から誰かが上がってくる音が聞こえた。
タンタンタンッ……
「あら、お客さんかしら? もしかして、ダーリンが仕事しているのはあなたの依頼?」
その女性?は俺を見るなり尋ねてくる。
小柄でずんぐりむっくりした体形に、髭がないだけで、眉毛がめちゃ太い人。
声と話し方から、何となく女性なのはわかるけど……うん、きっと女性だ。
「初めまして、私は旅の冒険者でサクセスと言います。ペポシさんのご厚意に甘えて、今晩泊めてもらう事になりました。それと、ペポシさんが鍛えている装備は、確かに私の物ですね。依頼はしてませんけど……。」
最後の一言だけは小声で、そう告げると、その女性?は口に手を当ててお上品に話し始める。
「あらあらあら、そうなの。ダーリンのお客さんで間違いなかったのね。それじゃあ、今日はうんと美味しい物作らないとねぇ。私はペポシの妻、ガチャッコよ。よろしくね、サクセスさん。」
あぁ、やっぱ奥さんだったか。
余計な事を言わなくてよかった!
まぁ、大量の食料品を抱えているんだから、奥さんだとは思ったよ。
「それは楽しみです。もしよろしければ、そこにあるお酒を使ってください。料理にも使えるお酒ですので。」
「え? お酒! あらあらあら! ほんとだわ! おいしそうだわぁ。じゃあ早速夕飯の準備するから、そこで待っててくださいね。」
俺が持ってきたお酒を見て、目を輝かせたガチャッコは、すぐさまそれを手に取って奥に消えていく。
どうやら、この奥はキッチンのようだ。
ドワーフの料理は初めてだが、なんとなくだが、味が濃そう。
でも、ちょっと楽しみでもある。
しかし、今日はラッキーだったな。
まともな飯は食えそうだし、装備は強化してくれているっぽいし……。
うん、幸先がいい。
だけど、隣の山のドラゴンってのと、そこに向かった他の冒険者が気になるな……。
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