第4話 ペポシの家族

「あ! パパ! パパおかえり!! 早かったね!」

「あれ? 親父、今日は外に出るんじゃなかったのか?」

「おとん! その人誰??」



 ペポシの家まで着くと、鍛冶場で作業をしていた子供達が手を止めて、ペポシに挨拶をした。

 

 というか、髭もじゃのおっさんが、おっさんに向かって「パパ」だと?

 違和感しかねぇ。

 しかも、親父だの、おとんだの、呼び方も違う。

 恐ろしき、ドワーフファミリー……。


「おう、いや、様子見に行こうと思ったんだがな、まぁそこまですることもねぇし、丁度新しく旅人が迷い込んできたからよ、せっかくだから連れてきたぜ。かぁさんは家にいるか?」


「ママは、夕飯の買い出しに行ってて今はいないよ!」


 ペポシの質問に、どう見てもおっさんにしか見えない子供言葉のドワーフが答える。



 様子見?

 何の話だろうか?

 まぁいい、とりあえず俺も挨拶だ。

 ファーストインプレッションは大事だからな。



「どうも初めまして、サクセスといいます。今日、一晩お世話になります。」


「おお! 昨日の人より礼儀正しいね、パパ!」


「そうだな、昨日のあいつは、いけすかねぇ感じだったからな。あれに比べると、このサクセスは中々分かってる奴だぜ。」



 ん?

 昨日も誰か来たのかな?

 まぁ、それは後でゆっくり聞けばいいか。



「え? じゃあまさか……ぱぱ!」


「そうだ、どんなのを持ってるか楽しみだぜ、がっはっは!」



 そしてなぜか、子供言葉のおっさんとペポシは、不気味な笑みを浮かべて笑い合っている。

 正直、意味がわからないし、ちょっと気持ち悪い。



「じゃあ、パパ。まずは見せてもらっちゃおうよ!」


「おう、そうだな。よし、じゃあサクセス、見せてくれ!」



 ファッツ???



「え? 見せてって、何をですか?」


「とぼけるなよ、あれだよあれ!」



 あれ?

 あれってなんだ?

 そんな約束してたか?



「えっと、あぁ! もしかして……これですか!?」



 俺は何かわからないが、困ったら酒を出せばいいと、これまたイーゼに教わった通り、馬車から一本の料理酒を取り出して、ペポシに渡した。



「おおおおぉぉ! そうそう、それだよ、それ! 初めて見る酒だな! こりゃあ楽しめそうだぜ!」


 

 どうやら正解だったらしい。

 いつの間にか、周りの息子たちも、俺が酒を出した瞬間にガバっと集まって来た。



「おとん! 早く飲もう!」

「パパ! 僕が一番ね!」

「ダディ! 俺にも飲ませてくれ!」



「わかったわかった。焦るなって。じゃあ、今日の仕事は終わりだ! 上で宴会するぞ!」



「やっふーーーー!!」

「さっすがビッグダディ!!」

「ぱぱーーー!!」



 おっさん顔の息子たちが、ペポシに一斉に飛びついた。

 おっさんに囲まれる、おっさん……。

 まぁ、うん。

 仲の良い家族は、見ていて気持ちがいいな。

 ちょっと気味悪いけど……。



「おう、じゃあサクセス。中に入ってくれ。」


「わかりました、では、ちょっと馬車をここに置かせてもらいますね。馬の餌とかあると、ありがたいのですが……。」


「あ、僕が世話しておくよ! だから、僕にそのお酒、一番最初に飲ませてね!」



 さっきからペポシをパパと呼んでいるおっさんが、目を輝かせて近づいて来た。

 どう見ても、40歳くらいのおっさんにしか見えないが、多分だけど、一番若いんだろうな……。



「ありがとうございます。それでは、馬をよろしくお願いします。」



 俺はそういうと、その子に馬を任せて、家の中に入って行った。

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