Episode of Siroma 8
当時、絶体絶命のピンチを迎えたシロマは、ラビッツの声に従い、時空少女となった。
そして、その時の願い事は……
※遡る事3年前
「僕と契約して、時空少女になって欲しいんだ。そうすれば僕は、君の願いを一つ、叶えることができるよ。」
「え? いきなりなんですか、それ? 時空少女になれば、この状況を変えられるのですか?」
突然、ラビッツに訳わからない事を言われたシロマ。
だが、それが今の状況を変えられるものなのか、冷静に確認をする。
「もちろんさ、君は凄い力を秘めているんだ。時空少女になれば、あんなやつら、一瞬でどうにでもできるよ。」
ラビッツはシロマの質問を肯定した。
ならば、シロマは悩まない。
「わかりました、選択の余地はありません。私は、必ず生きて、仲間のところに帰らないといけません。それでどうにかなるなら、私は契約をします。」
「うんうん、素直でいいね。じゃあ、何か願い事を言って。」
「え? 今ですか!? ちょっと突然そんな事を言われても……。じゃあ、今すぐ天空職に転職させて、元の世界に戻してください。」
なんでも願いが叶うなら、当然それを選ぶシロマ。
しかし、それは無理だった。
「ごめんね。流石にそこまでは無理、ある程度制限があるんだ。他にない? 早くしないと、見つかっちゃうよ!」
現在二人は、世界中の住民から逃げ隠れているところである。
そして、見つかるのは時間の問題だった。
故にシロマは、短い時間で願い事を決める。
時空少女の力で、この現状を打開できるならば、それを願いにする必要はない。
しかし、一番叶えたい願いは無理だと言われる。
それならば……これしかない!
「わかりました、では、私が本当にどうしようもなくピンチになったら、私の大切な仲間達が、私を助けに来てくれる。これならどうですか?」
やはり、一人は不安なシロマ。
しかし、もしも本当に仲間がきてくれるならば、怖いものはない。
だからこそ、それを願った。
「それでいいんだね? まぁ仲間を召喚するのは、多分無理だけど、完全に再現された幻影なら制限付きで可能かな? じゃあ、僕の時計に願いをかけて。」
「その時計にですか? わかりました、では願います。みんな、お願いです。私に力を貸してください!」
こうして、シロマはその時計に願いを込めたのだった。
そして、それが今、やっと叶ったのである。
※元の時間軸に戻ります。
「クソ! クソ! クソ! 後少しだったのに! 3年だぞ! 3年かけてここまできたのに! 畜生!!」
サクセス達の幻影が消えた後、ラビッツは、悔しすぎて地団駄を踏んでいた。
「残念でしたね。ところで、最後に私から質問します。あなたは……何なのですか?」
ディメンションアローを突き付けながら、シロマはラビッツに問う。
「ははは、僕の負けだね。僕はなんでもない、ただのうさぎだよ。っていっても、信じられないよね。あいつが言ったように、僕はグリムワールっていうモンスターそのものさ。こうやって、精神力の高い巫女を育て上げて食べるのが大好きなんだ。君が消していった穢れは、僕が過去に食べてきた巫女達を再現したものさ。でもね、僕を創ったのは、人の穢れなんだ。そう、僕は君たちに作られたんだ!」
最後は、やけくそになって叫ぶラビッツ。
ディメンションアローを向けられた瞬間に、既に全てを諦めていた。
だからこそ、最後に自分という存在への怒りをシロマにぶつける。
「あなたは……そうですか。もう何も聞きません。でも二言だけ言います。ごめんなさい、そして……いつかまた……」
そこまで行って、シロマはディメンションアローをラビッツに放った。
ラビッツは、その言葉だけで、シロマが言おうとしたことを理解する。
3年間、騙してきたとは言え、ずっとシロマを見てきた。
だからこそ、シロマの気持ちが伝わる。
シロマが伝えたかったことは……
人の穢れが、自分という存在を生んでしまった事に対する謝罪。
そして、いつか、同じ人に生まれ変わって出会える事への祈り。
この二つであった。
ラビッツは消滅する前に、笑う。
その笑顔は、今までの邪悪なものではなく、人が自然にしてしまう笑顔そのものだった。
「さようなら、不思議の国のうさぎさん。」
シロマが矢を放った瞬間、ラビッツは消滅した。
すると視界が元の王宮の部屋に戻っていく。
シロマは、全てのグリムワールを攻略した。
ラビッツを消し去った事で、この世界からグリムワールは消える。
この試練の目的は理(ことわり)を示す本を見つける事。
つまり、グリムワールが消えた今、結局、必要な本は見つからなかった事になる。
この事にシロマが気付くのは、もう少し先。
つまり、本当の意味で、シロマの試練は終わっていなかったのだった。
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