Episode of Leecyun 2
「ヒャッハーー! いけいけぇぇー!」
現在、リーチュンを乗せたマークは、凄い速度で砂漠を駆け抜けている。
途中、巨大なミミズ型のモンスターや、サボテンのような姿をしたモンスター等が現れた。
しかし、マークは駆け抜けながらも、羽虫を払うが如く、大蛇のような尻尾を振り払うことで、現れるモンスターを一刀両断し、その歩みを止めることはない。
正にその姿ーー疾風迅雷
シュパンッ! シュパンッ!
「わいに向かってくるなんて、100年早いんやでぇ~!」
「やるじゃん、マーク! このまま、一気にレッツゴー!!」
そしてリーチュンは、ノリノリだった。
マークの速さは、馬とは比べ物にならない程速い。
思えば、ゲロゲロに乗った事が無かったので、これだけ速く走る乗り物には、乗った事がなかった。
更に楽しいのは、速さだけに限らない。
傾斜を下る時に、羽を広げてピュンピュン飛んだりするものだから、まるで絶叫系アトラクションに乗っている気分になって、楽しくて仕方ないのだった。
そんな新しい乗り物を楽しんでいると、前方に不穏な物体が見え始める。
「あ! マーク! なんか、ミミズがたくさん集まってるわ!」
「ほんまや! 誰か襲われとりますなぁ。サンドワームは複数で獲物を囲んで、捕食するさかい。」
「あっ!? ほんとだ! 馬車っぽいのが隙間から見えるわ! じゃあ助けるわよ!」
「ほんまでっか? ミミズは、あんま美味しくないさかい、食べる気せぇへんのやけど……。」
「いいから! ほら、早くあそこに突っ込んで、マーク!」
なんとなくだが、そのセリフをサクセスが聞いたら、嫉妬に狂いそうな想像ができる。
そしてマークは、仕方なく、ミミズの包囲網に突撃する。
「オラオラオラ! どきなはれ! 頭領(ドン)のお通りじゃぁ!」
壁のように立ちはだかるサンドワーム。
それに突っ込んだマークは、叫ぶと同時にブレスを吐いた。
すると、ミミズが一斉に燃えだす。
ゴォォォォォ!
「ちょっと! 熱いってば! ただでさえ暑いんだから、冷たいの吐いてよ!」
砂漠の熱気に、更なるブレスの熱が加わり、辺りの温度が急上昇する。
流石に闘気を纏ったリーチュンであっても、かなり暑苦しかった。
「了解でっせ! ほな、いきますわ! ブゥワァァァァ!」
今度は口から凍える吹雪を吐いた。
辺り一面の砂漠は、ミミズと共に一気に凍る。
予想外に、そのブレスの破壊力は、通常のドラゴンよりも威力が高かった。
「さっむ!! マークやりすぎ! でも、熱いよりはマシね。あ、でも太陽の光が温かくて丁度いいわ!」
「ペット遣いが荒いでまんなぁ。」
マーク達は、一瞬で周囲を囲んでいたサンドワームを一掃すると、ターバンを巻いている男二人とラクダの馬車が見えた。
周囲に倒れている者はいない。
どうやら、間に合ったようだ。
しかし、ターバンを巻いた男達は、マークを見てブルブルと震えている。
いや、震えているのは寒さからかもしれないが。
「アンタ達大丈夫? もう平気よ。」
リーチュンが男達に声をかけると、二人は、そこで初めてリーチュンの存在に気付く。
「あ、あなたは……?」
「アタイはリーチュンよ。マークに乗って走ってたら、アンタ達が襲われているのを見て、助けにきたわ。」
「そ、そうですか……。ところで、そこにいるのは……もしかして、砂漠の支配者イヌビス様ではありませんか?」
男達は、畏怖した目でマークをチラ見して言った。
どうやら、マークがさっき言ってた言葉は本当だったらしい。
イヌビスは、ここら辺の人間の間では有名だ。
砂漠に突如現れる、孤高の王。
他のモンスターとは比べ物にならない戦闘能力を有し、時に人間を襲い、時に人間を助ける。
この世界に住む者達は、子供の頃から、
「悪い事をするとイヌビス様に食べられるぞ。」
と言い聞かせられて育ってきていた。
その為、実際にイヌビスを見たものは少ないが、伝説のモンスターとして周知されていたのだった。
「イヌビス? これはマークよ! あたいのペットよ! ね? マーク!」
「そのとおりでんがな。わいは、マークやでぇ~。」
突然、マークが言葉を発した事に、目ん玉が飛び出る程驚く、男達。
「しゃ、しゃべった!! やはり、伝説は本当だったか! 間違いない、イヌビス様だ! イヌビス様に感謝を!」
二人の男は、その場で土下座をしながら、マークに感謝を述べる。
「ちょっとぉ! アタイは? アタイも助けにきたんだけど!」
「ははっ! あなた様はイヌビス様の使いの方でございますね。あなた様にも感謝を!」
そう言って、男達はリーチュンの話を流しつつ、感謝した。
なんとなく腑に落ちないリーチュン。
「まぁいいわ。って、あれ? なんかアタイがマークの手下みたいじゃない!」
「いやいや、姉さん。能ある鷹は爪を隠す言いはりまんでぇ。」
「ん? どういう意味?」
「つまり、本当に凄い人は、あえて目立とうとせずに、その凄さを隠すいうことですわ。それが格好いいちゅうもんですわぁ。」
「そうなの!? じゃあ、それでいいわ! アタイは鷹ね! 格好いいわね。」
その二人のやり取りを、ジッと眺める男達。
そして、ようやくリーチュンが、自分の信じる伝説の存在よりも、高位の者であることを理解した。
当然、伝説のモンスターより上となれば……【魔王】だと思う。
それに気づいた二人は、再び震えだす。
「た、大変ご無礼致しました! 魔王様とも知らず、数々の失礼な言葉を、どうかお許しください!」
「え? 魔王!? どこ? どこにいるのよ!?」
男達の言葉に、リーチュンは一瞬で戦闘モードに切り替えて、周囲に目を凝らす。
だが、いくら探しても、魔王は見つからない。
「いないじゃないの? どこにいるのよ? 魔王。」
「い、いえ……あなた様が魔王様では……?」
「はぁぁぁ~? なんでアタイが魔王なのよ! アタイは……タダの人間よ! ね、マーク?」
「そうでんなぁ。タダの美しく、強く、魅力的で、単純な……人間ですわ!」
最後の単純なだけは、ボリュームを抑えて答えるマーク。
「でしょでしょ~。わかってるぅ~。このこのぉ~。」
それに気づかないリーチュンは、上機嫌である。
「あ、それでアンタ達、なんでこんなところにいるわけ?」
「はは、私達はピラミッドの攻略を終えて戻るところでした。しかし、行きと違い、仲間が大分死んでしまい、後少しで町まで着くというところで、襲われてしまったのです。」
リーチュンは、ピラミッドという言葉に反応する。
「え? アンタ達もピラミッドの攻略してるの?」
「はい、私達はトレジャーギルドに属しておりますので、ここら辺のピラミッドの探索を生業としております。失礼ですが、あなた様もピラミッドの攻略を?」
「そうなの! って言っても、一度も行った事ないけどね。アタイ、ここにきたばっかだから。丁度いいから、色々教えてよ!」
都合よく、ピラミッドの情報を知る者に出会えたリーチュン。
特に考えずに行動をしていたのだが、善行はやはり、良い事として自分に返ってくる。
「では、まだトレジャーギルドには登録されていないのですか? わかりました、詳しく説明させていただきます。よろしければ、そこにいるイヌビス様……ではなく、マーク様に護衛をお願いしてもよろしいですか?」
「全然オッケー! いいわよね、マーク? トレジャーギルドについて詳しく聞かせて!」
「当然オッケーでんがな。では、姉さんは馬車の中に入って、話でも聞いててくんなはれ。」
マークも了承したことで、リーチュンは馬車の中で、男達の話を聞くことになる。
思いもよらぬ、幸運な出会いの連続。
リーチュンの旅は、幸先の良いスタートを切るのであった……。
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