Episode of Ease 5


「え!? もう終わったんですの?」


「そそ、終わったよーん。ふー、疲れた。一応、僕さ、精霊神なわけじゃない? どう? 神っぽかった?」


 

 …………。



 その言葉にキョトンとするイーゼ。

 ここにきて、イーゼの理解と予想を超えた出来事が起こるのだった。



「え、えぇ。まぁ。でもそちらの方が可愛らしくて、よくってよ?」


「やっぱぁ? そうだよねぇ。僕もさ、かたっ苦しいの苦手でさあ。でも、ほらイーゼちゃん頑張ったじゃない? それでやっとここに辿り着いたわけだしさ、ちょっとやっぱ、感動のエンディングを演じてみたわけよ。僕ってヤサユル系だからさ。」


「や、やさゆる??」


「そそ、優しいユルキャラってこと。んじゃさ、簡単にその職業の事説明するね。」



 口調が変わってから、精霊神の展開は早い。



「え、えぇ。あ、お願いしますわ。」



 どう対応を取ればいいか、イーゼはわからなくなる。

 その顔は、イーゼには珍しく、困惑に満ちていた。



「んっとね、その職業は、天魔賢導師っていって、今まで誰もなった事がないレア職業なんだよね。」


「は、はい。そう伺っていましたが……。」


「もう! イーゼちゃん! もっとリラックスして。ほら、可愛いぼくちゃんを撫でていいからさ。」


「わかりましたわ。でも、続きを先にお願いしますわ。」


「ぶぅー。冷たいなぁ。森ではあんなに優しかったのに……。まぁいいや、それでね、君の持っているその鞭のスキルに???ってあったじゃない? その職業についた事で、それ、解放されているから、ちょっと確認してみて。」


 イーゼは精霊神に言われて、直ぐにグリムダルトの鞭の能力を確認する。



【グリムダルトの鞭】 レアリティ8


 攻撃力 40+魔法値

 スキル 魔力攻撃 魔法融合



「魔法融合ってのがでましたわ!」


「そうそう、それそれぇ~。要はね、その職業さ、レベル上がっても新しい魔法とか覚えないわけよ。でも、今まで覚えた魔法を、自分の好きなように融合させて使えるってわけ。まぁオリジナル魔法ってやつかな。だから、名前とかも君が決めていいよ。あと、その冠のスキルにある【魔力解放】なんだけど。それ、この世界で、君がずっとやってきたことができるよ。」



 ずっとやってきたこと……。


 マジックボウは、魔力を込める量によって威力が変わる。

 常に最大限溜めて撃つには、隙が多すぎるし、かといって少なすぎても、ダメージが通らない。

 故に、その状況によって、魔力量を使い分けていた。



「魔力を注ぐ量によって、威力が変わることですかね?」


「ピンポーン! だから低級魔法でも、場合によっては、上級魔法よりも威力があがるよ。」


「それは凄いですわね。確かに規格外の戦闘力になりそうですわ……。」


「ふっふーん。そうなんだよ! だからって悪用しないでね! あ、後さ、レベル1に戻ってるから。まぁ元の能力の半分は引き継がれるけどね。それと、これからはレベルが上がるごとに今までの3倍ステータスが上がるよ! 凄いでしょ!」


 

 !!?



 衝撃の事実に、イーゼは硬直した。


 サクセスの10倍には遠く及ばないものの、それでも、今までより数段近づくことができる。

 それは、何よりもイーゼにとって嬉しいことだった。



「それは、凄まじいですわね。早速、今の能力を確認しますわ。」



 イーゼは冒険者カードを確認する。



イーゼ 天魔賢導師 レベル1


 ちから   25

 体力    50

 すばやさ  40

 知力    180

 運     20



「思ったよりも、ステータスは下がってないですわ。」


「まぁね。この世界に来てからも、実はレベルあがってたからね。ぶっちゃけ、レベル99越えてたよ。イーゼちゃん。」


「そ、そうですの。知りませんでしたわ。レベルは99以上があったのですわね。」


「いやいや、ここの世界が特別なだけさ。そっちの世界では特別な理由がなければ99で頭打ちだと思うよ。あ! 後、一つだけ注意しておくね。ステータス3倍になるけど、その分、経験値も三倍必要だから、今までよりレベルは上がりにくくなってからね!」


「色々と勉強になりますわ。そうですか、元の世界では経験値が……って! それよりも、元の世界には戻れるんですわよね!? もう5年も経ってしまわれましたけど、元の世界は大丈夫なのでしょうか!?」



 元の世界というフレーズで、現実の事を思い出すイーゼ。

 せっかく自分が強くなっても、救うべき者と世界がなければ、意味がない。



「ごめん。それは僕にもわかんない。だけど、安心して。こっちの世界と、そっちの世界は時間の流れが違うから。多分、こっちの世界の方が10倍位早かったはずだよ。ターニャちゃんが言ってたし。あ、最初に君の傍にいたのも、ターニャちゃんにお願いされたからなんだ。それなのに……僕を置いてって…酷いよ。イーゼちゃん。」


 そう言って泣いた振りをする精霊神であったが、イーゼにはほとんど聞こえていないし、見る気もない。


 なぜならば、時間の流れという話を聞いて、ある大事な事に気付いたからだ。


「そ、それでは、元に世界では半年程しか経過していないと!? 早く! 早く戻すのですわ!!」


「ちょ、ちょっとイーゼちゃん落ち着いて。ほら、もっと僕を見て!!」



 バッシィィィン!!



「ピーチクパーチクうるさいわね!! さっさと元の世界に戻しなさい! この豚畜生め!!」



 突如、地面を鞭で叩きながら叫ぶイーゼ。



 早くしないと、他のメンバーに先を越されると思い、焦り始めたのだった。

 5年経っていると思っていた時は、諦めていたのだが、半年となれば話は変わる。

 自分が誰よりも早くサクセスに会えると思ったのだ。



「ひ、ひぇぇぇ! 女王様! お許しおぉぉぉ!」


「いいから、早くしなさいって言ってるのよ! 獣畜生が!」



 バッシィィィィン!



「は、はい! 直ぐに元の世界に送還します! それでは、頑張ってくださいませ!!」



 精霊神はいつの間にか、女王様の下僕に成り代わり、即座にイーゼを元の世界に送る。


 こうして、イーゼは見事、天空職の試練を越え、元の世界に戻るのであった。







※ イーゼ編の中身については、本編が終わり次第、アナザーストーリーで公開予定です。


 


 

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