第48話 新世界へ

【仲間達編】


「本当にサクセスさんが起きる前に出ていって大丈夫でしょうか?」


「あら、シロマさん。一人だけ抜け駆けはいけませんわよ。もし心配であれば、わたくしが起きるまで付きっ切りで看病致しますので、先にお二人で試練を受けてもかまいませんわ。」


「ダメ! みんな一緒に行くの! 昨日みんなで話し合ったでしょ!」


「リーチュンは、後半寝てたじゃないですか! わかりました。もう言いません。手紙も書きましたし、後は、私達ができるだけ早く試練を乗り越えるだけです。」


 シロマ達はサクセスを宿屋で寝かすと、二日間だけはサクセスの容態を見ていた。

 どうやら外傷はないようで、眠っているのは精神的な問題である事が判明する。

 とりあえず、生死の心配がない事にひとまず安心した。


 そして、その間に試練について三人で話し合い、サクセスが目覚める前に神殿に向かう事を決めたのだった。


「なんか、アタイ緊張してきたわ。やっぱ、一人でってのは結構怖いもんね。」


「あら、あなたがそんな事を言うなんて珍しいわね。でも……気持ちはわかりますわ。最愛の人と1秒でも離れたくありませんもの。」


「イーゼさん……多分、リーチュンはそう言う事をいってるわけでは……。」


 三人はそんな話をしながら歩いていると、いつの間にか女神像の前まで来ていた。


「じゃあ行きますわよ。順番は昨日決めた通り、わたくしが一番最初で、次がリーチュン、そして最後がシロマさん、これで間違いないですわね?」


「はい。間違いないです。それではご武運を祈ります。」


 シロマに確認を終えたイーゼは、女神像の前で祈りを捧げる。

 その顔は緊張からなのか、強張っていた。


「女神様。わたくしを天空職の試練へと導いてください。」


 イーゼがそう祈ると、イーゼの頭の中に女神の声が入ってくる。


「よくぞ決意しました。それではあなたを試練の世界へ転移させましょう。あなたの試練は……塔の頂上を目指しなさい。そこにあなたの求める物があるでしょう……。」


 女神の声と同時に、イーゼの体が眩い光りを放つ。

 そして、光が消えると同時にイーゼはそこから消えた……。


「うそ! イーゼが消えたわ!」


「凄いですね……。やっぱり、少し怖いです。」


 リーチュンが驚きの声をあげると、シロマはその光景を見て、足が震えだした。


「じゃ……じゃあアタイも行くね。シロマ! 絶対生きて戻ってこようね!!」


 そしてリーチュンもまた女神に祈りを捧げる。

 その歩みは決意の篭った足取りであった。


「あなたも行くのですね? わかりました。……あなたの試練は……ピラミッドの中にある伝説の武器を見つけなさい。」


 またしてもリーチュンの体が光に包まれ……そして消えていく。

 ついにシロマは、その場に一人になってしまった。


「怖いです……。サクセスさん……。ううん! ダメ。行かなきゃ! 私も……がんばらなきゃ!!」


 シロマは震える体をなんとか抑え込み、女神像の前までゆっくりと歩いていく。

 足が震えてうまく歩けないのだ。

 しかし、しばらくすると、女神像の前に辿り着き、二人と同じように祈りを捧げる。


「あら? あなたは震えているのね? 怖いならやめても構いませんよ?」


「いいえ! 女神様。お願いします。覚悟は決まりました! 私に試練を受けさせてください!」


「そうですか……あなた達は本当に強いですね。わかりました。あなたの試練は……この世の理を示した本を見つけなさい。それがあなたに課された試練です。」


 その言葉と共に、シロマもその場から消えていく。


 三人はそれぞれ、別の世界へ転移していった。

 

 イーゼは天空まで伸びる塔のある世界。

 リーチュンは、大きなピラミッドが中央にある砂漠の世界。

 そしてシロマは……町一つ分はある巨大な古代図書館のある世界。


 どの試練も簡単なものではない。

 そしてその世界で死ねばこっちの世界には帰れない。

 しかし、誰もが必ず生きて戻る事を決意し、旅立っていったのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る