第27話 転職(前編)
「う~ん……よく寝たな。いい朝だ!」
俺は、部屋の窓ガラスから漏れ出ている朝日の光に目を覚ます。
昨日は、久しぶりにお風呂に入ることができ、ふかふかの布団でぐっすり眠れたことから、元気いっぱいだ。
そして、誰を気にする事もなく、一人で……まぁそれはいいとしよう。
とにかく完全にリフッレッシュできた。
げろぉ(おはよう)
「おはようゲロゲロ。ゲロゲロもぐっすりだったな。」
俺の寝ている布団の中から、ゲロゲロが顔を出して挨拶をする。
ゲロゲロはお腹いっぱいご飯を食べると、そのままぐっすり眠り続けていた。
もふもふ……
ゲロロォン……
そんなゲロゲロの頭を撫でていると、気持ちよさそうに鳴く。
朝からゲロゲロは可愛いなぁ。
「おし、じゃあ朝ごはんにしよう!」
早速俺はゲロゲロを連れて、一階の食堂に向かった。
女性陣の朝は早いようで、既に朝食を食べている。
「あ、おはようサクセス。ごめーん。先に食べちゃってるよ!」
「あら、おはようございますサクセス様。昨晩は寂しかったですわ。」
「おはようございます、サクセスさん。すいません、リーチュンがうるさいから先に頂いています。」
どうやらお腹を空かせたリーチュンが、我慢できなくなって、みんなで食べ始めたようだ。
「いやいや、全然かまわないよ。俺こそ、起きるのが遅くてすまなかった。じゃあ俺も頂こうかな。」
テーブルに置かれているのは、柔らかそうなパンとソーセージ、そしてスクランブルエッグ。
どの町でも朝食メニューは、ほとんど変わらない。
俺としては、朝は丼物がいいんだが……。
「サクセス様、今日はどういった予定にしますか? デートであるならば、私を連れて行ってくださいませ。凄くいいところがございますわ。」
え? いいところ?
どこどこ!
行く 行く!
「朝っぱらから何言ってんのよ。今日はアタイよ!」
「いえ、皆さん忘れていませんか? 早く神殿に行ってオーブを渡しに行きましょう。」
シロマは呆れた目をしてリーチュンとイーゼを見て言う。
かくいう、俺もすっかり忘れていたんだけどね。
「シロマの言う通りだな。飯が終わったら早速、神殿に行こうか。」
「残念ですわ。けど、仕方ありませんわね。まぁ時間は沢山ありますから。うふふ……。」
イーゼの目が怪しく光っている。
なぜ、視線が俺の股間に向いているんだ!
ロックオンするんじゃない!
「あ! そうだ! 転職! アタイ転職するんだった!」
「そういえば言ってたな。リーチュンは何に転職するんだ?」
武闘家に上位職ってあったかな?
そういえば、俺、なんも知らないわ。
武神とかあったりするのかな……。
「えっとね……アタイはねぇ~」
「なんだよ、もったいぶるなよ。まさか賢者とか言わないよな?」
いつもすぐに何でも話すリーチュンが、中々言わない。
ちょっと不思議だ。
「えっとね……アタイはね、お嫁さんに転職するわ!」
ぶっ!!
思わず口の中の物を噴き出した。
お嫁さんって……。
え?
あるのか?
本当にあるのか?
装備は裸エプロンか!?
「馬鹿な事言わないで下さい。」
シロマがすかさずつっこんだ。
やっぱり、そんなのないらしい。
「えっへへー。冗談よ、冗談。アタイも何になるかまだ決めてないんだ。神殿行ったら考えるわ!」
どうやらもったいぶっていたのではなく、何も考えていなかったようだ。
まぁリーチュンらしいといえば、リーチュンらしいか。
そんな話で朝から和気あいあいとしつつも、朝食を終えた俺達は早速マーダ神殿に向かって歩いて行った。
朝から町は活気に溢れている。
戦勝ムードというやつなのだろうか。
至る所で、朝っぱらから瓶を片手に顔を真っ赤にして騒いでいる人や、昨日はあまり見かけなかったような光景も目に映ってくる。
「なんか、カップル増えてね?」
そう、昨日はあまり見なかったけど、増えているもの。
男女のカップルだ!
いや、男男もいそうだが、俺には見えねぇ!
「そうですわね、やはり昨日の大戦の勝利で昂っている方が多かったのでしょう。わたくしも昂っておりますので、今夜こそ……」
そそそっ……
すすすっ……
そう言いながら近づいてくるイーゼをかわす。
「イーゼさんはともかくとして、気持ちはわからないわけではないですね。」
シロマが珍しい事を言った。
溜まってるのかな?
「シロマもあんな風にイチャイチャしたいのか?」
俺は木の下で抱き合いながら激しくキスしているカップルを指して言う。
つうか、人目もはばからず、白昼堂々とよくやるもんだ。
「ちょっ! 何言ってるんですか。私はそう言う事を言ってるわけじゃありません!」
シロマが顔を真っ赤にして怒った。
わかってるって。
シロマは照れ屋さんだからな。
「ごめんごめん。わかってるよシロマ。冗談だってば。」
「もう! サクセスさん、意地悪です。」
膨れっ面になっているシロマも可愛い。
最近、感情に素直になってきている気がする。
なんにせよ、こうやってみんなで笑いながら歩くのは悪くないな。
しばらくすると、目の前に幅が広くて、段数が果てしなく多い階段が見えてきた。
「スッゲェな。なんじゃこれ、上が見えないぞ。」
「この階段を上がった先にマーダ神殿はありますわ。」
イーゼはこれを見ても平然としている。
って、当たり前か。
何度も来てるだろうからな。
「ねぇサクセス、アタイと競争しようよ! とっちが先に上に着くか。」
「ほぅ、いいだろう。だけどやるからには本気だ、負けた方は罰ゲームな!」
リーチュンの挑発に俺は乗った。
何を考えてそんな事を言ったかわからないが、相手を間違えているぞ。
「いいわよ。じゃあね、負けた人は勝った人の言う事を一つ聞く!」
「言ったな! もう拒否はできんぞ! なんでもでいいんだな?」
「アタイに二言はないわ!」
オッシャ!
もらったこの勝負!
負けるわけねぇ。
さぁて、何をお願いしようかな……。
ぐへへ……
夢が膨らむぜ……。
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