第14話 知恵比べ
昨晩、俺たちは今後の予定について話し合った。
【作戦会議】
「サクセスさん、明日はどうします?」
「ん? 予定通り、普通に森を抜ければいいんじゃないか?」
「それは少し危険だと思います。今日確認した敵の行軍ルートからは、外れた方がいいと思うのです。」
なるほどな。
俺はやっとシロマの言葉の意味に気づく。
このまま森を突っ切ってマーダ神殿に向かえば、また森の中で大量のモンスターに襲われるかもしれない。
森の中では、隠れられる場所や休める場所は限られている。
つまり、危険性が格段に上がるということだ。
確かにそれは避けたい。
「そうだな……。シロマはどうするのがベストだと思う。」
「そうですね。時間は掛かりますが、やはり迂回した方がよろしいかと思います。」
「迂回か。ルートはわかるのか?」
「いえ、地図を見れば大体はわかるのですが、細かいルートとなると自信はありません。」
シロマはイーゼを見ながら言った。
イーゼなら分かると思ったらしい。
そして当然イーゼはそれに気づいて答えた。
「そうですわね。私もその意見に賛成ですわ。迂回をするならば道は一つです。森の間に流れる川沿いに沿って進む道です。」
「川沿いか。なんでそこだけなんだ?」
「その道は崖があったり、狭い道を通ったり、モンスターが通るには厳しいはずです。ですので、そこならば比較的安全に進めるでしょう。」
「なるほど、じゃあその道を行こう。ちなみに、そこを通るとどのくらい到着は遅れるんだ?」
「そうですわね。速度にもよりますが、半日程度かと。」
半日の遅れ。
普通に考えれば、迷う事はないだろう。
敵が集まっている森を進む危険性を考えれば当然だ。
しかし、何故かイーゼは険しい顔をしている。
「俺はそれでいいと思うんだけど、なんか心配があるのか?」
「はい。私も当然それがベストだと思いますし、それ以外はないかと思います。」
「イーゼさんがそういうならば、私もその案に賛成します。」
シロマもイーゼの話を聞いて、それしかないと思った。
俺も当然それがベストだと思う。
だが……当のイーゼは反対した。
「サクセス様。私はそれ以外しかない道だからこそ、そこは通るべきではないと思っております。」
「え? どういう事だ?」
「敵の指揮官は恐ろしく頭がキレます。更にはサクセス様を最大限に警戒しているはずです。そのような者が、そこしかない道を放置すると思いますか?」
は!?
言われて気づく。
確かにあいつなら、間違いなく罠や足止めの手段を取るだろう。
シロマもその言葉に、目を大きく開いて驚いている。
流石の天才もそこまで頭が回らなかったようだ。
俺は少しだけ安心する。
もう、ここは全てイーゼに任せよう!
「じゃあ、どうすれば良いと思う?」
「そうですわね。わたくしはあえて、敵の行軍ルートを進むべきだと思いますわ。敵もサクセス様にこれ以上数を減らされたくないはずです。間違いなくどこかでルートを変えているはずですわ。」
「だが、もし変えていなかったら?」
「そうなった時は、諦めて退却を優先しましょう。その上で、できる限りマーダ神殿に向かえばいいかと。タラレバの話をしたらキリがありません。」
「確かにイーゼさんの言う通りですね。それでは、私もその案に賛成します。」
「アタイは難しい事はわからないから、任せるわ。」
シロマもリーチュンもイーゼの案に賛成だ。
当然、俺に代案があるはずもなく、俺はみんなの意見に従う。
「わかった。それじゃあ、明日は予定通り森を突っ切る。森の中で野営をしなければならないが、とりあえず見張りをつけて安全を最優先にしよう。」
最後に俺の決定をもって、明日以降の予定は決まった。
そして今日、ヒルダームから出発して丁度五日目。
本来ならばマーダ神殿に到着する日である。
「よし、みんな準備はいいか?」
「はい、魔除けの札もキチンと働いてくれたお陰で大分休めましたわ。」
「アタイも元気いっぱいよ!」
「今日はいつも以上に、周囲を警戒しましょう。」
昨日あれだけ激しい戦闘をしたにもかかわらず、全員のコンディションは万全のようだった。
それから俺たちは、馬車に乗って森の中へ入っていく。
「静かだな……。」
「はい、昨日集まっていたモンスター達も大分先に進んでいるのかもしれません。ですが、この先罠があるかもしれませんので警戒しましょう。」
シロマの顔は珍しく緊張している。
現在、馬車の御者は俺とシロマの2人。
今までのように一人だけだと、付近への警戒が疎かになる可能性があったからだ。
まぁいつも一人と言っても、ゲロゲロだけは俺の横にいるのだが……。
ゲロォ(なんも感じないよ)
当然今日も俺の足元にはゲロゲロがいた。
ゲロゲロもパーティの雰囲気を感じ取っているのか、いつもより周囲を警戒している。
「そうだな。でもあまり緊張し過ぎても体に悪いだろ。警戒を怠るつもりはないが、敵がいないのならば、もう少し肩の力を抜こうか。」
「そうですね。これだけ進んでも何もないという事は、やっぱりイーゼさんの言った通り、迂回した道の方が危険だったかもしれめせん。」
俺たちが馬車を走らせて既に半日が経っていた。
今のところは何も無いどころか、動物一匹見当たらない。
このまま進めば、明日の昼には森を抜けられるだろう。
「サクセスさん、日が落ちて来ました。そろそろ野営の場所を決めた方がいいと思います。」
「もうそんな時間か。といっても隠れられる場所も無いだろうし、適当な場所に聖水を撒いて休もうか。」
あれだけ警戒したにも関わらず、結果として罠も無ければ、モンスターと遭遇する事もなく終わった。
ちょっと拍子抜けである。
だが実は、これには訳があった。
イーゼの予想通り、迂回しようとした川沿いには水系モンスターが集結し、そこには封印系の罠が無数に仕掛けられている。
デスバトラーは、俺達が思う以上に警戒しており、三重にも四重にも罠を仕掛けていた。
「何故だ! 何故現れぬのだ!」
やはりこういうところはシャナクであった。
イーゼ vs シャナク(デスバトラー)
知恵勝負はイーゼの勝ち!
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