第15話 ここであったが百年目

【現在のパーティ】

 サクセス  聖戦士  レベル43 総2175

 リーチュン 武闘家  レベル59 総360

 シロマ   僧侶   レベル59 総360

 イーゼ   魔法使い レベル78 総487

 ゲロゲロ       レベル57 戦580(1160)

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 森の中で一夜過ごした俺達は、朝になると再びマーダ神殿に出発した。

 今日の御者は俺とイーゼである。


「サクセス様、大分飛ばしてきましたが。敵の集団はすでにマーダ神殿に着いているはずです。ここからはどこにモンスターが潜んでいるかわかりませんので、御注意を。」


 いつもは隣でセクハラしかしてこないイーゼが、今日は真面目だった。

 それだけ、危険が身近にあるということでもある。


「あぁ、何かあったら俺が対処する。イーゼは状況を見て、みんなに指示を出してくれ。」


「わかりましたわ。何かあればサクセス様に抱き着けばいいのですね?」


 訂正。

 真面目なフリをしていただけだった……。


「お前……わざとだろ? っていうか、既に抱き着いてるじゃないか。やめろよ、こんな時に。」


 イーゼは俺がいったそばから、首に両手を巻き付けて抱き着いてきた。

 俺は少しだけその感触を味わってから、イーゼを引き離す。


 最近、俺も慣れてしまっているのか、こういう事をされてもあまり動揺しなくなった。

 むしろ、公然とエロイ気分になれるので、喜ばしいとさえ思っている。

 ……が、一応拒否の姿勢はとりますよ?

 

 嫌よ嫌よも好きのうち……とはよく言ったもんだな。

 まぁ俺の場合は、そもそも全く嫌じゃないけどね!

 特にこの俺の胸に当たる柔らかいマシュマロの感触は……。


「嫌ですわ、今おっしゃったじゃありませんか? そこから、変な目線を感じたのですわ。」


「んな、馬鹿な。嘘をつくならもっと上手い嘘を……って、なんだあれ?」


「えっ?」


 自分で言っておいて、俺の言葉にびっくりするイーゼ。

 やっぱり嘘じゃないか。


 しかし実際に俺の目に映るは、色とりどりの小さな山。

 しかもなんか動いている気がする。

 イーゼもそれを見て目を大きく開いた。


「あれは……ドラゴンですわ! サクセス様、いかがしますか? 倒しますか? それとも逃げますか?」


 どうやら山の様に見えたのはドラゴンだったらしい。

 俺は初めてドラゴンを見た。


 ドラゴンと聞くと、何となくだが大きな翼があって、空を飛んでいるイメージを想像するが、こいつらは違う。


 一言でいうと、


  巨大なトカゲ


だった。

 

 ドラゴンは色によって大きさが違う。

 緑色が一番小さく、青、黄、赤、黒と大きくなっていく。

 緑と黒では三倍ほど大きさが違った。


「そうだな、その前に確認したいんだが、なんでこいつらはここにいると思う? 普通、一斉に攻めるならこんな所にはいないはずだ。」


 俺は馬車を停めて、少し離れたところでイーゼに質問をすると、目を閉じて考え始めた。

 イーゼは本気で考える時、毎回こうやって目を閉じる。

 その姿はいつもと違い、なんだか恰好良く、頼もしく感じる。

 俺はそれを見ると、いつものお返しにセクハラをしてみたくもなるが、やめておいた。


    【TPOわきまえるぜ委員会】


の委員長だからな!


「サクセス様、多分ですが何となくわかりました。」


「おぉ! 早いな。それで?」


「はい、まずはドラゴンについてですが、ドラゴンは広範囲のブレスが得意であり、耐久力も高い魔物です。」


「ふむふむ。」


「つまり魔物の中でも最強クラスのモンスターにあたります。一昨日の戦闘を思い出して下さい。答えが見えてきませんか?」


 今回のイーゼは、俺にただ教えるだけでなく、考えさせるようだ。

 まぁ、ドラゴンたちも動く気配はないので、時間があると考えたのだろう。

 でもさ、いい加減気付いてくれないかな?

 そんなの俺にわかるわけ……ん?

 この間の戦い……。

 そうか! わかったぞ!


「弱いモンスターから攻撃を仕掛けて、徐々に強いモンスターを送る。そして消耗したところで……一気に殲滅するってことか!?」


「流石です! その通りです。正解した方にはわたくしからキスを差し上げます!」


 どんなクイズ大会だよ!

 欲しいけど、今はいらんわ!

 そんな事している場合じゃねぇ。


 イーゼは「ん~……」と俺に唇と近づけようとする。


 その唇を見て俺の意思が揺らぐ。

 あの時の事を思い出してしまったのだ。


 少しくらいならいいんじゃない?

 誰かに見られるわけでもないし……。

 それに初めてでも……。


と思った瞬間だった。


 突然、リーチュンが馬車から飛び出して来た。


「何やってのよ! 急に馬車が止まったから何かと思えば! 全くアンタは……」


 いきなりそんな声を出されたら、流石にまずい!


「シーー! リーチュン抑えてくれ。」


 俺は必死にリーチュンを抑えようとした。

 が、それを見て何故か悲しそうな目をするリーチュン。


 そして……


「何よサクセス! アタイにあんなことしておいて……。」


 ちょっと待て。

 それは聞き捨てならぬ。

 むしろあの時襲われたのは俺だ!

 

 って馬鹿か俺は。

 そんな事考えてる場合じゃねぇ。


「今はそんな事言ってる場合じゃ……。」


 グォォォォォン!


 突然鳴り響く、モンスターの遠吠え。

 俺はその鳴き声の大きさに思わず耳を塞いだ。

 どうやらドラゴン達はこちらに気付いてしまったらしい。


「え? 嘘? なんで!?」


 リーチュンもやっとドラゴンの存在に気付いた。


「どうしたんですかリーチュン。やっぱりイーゼさんが何か……。 って嘘……ドラゴンですか!?」


 シロマもドラゴンに気付いて、驚く。


「説明している暇はない! 逃げるにしても、もう無理だ! みんな戦闘態勢に入ってくれ。 シロマ、馬車を少し離れた場所に下げろ! リーチュンとイーゼとゲロゲロは戦う準備だ!」


 俺がそう叫ぶと、ドラゴン達は一斉に起き上がった。

 そして更に、聞き覚えのある声が聞こえてくる。


「まさか、こんなところにあなた達がいるとは……どうしてこうも私は運がないんですかねぇ。」


 その声の主は、困った顔をしたデスバトラーであった。


「お前は! デスバトラー!」


「はい、その通りでございますよ。覚えていて欲しくはありませんでしたね。しかし、どうしてこっちの道を……いくら待っても来ないわけですね。本当にあなた達は私を困らせるのが好きなようです。」


 デスバトラーが何を言っているのかよくわからない。

 しかし、ここであったが百年目!

 今度こそ、逃がさない!


「困っているのか? だったら助けてやるよ。お前をぶった斬ってからな!」


 俺はそう言うと、剣を構えた。


「はぁ……また作戦の練り直しですか。これではマーダ神殿に行けませんね。いいでしょう! そこまでおっしゃるなら相手になりましょう! 私ではなく、このドラゴン達がね! 私は怖いので嫌です!」


「お前がこんのかぁぁい!!」


 俺はデスバトラーのセリフにズッコケそうになった。

 こいつ、強いくせにやけに臆病だな。

 どういう性格してんだよ、このモンスターは……。

 まぁいい、どの道やることは同じだ。

 ここにいるモンスターを、全部ぶっ倒す!


 遂に二度目の邂逅を果たすサクセスとデスバトラー。

 果たして二人の戦いの行方は……。

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