第27話 マーダ神殿
マーダ神殿
そこは、古来より世界の中心として、数多の冒険者達が訪れる場所である。
それでは、何故世界の中心と呼ばれているのか?
それはこの場所が、単純に世界の中央に位置している事、
ーーそして
この世界を創造した女神様が降臨した場所
という伝説が言い伝えられてきたからであった。
しかし、伝説だけならば誰もが信じる訳がない。
だが、ここにはその伝説を裏付ける物が存在した。
ずばり……
女神像である。
毎年、世界各地から屈強な冒険者達がここを訪れ、そして女神像に祈りを捧げる。
その祈りが届くと、その者は新たな職業に転職する事ができたのだ。
とはいうものの、誰でも好きな職業に転職できるわけではなく、現在の職業レベルが20を越えない限りは転職する事はできない。
また、複数の職業レベルが20を超えた者、そして単体の職業で50レベルを超えた者は、上級職という、更に強い職業に転職する事もできる。
祈りが届くというのは、その前提をクリアした者のみが女神から神の言葉を賜ることができる事だった。
冒険者達は女神像に祈りを捧げると、脳内に女神の声が届く。
「貴方が転職できる職業は○○と○○と○○です。また、貴方は一定の力を保有している事から新たに○○と○○の職業にも転職ができます。貴方は……何を望みますか?」
その声は、透き通るような綺麗な女性の声だった。
その声が聞きたくて、無駄に何回も転職している者もいる。
通称 メガオタ
略さず言えば女神オタクだ。
話は逸れてしまったが、その女神像があり、そして転職をさせてくれるという事実から、マーダ神殿が世界の中心であり、聖域でもある事を疑う者は誰一人としていない。
そして、当然そう言った場所であれば、人が多く集まる為、女神像が置かれている神殿を中心に、町は大きく栄えていった。
だがしかし、この場所には王は存在しない。
女神様が降臨した場所に、王と呼ばれる者を置くわけにはいかなかったのである。
ここでは誰もが女神様を敬い
【人は女神様の下に等しく平等である】
を基本理念としていた。
故にここは、商業組合、冒険ギルド、神殿管理委員会等の複数の団体が存在し、決め事においては、その団体のトップが話し合う共和制によって成り立っている。
最後に、今回マーダ神殿が大量モンスターから侵略を受けたにも関わらず、ここまで持ちこたえていたのは二つの理由があった。
一つは、女神様の加護によって、一定の場所までモンスターが入れなかった事。
そして二つ目は、近隣の国から多くの冒険者と兵士が派遣されたからである。
だが女神様の加護とて、強い邪悪な力にいつまでも対抗できるわけも無く、もしもビビアン達が遅れていたら、神殿までもが落とされていただろう。
このタイミングにおける勇者の来訪に町の住民は沸いたが、それもまた、女神のお導きだと信じて疑わない。
果たして女神は、一体勇者に何をもたらすのであろうか……。
それこそまさに、神のみぞ知る。
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