第72話 広間中央の戦い

 俺達は地下の階段を上がると、同じように石造りの通路に出て、その先に扉が見えた。



「その扉を開けると、地下牢獄中央の広間に出る。かなりの数のモンスターがいるだろうから、支援魔法があるならかけておいた方がいい。」


「わかった。イーゼ、この先にモンスターが沢山いるらしい。支援魔法は使えるか?」



 マモルが俺にそう伝えると、今度はそれを直ぐにイーゼに伝える俺。

 常時伝言ゲーム状態ではあるのだが、基本的にそれをするのは重要な事だけだ。

 大抵の事は、マモルの声が聞こえなくても、俺の返答だけでイーゼは理解している。



「はい、それでは攻撃力が上がる魔法を二人にかけますわ【リトルマッスル】」


 

 イーゼが呪文を唱えると、俺とマモルの腕が光った。


 

「おぉ! なんか力がみなぎってくるな! こんな魔法があるならもっと早く使ってくれよ。」


「今までの敵なら、サクセス様に使ってもほとんど意味がありませんでしたので。それに、この魔法の効果は一時的です。中途半端に使うと魔法が切れた時に感覚が変わって逆効果なのです。なので、先ほども殺人マシンにトドメをさす前だけは使わせていただきましたわ。」


 え? いつの間に?

 確かに最後の攻撃の瞬間、少し力が上がってた気がする。

 なるほどな、確かに常にドーピングできるわけじゃないからな。


「そうだったのか。流石イーゼだ。よし! じゃあいくぞ!」


 俺は支援魔法の効果が消える前に扉を開けた。

 そこは闘技場より、二回りほど大きい円形の広間になっており、広間中央から見て、前と左と右の三ヵ所に通路が見える。

 いずれかの通路の先に、マモルとヌーウの亡骸が放置されている牢獄があるはずだ。

 だがその前に問題なのは、やはり目の前にいるモンスターの大群である。



 死霊系やゾンビ系が多いな。

 うげ! 

 じごくのナイトとデュラッハンナイトが複数いるじゃん。



「マモル! どの道だ?」



 俺がマモルに目的の牢獄に繋がる通路を聞くと、マモルは広間中央から右側の通路に剣を向けた。



 右か。

 よし!

 まずは中央の敵を一掃してやる!



「イーゼ! 目的の場所は右だ。左側のモンスターに向けて、氷魔法を頼む。俺は前方にいる魔物を殺る。マモルは少し俺の後ろに下がってくれ、巻き込まれるなよ!」



 俺は、イーゼとマモルに作戦を伝えると、最初から俺の最強魔法を放つことにした。



 【ディバインチャージ】




 俺の剣に眩しい光が溢れると、やがて収束する。



「くらえ! 全員まとめて消え失せろ!」



 今回俺は、剣を縦ではなく、横に向けて薙ぎ払う。

 すると、光の斬撃が縦ではなく横一直線に放たれた。

 以前よりも強くなっているせいか、光の刃の範囲が思ったより広い。



 ヒュン!

 

 ババババババッ! 


 ドーン!



 強敵であるはずの、じごくのナイトやデュラッハン達が、纏めて光の刃に切り裂かれて塵になった。

 そして、その余波は、前面の壁にも大きな刃の跡が残す。


 正直、かなり爽快だ。


 範囲攻撃とは、どうしてこんなにも気持ちが良いものなのか……。

 今の攻撃だけで、50体は塵となって消えたぞ。



「す、すごい……ここまでとは……。勇者より強いんじゃないか?」



 マモルの驚きの声が聞こえる。

 流石のマモルも、このスキルの威力には驚いたようだ。

 

 そしてイーゼも俺に続いて、左側に向けて呪文を唱える。



 【ブリザック】



 ブリザックとは上級氷魔法だ。

 俺の斬撃から逃れた、左側のモンスター達をまとめて凍らせる。

 が……しかし、弱いモンスターはそのまま砕けて塵となったが、まだ一部のモンスターは残っていた。



 流石に、ここのモンスターは強い。

 しかし体の氷は直ぐには解けないため、残ったモンスターも動きが鈍っている。

 そこにマモルは突撃をした。



 マモルは左側に突撃すると、凍って動けないモンスターから攻撃し始める。



 【かえん斬り】

 【いなずま斬り】

 【ブリザック斬り】



 マモルは、モンスターの弱点に合わせて、効率よく魔法剣を放つ。

 モンスターになっていてもスキルは使えるようで、熟練の経験とモンスターのステータスが合わさったマモルは、生前よりも強かった。



 怒涛の連撃により、一掃される左側のモンスター達。



 マモルつええな!



 マモルの無駄のない動きに一瞬目を奪われた俺だが、直ぐに右側の残っている魔物に目を向ける。



 ん? 

 ワイトボーンキングがいるな。


 

 どうやら右側の奥に、強力な攻撃呪文を放ってくるワイトボーンキングが残っていたようだ。

 奴は既にこちらに杖を向け、俺に向かって魔法を放とうとしている。



「させるかよ! イーゼ! 左側に移動しろ!」



 俺がイーゼに命令すると、イーゼはすぐにマモルのいる方に駆け出した。

 そして、俺はワイトボーンキングに向けて、直線にダッシュする。


 ワイトボーンキングの前には、それなりの数のモンスターもいたが、すれ違いざまに斬り刻んで塵に変えた。

 その隙にどうやらワイトボーンキングの魔法が出来上がったようである。

 奴が持っている杖に、巨大な火の玉が出来上がったのが見えた。

 そして奴は、まだ周辺に他の魔物がいるにも関わらず、迷うことなく俺に火の玉を放つ。



 ゴォォォォォ!



 巨大な火の玉は、周囲の魔物を巻き込みながら俺に向かってきた。



「また火の玉か! 何度もくらうか!」



 以前も、ボーンキングに同じことをされた。


 その時は盾で防ぐも、火傷をしてしまったのである。

 だが今回は違う。

 俺は直線に走っていたが、すぐさま右後方にバックステップをしてそれを避けた。



 対象を失った火の玉は、俺がさっきまでいた場所に飛んでいくと、俺達が入ってきた扉に衝突する。



 ズッドーン!



 隠し通路に繋がる扉が破壊された。



 しまった! 

 退路が断たれちまったか!?

 だが、かまうもんか。

 もとより、逃げる気はない!

 全員倒して、堂々と城から出てやる!



 俺は、一瞬だけ破壊された扉に目を向けるも、直ぐにワイトボーンキングに接近する。



「おらよ! くらえ! アンデッドX斬り!」



 俺は、はじゃのつるぎのスキル【邪悪を切り裂く力】を発動しながら、ワイトボーンキングを斜め十字に二度斬りつけた。

 速攻で開発した新スキル。

 といっても、名前を恰好よくつけただけである。


 

「ぐぉ……ば、かな……。」



 そいつはそれだけ言うと、他のモンスターと同じように魔石を残して塵となった。

 どうやら、こいつも話せるくらいに強力なモンスターだったらしい。

 最後に残ったこいつを倒した事で、広間中央の魔物達は全て魔石に変わった。



 すると、俺の体にどんどん力がみなぎってくる。

 かなりの経験値を取得したようで、レベルが大分上がったようだ。


 

「マモル! 敵が集まってくる前にヌーの鏡を取りに行くぞ! 案内してくれ!」



 ここの敵は確かに一掃したが、この城にはまだまだ敵は多そうだ。

 俺は油断することなく、先に急ぐことにした。



「そうだな、牢獄はこの通路を抜けた先だ。ついてこい!」



 そういうと、マモルは俺の前を走って、広間中央右側の通路に向かって駆け出すのであった。



 現在のパーティ


 サクセス 聖戦士(まもの使い) 

 レベル36(総1825)

 イーゼ  魔法使い       

 レベル61(総325)

 マモル  ヘルアーマー(魔法戦士)  

 レベル48(戦680)


※1 マモルは、モンスターなのでステータスは戦闘力になります。

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