第71話 マーダ神殿の危機

 俺達は隠し通路を通り、現在ヒルダーム城の地下にいる。



 殺人マシンを倒した先にある扉を開けると、そこは死臭が漂う、石の壁でできた通路になっていた。

 その通路は魔物が通る為か、道幅が広くなっている。



 だがそこまで長くはなく、10分も進むと石の階段が見えてきた。

 戦闘がなければ5分もあれば着く距離である。



「あの階段を上ると牢獄に出る、気を付けてくれ。そこには結構魔物がいるからな。」


 マモルは、階段を上る前に俺達に警告した。

 俺も油断していた訳ではないが、今の内に詳しい話は聞いておいたほうがいいだろう。


 この通路を通る際中にも、ゴーストと呼ばれる浮遊系のモンスターは数体現れたが、どれも雑魚であった。


 

【バーンゴースト】

 燃えている火の幽霊でイーゼの氷魔法で一瞬で消滅する。


【ゴースト】

 帽子をかぶったお化けの魔物で、俺の剣で一撃で消える。


【怪しげな影】

 人間の目には見えない影のモンスターであるが、マモルには見えており、出現早々にマモルが魔法戦士のスキル【火炎斬り】を使って倒した。



 この通路上で現れたモンスターは、その三種類である。

 ここでマモルがわざわざ警告をしてきたという事は、この階段を上がると、今よりもっと強いモンスターたちが多いという事だ。


 マモルが言うには、牢獄はかなり広いらしい。

 中央の大広間には、いくつか通路があり、そこから各牢獄に繋がっているようだ。

 偽王は、この牢獄で人間を殺し、魔物化させ、より強力なモンスターを作っているらしい。



 そしてその中のいくつかは、モンスター闘技場で客寄せパンダとして使っていたとの事。

 確かに、コロシアム後半で見たモンスターは、到底使役できるとは思えないくらい強かった。


 中でも目を引いたのは

   

    ワイトボーンキング

    じごくのナイト

    デュラッハンナイト

    ヘルガーゴイル


 この四体に関しては、ギャンブルに夢中になっていたシロマでさえ驚いていた。

 討伐パーティの平均レベルは30から50レベルらしい。



 それも一匹だけでだ。



 つまり、このレベルの敵がうじゃうじゃ出てくるとなると、流石の俺も辛いかもしれない。

 俺だけならば、なんとかなるだろうが、イーゼやマモルに危険が及ぶ可能性がある。

 二人を守りながら戦うには、できるだけ狭い場所でなければだめだ。



 しかし、どうやらこの地下はどこも通路が広く、更にところどころに広いエリアを挟むらしく、とても厄介みたいだ。



「マモル、ここに闘技場のモンスターより強い奴はいるか?」



 俺は一応階段を登る前にマモルに確認しておく。

 それがいるといないとでは、難易度がかなり変わる。

 少なくとも、闘技場で一度戦闘を見ているモンスターならば対応は可能だ。



「すまない、詳しくはわからない。俺も他のモンスターと話したりしているわけではないからな。ただ、あの偽王の事だ、一つや二つ隠し玉があってもおかしくはない。どうやらここでモンスターを大量に発生させて、近々マーダ神殿に総攻撃をかけるつもりらしい。」


「マーダ神殿に!? それは本当か?」


「あぁ、俺達モンスターは月に一度広間に集められて戦闘をする。そして、その後に偽王の演説がある。どうやら大魔王が復活するらしい。それに備えて、まずは転職の要であるマーダ神殿を落とすようだ。こことは別のところからも攻めるらしいぞ。」


「それはまずいな、なら、なおさらここの拠点は潰さないといけないな。」



 俺はマモルからの話を聞いて、更に危機感が跳ね上がった。

 俺の様子を見てイーゼも心配そうだ。

 イーゼはマモルの言葉が聞けないから、俺から間接的に説明をすることにした。



「そうですか。遂に大魔王が復活するのですか。確かに今、マーダ神殿を落とされるわけには行きませんね。」



 イーゼも話を聞いて、危機感を持ったようだ。



「よし、まぁ色々分かった事も多いが、やる事は変わらない。俺達はここで、偽王とモンスターを殲滅して、ちびうさとこの国を救うだけだ。行くぞ!」


 俺はそれだけ言うと、階段を上り始めた。



 そして俺達は、遂にヒルダーム城地下の牢獄に入ることとなる。

    

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る