第70話 対決! 殺人マシン

「どうした、マモル? あいつは強いのか?」



 俺は、微動だにしないマモルが気になり聞いた。



「あぁ、あいつは探知範囲で動く者を見境なく攻撃する殺人マシンだ。そして強い……俺一人なら倒せないだろう。」



 どうやら動かなかったのには、理由があったらしい。



「なるほどな。探知範囲と言う事なら、探知範囲外から魔法で攻撃すれば倒せるんじゃないか? イーゼ頼めるか?」


「待て! ダメだ、危険すぎる。」



 それだけ聞いて、俺は安易にイーゼに攻撃魔法を頼むと、即座にマモルが否定した。



「どういうことだ? あいつに魔法は効かないのか?」


「雷魔法なら確かにその手も有効だ……しかし、それは勇者にしか使えない。効かない訳ではないと思うが、他の魔法だとほとんど効果はない。奴の装甲は対魔法装甲になっているからな。それに探知外でも、攻撃を受ければ襲い掛かってくるぞ。逆に魔法使いがターゲットになるからやめておけ。」


「ふむふむ、じゃあやっぱり俺が単独で攻撃するしかないか。よし、マモルはイーゼを守ってくれ。」


「そうだな、君の能力なら奴を倒すのは可能だろう。わかった、だが奴のボウガンにだけは気を付けてくれ、ああ見えて動きが素早く、剣とボウガンを同時に放ってくるからな。」



 遠近同時の連続攻撃か。

 確かにそれは危険だな。



「2回連続攻撃か。わかった、気を付ける。イーゼを頼んだぞ。」



 俺はマモルにそう告げると、奴が反応する前に一気に片付けようと駆け出した。



 殺人マシンは、俺が通路から広間に侵入した瞬間に目が赤く光り、やにわにボウガンを連続で三発放つ。



「おぉっと! ボウガンは一発じゃないのかよ。」



 俺はそれを当たる寸前にギリギリ躱すが、一発だけ頬にかすった。

 俺の素早さからすれば、矢の速度はそこまで早く感じなかったのだが、まさか三発同時で、思わず油断してしまった。



「まずは、その厄介なボウガンを落とさせてもらうぜ!」



 俺は殺人マシンに近づくと、ボウガンを持っている左手を狙う。



「もらった!」



 ガキン!



 はじゃのつるぎを左手目掛けて切り付けると、激しい金属音と共に、殺人マシンの左手が……落ちない。



 金属はかなり硬いみたいで切り落とすには至らなかった。

 だが、俺が攻撃を当てた箇所がバチバチと音を立てて帯電し、腕の周りが焼けこげて動かなくなる。



 どうやら電気回路がショートしたらしい。

 


 とりあえずこれで遠距離攻撃の心配が無くなった。

 後方で待機しているイーゼ達への危険が大分減った事になる。



「サクセス様! 危ない!」



 すると突然、イーゼの叫び声が聞こえた。



 俺は、左腕を壊して安心していたところ、殺人マシンは右手に持つ巨大な剣で、俺の胴を目掛けて横なぎに斬りかかってきていたのである。



 イーゼの声に反応し、咄嗟にジャンプすると、俺の足の下を巨大な剣が通りすぎる。



 あっぶな!

 少し反応が遅れてたらやばかったな。

 イーゼのおかげで助かった。



 俺は、なんとかギリギリ殺人マシンの攻撃を回避すると、空中から殺人マシンの脳天目掛けて、剣を振り落とした!



「お返しだ! メタル斬り!」



 俺は、手に全力の力を込めながら重力に身を任せ、落下しながら剣を振り落とす。

 メタル斬りという技は知らないが、なんとなく格好いいから言ってみた。

 金属を斬ろうとするんだ、メタル斬りでいいだろう。



 ズバッ!



 俺の剣は、殺人マシンの頭頂部から赤く光る目の部分まで食い込んだ。

 一刀両断にはならなかったものの、殺人マシンの赤く光る丸い目が真っ二つに割れる。

 


 ズドン!



 すると、目から光が消え、殺人マシン自体もそのまま崩れ落ちた。



「おっし! イーゼ、マモル、倒したぞ。」


 俺がそう言うと、二人は俺の下に駆け付ける。



「流石サクセス様です!」


「まさかあれほど簡単に、伝説級の殺人マシンを倒すとはな。やはり俺の目に狂いはなかった。」



 二人は俺が殺人マシンを単独で撃破したことに称賛を送る。


 しかし、ここは言わせてもらおう。



「マモル、お前……目無いじゃん。」



 …………。



 マモルは沈黙した。



 マモルは、全身緑のフルプレートの鎧であり、兜の中身は黒く、目はついていない。

 それでどうやって回りを見ているのかわからないが、まぁモンスターの事をいちいち考えても仕方ないだろう。

 どうやら自分がモンスターである事を忘れていたようだ。



「冗談だよ、さぁ先を急ごう。この扉の先が城の地下に繋がっているんだな?」


「あ、あぁ。ここから城の敷地になる。地下牢獄は、死霊系の魔物が多いから気を付けてくれ。」



 俺からまさかのツッコミがあった事にフリーズしたマモルであったが、俺が質問をすると普通に答え始めた。



 どうやら正気に戻ったらしい。



「死霊系か、俺の装備は死霊に特化しているから安心してくれ。まぁ油断は禁物だがな。」


「何かあれば、私が体を張って守りますわ。」



 イーゼがなんか男前なセリフを吐いている。

 でも、女に体張らせて守られるなんて、格好悪すぎるだろ。

 イーゼが体を張るのはセクハラの時だけでいい。



 あれは……嫌いじゃない。



「なんかそれ、逆じゃね? まぁいい、何も無いように二人ともサポートを頼んだぞ。」


 俺がそう言うと二人は頷づき、そして全員無事に城の地下に繋がる扉へ歩き出すのだった。

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