第67話 謎の声

「着いたぞ。ここだ。」



 ボッサンが案内した場所は、町の外れにある橋の下であった。

 そこには、確かに体を横にすれば通れそうな隙間が見える。

 中からは水が流れる音が聞こえる為、多分地下水路となっているのだろう。



「サクセスさん、これなんでしょう?」



 シロマが気づいたのは、入り口近くに供えられている沢山の花と石の山だ。



「あぁ、これな。これはちびうさがここに来る度に石を一個積んで、花を添えているんだ。何の意味があるのかまでは、俺には分からないがな」



 その疑問に答えたのはボッサンだった。



「ちびうさは中に入った事はあるのか?」


「いや、それがよ。何回か隠れて見守っていたんだが、何故か中には一切入らねぇんだ。いつもこの入り口にきては、石と花だけ置いて、少し目を閉じると帰っちまう。なんか入れねぇ理由があるのかと思って俺も試してみたんだが普通に入れたぜ。」


「ボッサンは中に入った事があるのか!? 」

 

「あぁ、途中までだがな。間違いねぇ、ここは城に繋がってる。だが俺は、中途半端に入ってこの道がバレたら困るから、それ以降は入ってねぇ。」



 なるほどな。

 確かにここがバレてしまったら、いざという時に潜入が出来なくなる。



「それでは、今回もここまでにしておきましょうか。場所もわかった事ですし長居は不要です。」



 イーゼも警戒しているのか、長くここにはいたくないようだ。



「わかった。じゃあ一旦戻るか。今日は万全を期す為にも早めに休んでおこう。」



 俺はそういうと、一度宿に戻る。



 その夜、俺は全員を集めて明日の予定を話すと、やはりリーチュンだけは少し寂しそうにしていた。

 俺は話し合いが終わるとリーチュンだけには残ってもらった。



「リーチュンはちょっと残ってほしい。話があるんだ。」


「アタイに?」



 リーチュンは自分だけ呼び止められ、不思議そうな顔をした。



「うん、少しだけいいかな?」


「全然オッケーよ。珍しいわね。どうしたの?」


「ちびうさの事なんだけどな、今回どういう結果になるのか分からないけど、やっぱりセンニンのところじゃなくて、俺たちと一緒に冒険させようと思うんだ。」



 俺がそう言うと、リーチュンの顔は花が咲いたようにパァッとなった。



「サクセス! サクセス大好き!」



 リーチュンはそう言うと俺に抱きついてきた。

 俺の顔はメロンに挟まれて、溶けそうになる。



 二日連続ぱふぱふ!

 今日はメロン味か!



 余韻に浸りたいところだが、今は真面目な話の途中……後ろ髪を引かれる思いでリーチュンを引き離した。



「それでな、明日は、全員危険な目に遭うと思う。だから、リーチュンは、絶対にちびうさを離さないでくれ。明日はここから絶対出ないで欲しい。なんか嫌な予感がするんだ。」



 何故俺がいきなりこんな話をしたかと言うと、昨日から何故か言い知れぬ不安が俺に襲いかかってきている為だ。

 それもちびうさの事を考える度にだ。

 だからこそ、一番懐いているリーチュンにだけは言っておく。

 もしもちびうさが城に来たら絶対何か悪い事が起こる。

 そんな気がするんだ。



「嫌な予感って?」



 リーチュンは、また不思議そうな顔で尋ねてきた。



「いや、ただの勘だよ。リーチュンはそこまで心配しないでいい。俺はリーチュンを信頼してる、ちびうさを任せたぞ。守ってやってくれ。」


「よく分からないけどわかったわ! アタイにドンと任せて! 絶対に宿から出さないようにするから。」


「わかった。じゃあそれだけだ。悪かったな、呼び止めて。」


「え? それだけなの? てっきりアタイと一緒に寝たいって言うのかと思ってたわ。」


「え? いやいや、それはまずいっしょ。」


「別にアタイは構わないよ?」



 ええええ!

 い、い、い、いいの?

 ってダメだろ。

 大事な前日に何を考えてるんだ俺は!



「いや、明日に備えて早く休まないとな。じゃ、じゃあおやすみ!」



 俺はそう言って無理矢理リーチュンを部屋から両手で押し出した。



「ちょ、ちょっとサクセス! もう!」



 リーチュンは不満そうに部屋から押し出される。


 辛い……。

 ごめんな、息子よ。

 でもいいだろ?

 さっきメロン食べただろ?

 今は我慢してくれ。



 そして俺は息子を慰めてから眠る事にした。



 その日の深夜……俺は、どこからともなく聞こえてくる声に目を覚ます。



「起きてくれ……起きてくれ……話がある。おい! 起きろ!」


「なんだよ、うるさいな。誰だよ?」



 俺は目をうっすら開けると、目の前に立っていたのは……。



 ヘルアーマーだった!

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