第49話 ゲイ・バーのある町

現在のパーティ

サクセス  聖戦士(魔物つかい)レベル31(総1575)

リーチュン 武闘家       レベル46(総250)

シロマ   僧侶         レベル46(総250)

イーゼ   魔法使い      レベル46(総250)

ゲロゲロ  フロッグウルフ   レベル45(戦460)

※聖戦士ボーナス 力+25 守+25

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 俺達は、現在アバロンとマーダ神殿の間にある【リザーブ】という町に向かっている。

 正直、旅は順調だ。

 順調すぎると言ってもいい。


 道中、馬車の中で全員の冒険者カードを確認したが、レベルがヤバイことになっていた。

 流石にボスモンスター二体と、それに伴う高レベルモンスターを沢山倒しただけはある。


 ちなみに、旅立つ前にアバロンで魔石を換金したところ、これも凄い金になった。

 大金持ちといっても過言ではない。


 現在所持金は、王の報酬も入れて



 73000ゴールドある。



 思い出してほしい、宿屋が①部屋10ゴールドで泊まれるのだ。

 単純計算で7300日は泊まれる。


 まぁ飯代等をいれれば、もっと金はかかるがそれでも10年は余裕で暮らせるだろう。

 そのため、流石に今回は、全員に一万ゴールドづつ分ける事にした。


 最初は拒否されたが、俺が一日かけて説得をしたところでみんなも納得してくれた。

 俺は、その金の半分を実家の農家に手紙を添えて送る。


 今頃泣きながら喜んでくれているだろう。

 その金があれば四男は16歳になっても冒険者にならなくて済むはずだ。


 ちなみに、シロマとリーチュンも実家に手紙と共に仕送りをしたらしい。

 金額までは聞かなかったが、二人とも親孝行だ。


 シロマはなんでも有名な家のお嬢様であり、リーチュンは有名な道場の娘だそうだ。

 イーゼは、それについては何も語らなかった。


 まぁ話したくない事を無理に聞く趣味は俺にはないから気にしない。

 ただ、送金の話をしたとき、少し寂しそうな顔をしていたのは忘れない。


 さて、色々話すことが多くなったが、要は暇ってことだ。

 最近まで盗賊やら魔王の影やら色々慌ただしかったから、たまにはこういうのもいいだろう。


 それにアバロンの酒場で聞いた噂だと、リザーブの町に、どうやらガンダッタの残党がいるようだ。

 もっと遠くに逃げればいいのにとも思うが、流石にガンダッタはいないだろう。

 でも残党がいるなら、情報は手に入るはずだ。

 できることなら、寄り道せずにガンダッタを捕縛したいものである。



「サクセス! 見えて来たよ! リザーブの町!」


「おぉ! やっと着いたか! やっぱアバロンに比べるとかなり小さいな。テーゼと同じくらいか?」


「そうですね。特に特産品とかもありませんし、中継所といったところでしょうか?」


「あそこの町は何もないですが、毒が有名ですわ。【どくばり】という武器が売っているのですが、よろしければ私はそれを買いたいですわ。」


「へぇ~毒ねぇ。まぁ何かあって毒になっても、シロマがいるから安心だな。ちゃんとスーパーリングは装備しているか?」


「もちろんです。 だってサクセスさんにつけてもらった指輪ですから……。」


 シロマは、嬉しそうに指輪を撫でている。


 シロマが装備している指輪は状態異常無効の効果がある。

 僧侶が状態異常にならなければ、パーティの安全度はかなり高まるだろう。

 ほんとにセンニンには感謝しかない。


 ちなみに、王様からもらった報酬のとりわけについては、厳正な会議の結果こうきまった。



 リーチュンーー豪傑のうでわ

 シロマ  ーースーパーリング

 イーゼ  ーー女神の指輪

 俺    ーー特になし



 俺が何も手にしない事に大分反対されたが、俺はそれを押し切った!

 男の威厳を見せてやったぜ!


 というのは嘘で、俺がみんなにその装飾品をつけたいといったら、顔を赤らめて受け取ってくれたに過ぎない。


 特にイーゼに関しては「これがエンゲージリングですわ!」といって大喜びだった。

 嬉しそうにする顔は悪くなかったが、あまり重いのは勘弁してもらいたい。


 何度も言うが俺は仲間には手を出さない!

 まぁ、正直世界中を回ったら、もう我慢しなくてもいいかなとは思っている。

 その時まで俺の理性が持てばだがな!


 俺達は町に着くと、早速宿屋に向かった。

 正直、アバロンの町を見た後だと、かなりぼろく見える。

 まぁ野営と違って、ベッドで寝れるのだから文句はいうまい。



「さてと、とりあえず魔石は、ほとんどないけど、冒険者ギルドで情報収集に行くかな。」



 時間は既に夜。

 情報収集するにはうってつけである。



「今回は私の番ですわね? そうですわね? シロマさん。」


「……はい。残念ですがそうなっています。」



 どうやら今回ギルドに付き添うのはイーゼらしい。


 これも女子会の決まりなのかな?



「イーゼ、言っとくけどアタイはまだアンタを信用してないからね! 絶対にサクセスに手は出さないでね。」


「あら? 不安なのかしらお嬢さん。私から何かするつもりは、今日のところはないわ。」



 今日のところって……

 すでに何か計画があるらしい。

 うれしいやら、怖いやら……。



「まぁいいわ。じゃあシロマ、アタイ達は馬の世話をしてから宿屋に入るわよ。」


 リーチュンはなんだかすごいプンプンしている。


 まぁ、夜にこの変態エルフと二人というのはそれだけで危険なのだろう。

 だが、もう少し俺を信頼してほしいものだ。

 まぁ俺は自分の息子を信じてないがね!


 俺達は、さっそくギルドに向かい始めると、イーゼが突然立ち止まった。



「サクセス様、見てください。【どくばり】が売ってます。」


「おお、そういえば欲しいって言ってたっけ? 金はパーティから出すよ。」


「いいえ、大丈夫です。貰ったお金がまだかなりありますから。」


「そっか、まぁ足りなくなったらいってくれ。パーティの装備はみんなの金で出すって決めてるからな。」


「ありがとうございます。では早速見に行きましょう。」


 俺達はイーゼが見つけた露店に向かった。

 その露店は鉄製の武器が多く並んでいるが、思ったよりも品質は悪くない。


 そして、その中にイーゼが欲しがっていた



 【どくばり】



も並んでいる。


 イーゼが手にとって、なにやら考えて込んでいた。

 こうやって黙って考えている姿を見ると、本当に、なんつうか美人だし、様になってて、俺ですら目を奪われそうになる。



「サクセス様、このスキルどう思いますか?」



 俺は言われてイーゼが見ていた【どくばり】を手に取った。



【どくばり】 

 攻撃力1 スキル 即死(低確率)



 うーん、ぶっちゃけ俺はいらないと思った。


 なので聞いてみた。



「なぁ、イーゼは、なんでこれが欲しいんだ?」


「実は、スライムメタルという硬い敵がいるのですが、これから行く先で現れる可能性があるのです。その敵には魔法が効かないため、あれば役に立つかと……。ですが、他に使い道はほとんどありませんわ。それに、即死効果も運が大きく影響するため、私では使い切れないかと……。」


「う~ん、じゃあなんで買おうと思ったんだ?」


「いざという時、こういったアイテムがあるかないかで、選択肢が増えるのですわ。」


「なるほどな、色々考えてるんだな。うん、じゃあ買いなよ。お守りとして持っておけばいつか使えるかもしれないしな。」


「そうですわね! わかりました、買います。」


 こうして無事、イーゼは1500ゴールドを支払い【どくばり】を入手した。


 まぁ今は余裕があるし、悩むくらいなら買った方がいいだろ。


 そうこうしている内に、冒険者ギルドが見えて来た。

 やはりどの町も、夜は酒場になっている。

 俺は、イーゼと一緒に中に入った。



「いらっしゃいませぇぇん!」



 中に入ると元気の良い、野太い気持ち悪い声が聞こえた。


 なんだろ? 

 どっかで聞いたことがあるような。


 俺はよく思い出せなかったので、とりあえず酒場で飯を注文することにした。

 その際に、しつこくイーゼに酒を勧められたが、全てブロックする。


 俺は自分の酒癖はよくわかっている。

 同じ過ちは絶対しない。


 すると、俺の席にウェイトレスが飯を置きにきた。



「はぁい、お・ま・ち・ど・う・様」



 その野太い声の主は、気持ち悪い話し方で食事を持ってきた。


 ん? 

 こいつは女なのか? 

 いやこれ、男だろ?


 俺は、そいつの足からゆっくりと視線を上げていき、顔を見た瞬間叫んだ。



「ああああ! てめぇぇぇぇ!」



 そしてそいつも俺に気付いた。


 パツパツの服を着て、ツインテールの髪をしている筋肉だるま。



 そう、そこにいたのは、


 【リリィちゃん】


だった。


 思いの他、簡単に見つかるガンダッタ一味。


 どうやらこいつはバカらしい。

 性別を変えたふりをすれば見つからないと思ったようだ。


 しかし、渡りに船とはこのこと。


 ここでこいつを締め上げれば、簡単にガンダッタに辿り着くかもしれない。

 

 リリィちゃんは俺だと気付くや否や、ガタガタと震え始める。


 一番見つかりたくない相手に見つかったのだ、そりゃ震えるわな。

 俺は、さっそく話をかけた。



「久しぶりだな、リリィちゃん。今日は、会えてとても嬉しいよ。そうだな、ちょっと向こうで二人で話さないか?」



 俺がそう言うと、リリィちゃんはこの世の終わりのような顔をして、その場で崩れ落ちた。

 すると、それを見ていた冒険者達が急に騒ぎ始めた。



「おい! てめぇ、なにうちのリリィちゃんいじめてやがんだ! おろすぞ?」


「そうだそうだ! りりぃちゃんを泣かせるやつなんか出ていけ!」


「ここはなぁ、リリィちゃんに会いたくてみんな来てんだ、抜け駆けは許さねぇぞ?」



 ……は?



 なにこれ、どういうこと?



「み、みんなやめてください。お願いします。私が悪いんです。だから、私の為に争わないで!」



 周りから何故か擁護されているリリィちゃんは、なんかすげぇ納得のいかない言葉を言い放った。


 どうして、この筋肉だるまを巡って俺が争う事に?

 あれ? 

 もしかしてここにいるのはみんな魔物なのか?


 おかしい! 

 何かおかしいぞ。



「そういってもな、俺らは辛い時、みんなリリィちゃんに優しい言葉をかけてもらって、何とか頑張ることができたんだ。リリィちゃんがそんな顔をしている今こそ、借りを返す時だぜ。」



 なんか取り巻きの代表っぽい男が、リリィちゃんに熱い視線を送りながら熱く語ってるわ。


 つか、リリィちゃん脱獄してそんなに間がないはずでは?


 いや、そこにツッコムのはよそう。

 きっと何か急展開があったのだろう。



「わかった。そこまでいうなら、俺はリリィちゃんが嫌がるなら聞かない。どうなんだ? 話すのか? 話さないのか?」



 俺は若干、威圧を込めていった。


 なんで俺が引き下がらないといけないんだ。

 更生した風に装っても俺は騙されないぞ。

 つか、こいつらガンダッタ一味じゃねぇのか?

 顔覚えてないからわからないけど……。



「おい、てめぇ! なんだその口の聞き……」


「もうやめてください! 私の問題なんです。みんなの気持ちは嬉しいけど、これは避けて通れない道なの……だからわかって下さい。」



 そんなヒロインみたいなセリフ吐いても騙されないぞ。

 まずは声帯だけでも手術してから喋るんだな。


 こうして、俺はリリィちゃんと二人で外で話すことになった。

 何人かついてきた奴らがいたが、それは、イーゼが黙らせた。



「色々聞きたいことが増えちまったけど、単刀直入に聞く。ガンダッタはどこだ?」


「申し訳ございません。それは、本当にわかりません。嘘だと思うならば、また拷問にかけてもかまいません。私はあの時、あなたを無謀にも傷つけてしまった時、男を失いました。そして、その後仲間に助けられて外に逃げたのですが、正直生きるのが怖くて……でもそれを救ってくれたのがこの店です。それなので、私が使えないとわかったガンダッタは、すぐに切り捨てました。なので、本当にわかりません。ただ、他の大陸に行くとは言ってましたので、この大陸にはもういないと思います。」


「そうか、まぁ俺は、お前にはもう十分やり返したし、これ以上はやる気はない。それに、礼は言わないが、お前たちのお蔭で大切なものにも気づけたしな。わかった、もうお前を見ても、俺からは何もしない。だが、もしも俺や仲間に少しでも危害を加えようとしたときは……お前の大切な者すべてに同じ事をすると思え。」



 俺は念のため、釘だけは刺しておいた。



「わ、わかりました。肝に銘じておきます。私もあなたに償う為に、何かお手伝いできることがあれば協力をします。」


「そうか、なら最後に一つ教えてくれ。ワイフマンはどうなった?」


「ワイフマンは……自由になった瞬間に自害しましたわ……。」


「……そうか、ならもう聞くことはない。お前が自分の過ちに気付いて、誰かの役に立っているのであれば、俺の恨みはもうない。頑張れよ。」



 俺はそういうと、待っていたイーゼを連れてギルドから立ち去った。


 後ろから野太い声で泣く声も聞こえてくる。

 まぁ、なんにせよ変わったなら、これ以上恨みはない。


 でも、もうここの酒場に来るのはよそう。

 ゲイバーに興味はないからな。


 俺は一応、ガンダッタについての情報を得た事から、食事もほとんど手につけることなく、宿屋に戻るのだった。

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