第33話 こ、混浴……だと!?
夕飯を食べた後、今日は、それぞれが自由に休む事に決めた。
宿屋の風呂は男湯と女湯が時間で分かれているらしい。
一応VIP専用の家族風呂もあるみたいだが、流石にそんな贅沢はできない。
それと他の宿屋には混浴というところがあり、そこでは肌着を着て入るようだ。
スケスケの肌着なら、むしろエロさアップなので、次は自分で宿屋を探そうと思う。
チっチっチっ……。
時計の針が、静かな部屋に鳴り響くと、時間が刻一刻と過ぎていく。
俺はソワソワして居ても立っても居られずに、とりあえず腹筋や腕立て等の筋トレをして時間を潰している。
何かしてないと頭がおかしくなりそうだった。
もはや、俺のマグナムは期待し過ぎても暴発寸前である。
待ってろ、息子。
今お前を楽にしてやるからな!
俺は優しく息子を撫でた。
はうっ!!
ダメだ! 我慢しなさい!
息子を一撫でしただけで、危うく俺は引き金を引きそうになった。
ポンプ式のショットガンを。
コンコン……。
すると誰かが俺の扉をノックする。
こんな時間に一体だれだ?
「はーい。なんでしょうか?」
「夜分に申し訳ございません。男性風呂の準備ができましたのでお呼びに参りました。」
どうやらノックしたのは宿屋の女将であったらしい。
んじゃ行くかな、体を清めに。
「はぁい、今行きます。」
俺は、風呂の準備して扉を開けると、女将に案内されて風呂場に向かった。
「こちらです。今夜は、この時間は誰もきませんのでごゆっくりお楽しみください。鍵は内側からかけられますのでお忘れのないように。うふふ。」
お楽しみください? なんか言い方がおかしいな。
まぁいい、気にしても仕方ないだろう。
ガチャっ。
俺は扉を開けると中から鍵をかけた。
脱衣所には当然誰もいない。
一瞬イーゼの罠を疑ったが杞憂のようだ。
ガラガラ……。
浴場の引き戸を開けると、中には人が二人くらいしか入れない浴槽がある。
「思ったより小さいな……。まぁ足は伸ばせそうだし、悪くはないな。」
この時、俺は気づかなかった。
実はここは男湯ではない。
案内されたのは、VIP専用の家族風呂だった。
俺は掛け湯をした後、足からゆっくりと湯船に浸かる。
「ふぅ~、あったまるなぁ。疲れが取れる~。今日は念入りに洗わないとな! 身体を清めるのは紳士の嗜みだ! まだ見ぬ初めての人に失礼のないようにせねば!」
俺がそう言って体を洗おうと風呂あがろうとした時――ガチャ……。
誰かが鍵を開けた音がする。
「あれ? 誰かきたな。なんだよ、他にも男性客が来るじゃないか。扉は女将さんが開けたのか? じゃあ、さっさと体を洗って出るとするか。」
シュルシュルシュル……。
ん? あれ? 今の音は?
服の帯を解くような音が聞こえたが……きっと空耳だろう。
とりあえず早めに洗……。
ガラガラガラ……。
俺が浴槽から立ち上がった瞬間、引き戸が開かれる。
そして俺は目を疑った。
なぜなら、入ってきたのは、イーゼだったからである。
実は、これはこの宿屋にきてからイーゼが入念に準備していた罠だった。
宿屋の女将に依頼して、風呂を貸し切っていたのだ。
つまり女将もグル。
全ては俺をはめるため。
いや、俺にハメられるため?
「おま……! なんで? ここは、男湯だぞ。」
「いえ、私はサクセス様が間違ってVIPの方の家族風呂に入ってしまったとお伺いしたものですから、心配になって見に来ただけです。でも安心して下さい、女将には話をつけてありますので。」
イーゼの説明がおかしい。
なんか矛盾しているぞ。
でもそれが何かわからない。
「いや、そういう事じゃないっぺ! だだだ、ダメだっぺよ!」
俺はパニックになった。
だがしかし、唯一の救いはイーゼが裸ではない事。
ギリギリ、俺の息子は……おっきしてた!
どうやら既に限界点を突破していたらしい。
「まぁまぁ、せっかくですからお背中くらい流させて下さいませ。」
そう言うと、イーゼは俺の背後を取る。
それはまぁ、素早い動きだった。
だがいいのか?
背中だけならええのんか?
ダメだ、気が狂いそうだ。
つつつ……。
イーゼの細い指が、俺の背中をゆっくりと艶かしく摩る。
ゾクゾク……。
あ、あう……。
「素敵な背中……逞しいですわぁ……。」
俺の首筋にイーゼの艶めかしい息が……。
ダメだ、童貞の俺には刺激が強すぎる。
極度の緊張に、俺は金縛りにあったように固まる。
そう、今の俺は正に陸に打ち上げられたマグロだ。
これから俺は捌かれるのかもしれない。
とドキドキするも、特に変な事は起こらず、丁寧に背中と頭を現れただけだった。
っほ……。
それによって、少しばかり俺の緊張は解れる。
まぁこのくらいならば、来たる決戦に向けて予行練習になるだろう。
俺が何もしなければ問題ない!
問題ないはずだ!
俺は自分にそう言い聞かせる。
すると……イーゼが突然攻勢に出た。
「前の方も洗ってもよろしいですか?」
「ま、前はダメだべ!! それはあかんっちゃ!」
「そんなに恥ずかしがらなくても……まぁ良いですわ。それでは私も身体を清めさせてもらいますわ。」
そう言うとイーゼは、恥じらう事なくスケスケの肌着を脱ぎ始めた!
「ダメだっぺ! ダメだっぺ! オラもう上がるだよ!!」
「いけませんわ。ちゃんと洗ったほうがいいですわ。それなら私が洗いますわよ?」
「わかったっちゃ! 自分でやるっぺよ!」
俺は必死にイーゼを見ないようにそう言った。
見てしまったら多分俺とてただではすまない。
既に息子は暴走寸前だ!
耐えろ! 耐えるんだ俺!
俺は、急いで身体をゴシゴシする。
そして隣では、イーゼが一糸纏わぬ姿で身体を洗っている。
不思議な光景だ。
イーゼは絶妙な感覚でグイグイこない。
それがまたなんとも……。
俺は急いで体を洗い終えると、直ぐにその場を離脱しようとした。
「待ってください! お願いです……。」
立ち上がる俺の後ろからイーゼの必死な声が響く。
そして俺は、振り返った。
振り返ってしまったのだ。
わざとじゃない!
反射的にだ!
するとそこには、男の子がついていない、女性らしい体の女神がいた。
初めて見る女の子……。
俺は鼻血が溢れて……ない?
鼻血が出てないぞ。
いや、むしろなんだこの気持ちは。
まるで神聖な何かを拝むような、そんな清らかな気持ちになっていくのがわかる。
その姿は美し過ぎた。
色白の透き通る肌、完成されたスタイル。
まさにそれは芸術品と言っても過言ではない。
だが紙一重なのも間違いない。
そう、紙一重なのだ。
きっかけさえあれば間違いなく制御不能モードに移行する自信がある。
「どうですか? ちゃんと女性になってますか? それだけ確認して欲しかったのです。」
「美しすぎる……。」
俺が言えた言葉はそれだけだった。
そのまま時が止まったかのように立ち尽くす。
すると目の前の女神はなんと肌着を再度着始めた。
「ありがとうございます。服を着ますのでこのまま一緒に入りませんか?」
ゴクッ……。
それは悪魔の誘惑だった。
静まったとはいえ、いつ爆発するかわからない。
だが、俺はつい流れで言ってしまう。
「あぁ……。」
そして俺はイーゼより先に湯舟に入った。
「ちょっと狭いですね。上、良いですか?」
上? 上ってどう言う事だ?
するとイーゼは俺の息子の上に、その柔らかな桃を置いて湯舟に侵入した。
い、いかーーん!
息子が目覚めた!
これ以上はダメだ!
俺は……仲間には絶対手は出さない!
出しちゃダメなんだ!
そう強く思い込もうとすればするほど、どこからともなく悪魔の囁きが聞こえてくる。
もう良いじゃないか。
お店なんかよりこの女神に身を任せちゃえよ。
無理すんなよ、俺。
よくやったよ、お前はよくやった。
もう我慢しなくて良いんだぞ?
ほら、据え膳食わぬは男の恥っていうだろ?
すると今度は天使が現れて俺を叱咤し始める。
ダメだ! 諦めるな!
この後お前は男になるんだろ?
おっ始めたら、もう仲間じゃいられないぞ!
リーチュンが泣くぞ!
シロマが悲しむぞ!
今すぐ風呂から出るんだ!
俺の脳内では、天使と悪魔による熱いバトルが繰り広げられている。
現時点はギリギリ天使が優勢だ。
だがしかし……。
「あったかいですね……。サクセス様。よろしければ、私の胸もちゃんと女性になってるか確認してください。」
そう言うと俺の上に座ったイーゼは、俺の両手を自らのマシュマロへと誘った。
モーニュ モーニュ モニュ 女の子♪
何故かそんな不思議な歌が聞こえてきた気がした……。
もう……無理だぁぁぁぁ!
うおぉぉぉ!
俺はその柔らかさに完全に暴走モードのスイッチが入る。
ガオぉぉぉん!
息子が雄叫びを上げて完全に覚醒した!
もう誰にも止められない!
「あん……凄い固いですわぁ。」
プチッ!
理性の尾が今まさに完全に切れた。
「もう我慢ならぁぁん!!」
俺がそう叫んだ瞬間だった。
「サクセス! 大丈夫!?」
リーチュンの声が響く!
俺はその声で状態異常【魅了】から強制解除された。
まずい! この体制は言い逃れ出来ねぇ!
焦った俺は、イーゼを払い除けて立ち上がると、すぐに湯船から出た。
「ちっ! 後少しでしたのに!」
後ろからイーゼの舌打ちと悔しそうな声が聞こえたが、今はそれどころじゃない。
俺は必死に進撃の巨チンを手で覆い隠した。
ガラガラガラ……。
扉が開くとゲロゲロを含めた全員が入ってくる。
間に合った! なんとか隠せた。
しかし、この場面はもう手遅れなのでは?
「イーゼ! 女将が全部吐いたわ! あんたの悪事もこれまでよ!!」
リーチュンは、俺を見もせずにイーゼに向かって歩いていく。
だがイーゼは未だに平然としていた。
「あら、何のことかしら? 私は間違えて入ってしまったサクセス様を呼びにきただけですわ。やましい事なんてなにもありませんわよ?」
イーゼは白々しい言い訳をする。
だがそれをシロマが追及した。
「だったら、なんで湯船につかってるのですか?」
しかし、それでもイーゼは動じない。
「せっかくだから入っただけですわ。それにサクセス様には何もしてませんから。ね、サクセス様。」
こ、ここで俺に振るとか……鬼か!
「ほんと!? サクセス! 本当に何もなかったの!?」
俺は、今まさに断罪場に立たされている。
このまま行けば、下手したら息子が死刑になるかもしれない。
「な、何も無かったっぺ」
その言葉にシロマとリーチュンが俺の目をじーーっと覗き込む。
俺の全身から汗が吹き出してきた。
せっかくサッパリしたのに台無しだ。
だが神はいた! それは女神だった。
「わかったわ、アタイはサクセスを信じるわ。」
リーチュンがそう言うと、シロマも渋々納得する。
「そうですね、確かに何かあった雰囲気ではありませんね、ただ……サクセスさん! 今回だけですよ!!」
「は、はひーー!」
シロマの声に見苦しく返事をする俺。 息子も完全に縮こまった。
「それとイーゼさん。これから話があります。じっくり今後の事について話し合いましょうか?」
シロマの目が怖い。
だがイーゼはそれでも余裕そうである。
「いいですわ、私は何もやましい事なんてありませんしね。それでは、もう少し湯に浸かってから上がりますわ。このままじゃ風邪をひいてしまいます。サクセス様もね。」
「サクセスはダメ!」
リーチュンが叫ぶ。
リーチュンには、俺が引き続きイーゼとお風呂に浸かると聞こえたようだ。
イーゼとしては、裸の俺がいつまでもこのまま立っていれば風邪を引くと言いたかったのだろうが、
……なので、ちゃんと勘違いは解いておく。
「俺はすぐ着替えて出るから、みんなすまないが出ていってくれ。恥ずかしくて服が着れないだろ。このままじゃ風邪を引いてしまうよ。」
俺がそう言うと、リーチュンとシロマはやっと俺の姿に気づいた。
そう、全裸だ。
「ご、ごめん。アタイ戻るね!」 するとリーチュンは、顔を赤くして出て行く。
シロマは両手で顔を隠しながら出て行く。
でも俺は見ていたぞ、指の隙間から俺の息子を見ていたのをな!
こうして俺は、無事にこの人生最大の危機というかチャンスというか、そんな感じなイベントを乗り切るのだった。
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