第32話 豚と女王
俺は、無事童貞の希望の店
【ぱふぱふ屋】
を見つけることができた。
狂おしい程に夜が待ち遠しくなりつつも、必要な物を買い揃える事にする。
まずは、この町の地図とペン。
それから、新しいパンツに、綺麗な布の服、そして……高級な石鹸だな。
既に頭の中にダンガの事は消え失せていた。
せっかく情報屋に会えたのだから、本来であればそこで情報を入手するべきであっただろう。
しかし、今はそんな事はどうでもいい!
俺の頭の中は【ぱふぱふ】で一杯だ。
他の事を考える余地などない!
それはそうと、なんか周りが騒がしいな。
ふと気になって耳を傾けると、それは聞こえてきた。
「おい、見たか? さっきの?」
「あぁ、すげぇ美人ばかりだったな。しかも男はいねえぜ。」
「どうする? 声かけるか?」
「やめとけやめとけ、さっき一人の勇敢な若者が、チャイナ服の美女にボコられて踏みつけられてただろ。」
「あぁ、あれな。でもよ。踏まれてた奴……なんかいい顔してたぜ? 俺も踏まれてみてぇ。」
嫌な予感がするな。
チャイナ服って……いや、まぁこれだけ人が多いんだ、気のせいだろ。
そんなことより今は、俺の買い物だ。
俺はとりあえず地図を買うと、今回教えてもらった場所を記載し、絶対間違えないように準備する。
夜は暗くて街の雰囲気も変わりそうだからだ。
万全の準備で臨むぜ。
そして、丁度服屋で服とステテコパンツを買うと、何やら外から聴き慣れた声が聞こえてきた。
「ねぇお兄さぁぁん……もっと安くならないかしら?」
「は、はひ! 1ゴールドでいいっす! でもできたら、ぼくちんを、ふ、踏んでください!」
「なにあんた……わたくしに踏まれたいのかしら? この豚畜生め!」
「はひ~、どうか……どうかこの豚を踏んでください。」
「そうね、安くしてくれたからお礼に踏んであげるわ! あじわいなさぁ~い。」
「ぶひーーー!」
うん……この声はイーゼに違いない。
あいつは何やってんだよ……。
こんな街中で女王様プレイとかうらやま……いかんいかん!
俺だって今日こそ!
「おーい、何やってんだお前ら。」
「あ! サクセス様! やはり私たちは運命の系で……」
「ちょっとどきなさいよ変態。それより見て見て! パジャマ買っちゃった! 可愛い? ねぇ可愛い?」
イーゼを押しのけてパジャマを見せるリーチュン。
でも、パジャマだけ見せられてもなぁ……。
しかし、今の俺は上機嫌。
いくらでも褒めてやらぁ!
「おぉ! 良い感じだな。後で着てるとこ見せてくれ! きっと似合うぞ!」
「やったー! オッケー!! ちゃんと見てね!」
嬉しそうにパジャマを抱きしめるリーチュン。
すると今度はシロマが隣に来た。
「サクセスさん、私も服を買いました。イーゼさんのおかげで大分お安く買えましたよ。」
シロマは首に白いモフモフがついた、紫色のローブを羽織っている。
それが新しい防具か。
「おお、似合ってるじゃないか。どれどれ、ステータスは……すっご!! なんだこれ。」
【魔法の法衣】防御力42 スキル 全属性ダメージ20%減少 知力+10 レアリティ98
「ちょ! これ強すぎないか? 高かったろ? お金は大丈夫か?」
予想以上に強い装備だったので、俺は驚いた。
そして、金が心配になる。
防具の値段とかわからないけど、なんとなく10000ゴールドは最低でもしそうだ。
「それがイーゼさんの知り合いらしくて1500ゴールドにまけてもらいました。えへへ。」
シロマが嬉しそうに笑ってる。
その可憐な笑顔は、一時的に俺のリビドーを抑制した。
「そうか、ほんとによく似合ってるぞ。これで防御も安心だな!」
「はい!」
本当にいい笑顔だ。
シロマの笑顔は癒される。
一瞬だけ猛る性欲が静まったぜ。
「サクセス様、私の服はどうですか?」
つられてイーゼも服を見せてくる。
がしかし、違いがいまいちわからない。
元々魔術師っぽいローブだったからか、あまり違いが……。
「ちょっと見せてくれ。」
「はい、好きなだけ見て下さい。なんなら、服の下も新調してますのでそちらも……。」
相変わらず変態エルフである。
そりゃ見たいけど、人前で何をやらせようとしてんだ。
とりあえず、俺は黙ってイーゼの服を掴んで、能力を確認する。
【大魔導ローブ】 防御53 スキル 魔封じ無効 知力+20 レアリティ53
う、うそだろ!?
なんじゃこりゃーーー!
どう考えても神装備じゃねぇか!
「おま……これ……どこで盗んだんだ? 今なら俺が一緒に返しに行ってやる。吐いちまえよ。」
「いやですわ、サクセス様。このローブは成金の豚……じゃなくておじ様が1000ゴールドで譲って下さったのですよ。なんでも、どうしても私にこの服を着て頭を踏んで欲しいとかで。お陰でお金が余りまして、みんなの下着や肌着を新調できましたわ。」
……もう何も言うまい。
なるほどな、そこで這いつくばってる豚みたいな奴を大量にしつけてきたってわけか。
やはり通りで聞こえてきた噂はこいつらに間違いなかったか。
おめでとうアバロン。女王様の誕生だ。
「ところでサクセスさんは、何かいい情報はありましたか?」
「おお! そりゃ……! あ、ごめん。嘘。無かったわ。すまない。」
あっぶねーー!
思わず口が滑りそうになったわ。
そういえばガンダッダの情報集めって名目で町歩いてたんだっけ……。
完全に忘れてたわ。
「まぁそうですよね。そんなに簡単に見つかるわけないですし、逆に簡単に手に入った情報であればガセでしょう。情報屋って名乗っておいて、金だけ取る詐欺師が増えてるらしいですからね。」
ギクっ!
え? じゃあまさか……。
いや、師匠に限ってそれはない!
大丈夫だ! 信じろ俺の運を!
「そうですわね、たしかにサクセス様は人がよろしいので騙されてしまう可能性がありましたね。次からは私が必ず付き添いますわ。」
「アンタはダメ! むしろアンタが騙しそうだわ! アタイが変な奴をボコってやるわ!」
「あらあら、あなたみたいな単細胞じゃ、もっと騙されますわ。それに私はサクセス様を騙せない呪いがあるので無理ですわね。」
おっとぉ!
こんな街中で、言い争われたらかなわないぞ!
つか、さっきから目立ち過ぎだ!
俺への視線が痛すぎる。
「待て待て! 今度からはみんな一緒だ。それでいいだろ。喧嘩はやめてくれ」
「だって、イーゼが……。」
「サクセス様がそう言うならやめますわ。」
とりあえず、みんな目的の物も買えた事だし宿に帰る事にするか。
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