第15話 隠しダンジョン

 翌朝、俺たちは再び森に向かった。

 ちなみに、町を出る前に色々買い物をしたので、昨日より所持金が150ゴールド減っている。

 だがお蔭で食料もアイテムも潤沢だ。

 後は、【森の洞窟】を目指すだけ。 


 この洞窟に入るには、エルフ語で呪文を唱えなければ入り口は開かないらしい。 

 そこは、エルフ族しか知らない


 【隠しダンジョン】


だそうだ。


 俺は、生まれて初めてダンジョンに潜る事にさっきからワクワクが止まらないでいる。 


 早く洞窟に着かないかなぁ。 


 っと、そんなわけで俺達は、どんどん森の中を進んで行った。


 洞窟の目印は大きな岩だ。 

 そこで、エルフ語で「開けゴマ」と唱えることで岩が割れて中に入れるらしい。 

 魔法の玉はエルフの秘術で作られた玉で、こういった場所に隠されているんだってさ。 


 俺達はそんな話をしながらも、見つけたモンスターを片っ端から倒していく。 

 魔石と経験値稼ぎだ。 


 ゆっくり近づくと逃げられるので、イーゲによる遠距離魔法や、俺とリーチュンが素早く接近して倒す。 

 こうして俺たちは、順調にレベルを上げつつ洞窟を目指した。 


 出発して四日後、俺達はやっと目的の岩場にたどり着く。



「着きましたサクセス様。それでは私が、そうあなたの私が! この大きな岩をどかせて見せましょう!」 


 

 森の中にある一際大きな岩の前で、イーゲは、俺にアピールしながらもよくわからない言語を唱えはじめた。


 すると…… 


 バキバキバキッ! 


 ゴゴゴゴゴ! 


 岩の中央に亀裂が入ると左右に動き出し、丁度人が一人入れるくらいの隙間が生まれた。 



「おぉ!! 流石だなイーゲ!」 


「ありがたき幸せ!」 


 俺の言葉に嬉しそうにするイーゲ。 


 こいつも黙っていれば絶世の美女にしか見えないんだがなぁ……。 

 しかし男だ……。 

 それが非常に残念である。 



「よし、じゃあ松明をつけるぞ。」 



 俺は、予め用意しておいた松明に火をつけた。 

 洞窟の中は暗いため、これがないと何も見えない。

 そこで俺は、ふと疑問が浮かんだので聞いてみた。 



「そういえば、光の魔法とかで辺りを照らしたりできないのかな?」


「光と闇の魔法は、普通の魔法使いや僧侶は使えませぬ。レンジャーは明かりを照らすスキルがあるようですが、それも厳密にいうと魔法ではないのです。光と闇の魔法は職業ではなく、生まれ持った才能によるものだと文献には載っております。」 


 俺の質問にすらすらと答えるイーゲ。 

 流石125歳。 

 歩く魔法辞典。 


 イーゲは人よりも長く生きているため、知識が豊富のようだ。 

 本人曰く、僧侶と弓使いの職業もやっていた事があるらしい。 

 それならマーダ神殿に行っているはずだから、わざわざ魔法の玉はいらないだろうと聞くと、キマイラの翼の登録は一人ニ箇所だけだそうだ。 

 昔気になった男の為に、ある場所を登録したせいで上書きされて使えないとの事。 


 ちなみに振られたようだが、これ以上は深く追及しない。 

 男同士のラブストーリー等聞きたくはないからな。 



「んで、灯りを照らす魔法は何ていう魔法なんだ?」 


「レオミールですね。それを使うと光の玉が浮かんで、その周囲を照らすようです。光の魔法はかなりレアな為、あまり知られていませんが、これは有名な魔法なので知っております。」 



 イーゲをもってしても、そこまで光魔法の情報はないらしい。 

 まぁ戦士の俺が使えるはずはないが、なんとく俺はノリでその魔法名を口ずさんだ。 


 クールキャラはどうした? 



「そうか、レオミールねぇ…光れ! レオミール! なんちゃってな。」 



 すると……突然地面から光る玉がふわふわ浮かび上がり、辺りを照らしはじめた。



「うそ……だろ? え? 俺? 今の俺がやったの?」 



 絶対出ないと思って冗談で言ったのに、発動してしまいビックリする俺。



「すごーーい! アタイも初めてみたわ! きれーー!」 



 リーチュンは、純粋に綺麗な光景に目を奪われながらも喜んでいる。

 でも、俺が使えた事を不思議に思わないのか? 


 だがやはり他の二人は違った。


 シロマは当然この現象に困惑し、イーゲは唖然として言葉を失う。



「どういう……ことでしょうか?」 



 シロマが聞いて来るが、俺にわかるはずもない。 



「よくわかんないけどできちゃったよ……あ、冒険者カード見てみるよ。」 



 俺はすぐさま冒険者カードを確認するが……何も変わっていない。 


 まぁわからない事を考えるのはよそう。 

 とりあえず洞窟を出たら、イーゲに聞いて一通り呪文を唱えてみるとするか。


 もしかしたら、俺は魔法の才能があるかもしれないからな。



「よし! これで松明はいらなくなった。手が自由に動くから戦闘しやすくなったぜ!」 



 松明を持たないでいいというのは、洞窟探検において、大きなアドバンテージである。 

 火が消えないように注意する必要もない。 


 色々と楽になった俺は、そのまま意気揚々と洞窟を進んでいくのであった。

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