第14話 テーゼの町

 初めて訪れる町……テーゼ。

 まぁなんというか、よく言えば素朴で落ち着いた町、悪く言えば寂れた田舎町。 

 というか、これはもはや町ではなく村だな。 


 ゲロゲロを助けてから二日でこの町に到着した。 

 旅の道中もゲロゲロは相変わらず可愛い。 

 常に俺のそばから離れる事なく甘えてくるので、リーチュンも近くにきて一緒に可愛がった。 

 二人合わさると、更にかわいい。 


 だがしかし、一人不機嫌な奴もいた。 

 イーゲだ。 

 ゲロゲロは、イーゲが近づくと本気で吠えて威嚇するのである。 

 どうやら魔物には人の本質が見抜けるみたいだ。

 お陰で俺は、イーゲからちょっかいを出されなくなって万々歳。


 ゲロゲロ最高! 


 ちなみにゲロゲロのステータスは、俺の冒険者カードに記載されていた。


 ゲロゲロ フロッグウルフ(幼生体) レベル2

 攻撃  15 

 守り  6 

 素早さ 9 

 特技 かみつき ひっかき


 モンスターのステータスは冒険者と違うみたいだ。


 そして当然、まだ弱い。   

 俺が守ってやらねば! 


 そんなこんなで俺たちは、まずはギルドに行って魔石の交換と馬車の延長を申請する。 

 冒険者ギルドは、アリエヘンに比べると小さな建物であり、カウンターには髭面のおっさんが立っていた。 

 どうやらあれが受付の人みたいだ。 


 今回俺たちが手に入れた魔石は、全部で280ゴールド。 

 元々の所持金と合わせると310ゴールドである。 

 更にそこから、馬車を2週間延長するために100ゴールドを支払うと残りは210ゴールド。


 

「みんな聞いてくれ。とりあえず今回の換金額をみんなで分けたいと思う。色々差し引いて一人45ゴールドくらいだ。」 



 俺は後々喧嘩になるのが嫌だったので、手にしたお金は、みんなに分配したいと思う。 

 金と女と酒は、必ず不和が生じる原因だ。

 なぁなぁにしてはいけない……のだが、誰も受け取ろうとしてくれない。



「サクセスさん。パーティのお金は、リーダーが預かるのが基本です。それに強い人が持っていた方が安心です。」 



 シロマはそう言うと受け取りを拒否する。 

 だがシロマだけではない、他の二人も同じ意見らしい。 


 だが俺は、面倒な金の計算なんかしたくないし、落としたり、どこかに忘れたりするのが怖い。 

 できれば誰かに預かって管理して欲しいのだが。  

 困ったな。


 まぁ、ひとまずお金の事は置いておき、俺たちは、一度宿屋に行くことにした。 


 すると、そこでまたいつもの二人が揉め始める……。 



「サクセス様、部屋割りは、男女で分けるのが普通です。なので、さぁ一緒にイキましょう!」 


 イーゲが俺の手を引っ張って部屋に連れ込もうとすると、今度は、リーチュンが割って入る。 



「ダメ! 人間とエルフは習慣が違うんだから、エルフと人間で別れた方がいい!」 



 どうやら部屋割りでもめているようだ。


 しかしいいのかい? お嬢さん。 

 そうすると俺は、年頃の女性2人と寝ることになるんだぜ? 

 もちろん俺は構わない。あわよくば……。 


 そんな事を妄想していると、リーチュンが詰め寄ってきた。



「サクセスもそうよね! こんな変態エルフと寝たくないよね!」 


 はい! 先輩! 

 とは言えない、チキンな俺。



「リーチュン。私は男性と同じ部屋で寝るのはちょっと……。もちろんサクセスさんを信頼してないわけではありませんが……。」 


 シロマは、不安そうにしていた。

 俺の信頼は……うん、ないな。

 だって俺、覗き魔だし……。 



「そうだろそうだろ! そうに決まっている。愛し合う2人が同じ寝床になるのは当然だ。シロマよ、よく言った!」 



 シロマの言葉にイーゲのテンションがあがった。 

 しかし言わせてもらおう。 

 愛し合っているはずがないだろ、馬鹿野郎が! 


 しかし困った……。

 とても困った……。


 俺は、しばらく葛藤をし続けるも、泣く泣く妥協案を提案した。



「俺は……俺は、ゲロゲロと寝る。ゲロゲロは可愛いが魔物だ。今後は、もっと大きくなるだろう。だから、3人は一緒の部屋で寝てくれ。」 


 イーゲは、俺の決定を聞いて絶望的な顔をすると、ゲロゲロを睨みつける。


 だが、ゲロゲロも負けずに睨み返した。 



 ゲロォ! 



 そして俺の決定により、シロマがホッとした顔をしている。

 どうやら、安心したようだ。 

 仲間を不安にさせるわけにはいかないよな、これで良かったんだ。



「そうですね、そうしましょう。」


「サクセスがそれでいいならアタイは文句ないわ。」 



 シロマがそういうと、リーチュンも渋々それを認めた。


 別にリーチュンだけは、俺の部屋でもいいんだぜっとは流石にこの雰囲気じゃ言えない。



「まぁ明日からまた森に行ってダンジョン探索だし、今日はゆっくりと休もうよ、みんな。」 


 そう言って、全員の部屋割が決まると、俺は、宿屋に入って静かに一夜を明かすのであった。

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