第7話 レンタル馬車

 翌朝、俺達は朝食を食べた後に冒険者ギルドに寄った。 


「おはようございます、ルルーさん。魔石の換金をお願いしたいのですがよろしいですか?」 



 俺が声をかけると、ルルーさんは俺の隣に二人の女性がいる事に気付く。 



「おはようさん。どうやら仲間が見つかったみたいさね。こんなに早くパーティメンバーが見つかるなんて運がいいさね。しかも若い女性とは……君も悪い男だねぇ~。」


「いや、あははは。つい成り行きで。」 


「それはそうと魔石だったさね。ほれ、出してごらん。」 


 

 そう言われて、俺は水の魔石110個と風の魔石30個をルルーさんに渡す。 



「こりゃまた随分狩り込んださね。いいパーティを見つけたもんさね。ほれ昨日渡した布巾着をだしな。」 


 

 どうやらルルーさんは、今回の魔石はパーティで狩った戦利品と勘違いしたらしい。 

 まぁ、昨日冒険者になったばかりの俺がソロで集めたと言っても信じられないだろう。 

 俺が巾着袋を渡すと、ルルーさんがそれにゴールドを詰め込んでいく。 



「全部で145ゴールドさね。確認しておくれ。」


「大丈夫です、信頼してますから!」 


「だめさね、ちゃんと換金額は確認しなさい。あたしゃだますつもりはないけど、こういう事はしっかり目の前でやるのが冒険者の基本さね。」 



 そういうものなのか……。 

 まぁ、金に絡む事はしっかりしないといけないか。 



「はい、わかりました。確認します。」 



 俺は言われた通り布巾着の中身を確認すると、しっかり145ゴールド入っている。 



「素直なのは良い事さね。じゃあまた魔石が手に入ったら持って来な。後、これからはゴールド増えたら夜に酒場にも来るんだよ。他の冒険者とも交流するといいさね。それとももう必要ないさね?」 



 ルルーさんは、リーチュン達を見て言った。 

 まぁ、パーティでこれだけ狩れるなら十分だと判断したのだろう。 

 だが、社交辞令は忘れない。



「はい、わかりました。是非またあの美味しいビールを頂きたいと思います。」 


 

 俺はそれだけ言うとギルドを出た。 

 現在の所持金は115ゴールドと今回の換金額145ゴールドを合わせて260ゴールド。 


 ニッカクラビットの魔石は1個3ゴールドだったみたいで、スライムの6倍だ。 

 お金にも大分余裕もできた事だし、とりあえず遠征に必要な物を買って行こうと思う。 

 とはいえ、冒険初心者の俺には何がどれくらい必要かわからない為、二人に相談した。



「そうですね、森を抜けて町まで行くのに大体1週間はかかると思います。仲間の捜索も考えると最低10日分の食糧は必要かと。それにそれだけのアイテムを持っていくには馬車があったほうがいいです。馬車があれば、その中で寝る事もできますから。」


「アタイは野宿でも構わないよ。まぁでも物運ぶのは、かったるいわね。」 



 二人から話を聞くに、馬車は必須のようだ。 

 でも流石に馬車は買えないだろうな……。



「食べ物は何とかなるにしても、馬車を買うお金はないなぁ。」 



 俺がそれを口にすると、シロマが提案した。 



「冒険者ギルドで貸し出しをしているはずです。聞いてみてはいかがですか?」 



 どうやら冒険者ギルドは馬車をレンタルしているらしい。 

 そうとわかれば、早速レンタルしに行こうじゃないか。 

 というわけで、もう一度ルルーさんのところに向かう。 



「すいません、馬車ってお借りすることはできますか?」 


「ん?。馬車かい? 1週間50ゴールドで貸すことはできるさね、でも流石にまだ遠征は早いさね。やめときな。」 



 どうやら今ある金で足りるようだ。 

 しかし、ルルーさんの顔は渋い。 

 心配してくれているのだろう。 



「はい、だけどこの子達の仲間を捜索するのにちょっと日数がかかりそうなんですよ、だから馬車はどうしても必要で。2週間分お借りしたいのですがダメですか?」 


「そういうことなら仕方ないさね、どこまで行くんだい?」 


「北の森を捜索した後に、北の町テーゼに立ち寄ろうと思ってます。」


「それなら馬車はテーゼの冒険者ギルドに返却してもかまわないさね。」 



 まじか。

 いちいち借りたところに戻さなくていいのか。 

 ラッキー。 



「そうなんですか!? ありがとうございます。それではこちらが100ゴールドです。」 


「あいよ、じゃあ少し待っとくれ。外に用意しておくから。」 


「はい!」 



 馬車のレンタル料を払った俺達は、しばらく冒険者ギルドの中で待機し、馬車の準備ができた頃合いを見てギルドから出た。 


 すると、ギルドの前には、ホロ付きの荷台がついた立派な馬車が用意されている。 

 荷台を引く馬も毛並みが良くて、力強そうだ。 



「おお、立派な馬車だな。」


「そうですね、馬も元気良さそうですし、良い馬車を貸していただきましたね。」 


「運転はアタイに任せてよ! こう見えて馬車の運転は得意なの!」 


「助かる。よかったら後で俺にも教えてもらってもいいかな?」 


「モチ、オッケーよ。でもアタイの指導は厳しいからね!」 



 今日のリーチュンの笑顔も素敵だ。 



「ははは、そりゃ楽しみだ。それじゃあ荷物を積み込んで早速出発しよう。」 



 こうして俺達はリーチュン達の仲間こと害虫を捜索するために北の森に向かうのだった。

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