第6話 冒険者カード
「とりあえずこれで一安心ね。ありがとうサクセス君。」
「いや、当然の事をしただけだから……。」
俺とリーチュンは無事に町まで着くと、早速シロマを休ませるために宿屋に戻った。
当然リーチュン達は別の部屋を取ったのだが、現在俺はリーチュン達が休む部屋にいる。
そう、女の子二人と一つの部屋にいるのだ。
さっきから緊張感が半端ない! 自然と口数が減ってしまう。
「ところでアンタ、どうしてアタイ達を助けてくれたの?」
俺が黙っていると、リーチュンが話しかけて来た。
「いや、なんか寝てたら声が聞こえて……それで気がついてたら走ってた。そっちもなんであんな見た事ないモンスターに囲まれてたんだ?」
「そっちじゃなくてアタイはリーチュン! リーチュンって呼んで! アタイ達は4人パーティだったの。ちょっと前まで、ここより北にあるテーゼって町から、森の中の洞窟に向かってたのよ。でも、その途中でモンスターに囲まれて逃げて来たってわけ。二手に分かれたんだけど、しつこく追いかけられて、あの草原まで行ったところで囲まれたって感じかな。マジで死ぬかと思ったわ!」
なるほど、そう言う事か。
どうりであのレベルのモンスターが草原に現れたわけだ。
てっきりあのレベルのモンスターも、急に湧いて出てくるのかと思って冷や冷やしたぜ。
なぜなら余裕ぶっこいて寝てたからな。
「ん? じゃあ他の二人とは合流してないのか!?」
「うん、アタイ達も必死だったからね。 1人はドワーフの戦士でもう1人は魔法使いのエルフなんだけど……。無事なのを願うしかないわ。」
心配そうな表情で悲しく話すリーチュン。
その顔も素敵だべよ。
なんとか力になってあげたい。
「それで、そいつらをリーチュン達は、助けに行くつもりなのか?」
「うん、当然! 仲間だからね。まぁお互い町の酒場で出会ったばかりだから、別にそこまで情があるわけじゃないけど、見捨てるって事は自分も見捨てられてもいいって事だからね。」
カッコいいなぁ……。
こういうのが冒険者っていうんだろうな。
しかもクソ可愛いいし……。
「そうか。なら、俺にも手伝わせてくれ。丁度パーティには興味があったんだ。」
その言葉を聞いたリーチュンは、大喜びでその場でジャンプした。
そして俺は瞬きせずにある物を見つめている。
着地と同時に揺れる二つのスイカだ。
す、素晴らしい!
「ほんとに!? ヤッタァ! アンタ凄い弱そうだけど強いみたいだからマジ助かるわ!」
弱そうで悪かったな!
だが、裏表なく正直に言われるのは嫌いではない。
それに、こんな可愛い子と過ごせるチャンスを見逃す程、農家の子供は甘くねえぜ!
絶対この手であのスイカを収穫してやる!
そう心に強く誓ったその時、ベッドで寝ていたシロマが目を覚ました。
「ん……んん! は! リーチュン!? リーチュンはどこ!?」
「シロマ! よかった、気が付いたのね! 回復してくれてありがとう! アタイは元気よ! あ、この人は私たちを助けてくれた人でサクセス君っていうの。ここはサクセス君が泊まっている宿屋よ。」
シロマは、リーチュンの説明を聞いてしばし考え込むと、その大きな瞳をさらに大きく見開き、俺の事をじっと見つめる。
え? 何?
「サ、サクセスだ。サクセスって呼んでくれ。」
「サクセス……さん? もしかしてあなたは……あの時の酷い動きの人ですか!?」
ガクッ……。
いきなり酷い動きって、そっちの方が酷くね?
この子も随分とまた正直でいらっしゃる。
まぁそれはそうと、よく見るとこの子も可愛いな。
だが、あっちの方はパパイヤくらいか。悪くはない。
「動きが酷くて悪かったな……なんせ昨日冒険者になったばかりだから当然だ。」
俺の言葉にリーチュンが驚く。
「嘘でしょ!? だってあれだけのニッカクラビットを昨日今日冒険者になった人が一人で倒せるはずないわ! サクセス、アタイ達の事が信用できないのはわかるけど、それはいくらなんでもわかる嘘よ。」
「ん、冒険者カードみせて欲しい? 私達のカードを先に見せるから」
リーチュンと違い、シロマは冷静だった。
まぁ別に見せるくらい、いっか。
「あぁ、構わない。」
俺がそう言うと、まずはリーチュンが俺に冒険者カードを渡す。
「はい、これがアタイのよ。」
リーチュン 武闘家 16歳
レベル13(総合85)
力 25
体力 15
素早さ 30
知力 5
運 10
「次はあたしですね。どうぞ見て下さい。」
シロマ 僧侶 16歳
レベル12(総合80)
力 10
体力 15
素早さ 7
知力 38
運 10
ほほう、2人とも同い年か。てっきりシロマは年下だと思ってた。
「じゃあ次は俺のだな、ただカードの内容は誰にもいわないでくれ。」
俺は二人にカードを渡す時、一応警告だけはしておいた。
なぜならば、俺の能力はチートスキルに普通と違う。
これが周りにばれた時、どうなるかわからない。
「わかったわ!」
「当然です。」
二人とも素直に同意したことから、俺はそれを信じて二人にカードを見せた。
サクセス 戦士 16歳
レベル7(総合325)
力 65
体力 65
素早さ 65
知力 65
運 65
「レベル7って嘘でしょ! ってかなんなのこのステータス! アンタもしかして伝説の竜人かなんかなの?」
「ん、これは……勇者よりも凄いかもです。こんなの見た事ない……。」
俺のカードを見た2人は予想通り驚愕していた。
当然の反応だ。
俺だって未だに信じられない。
「とりあえず見せろと言うから見せたけど、誰にも言わないでくれよ。」
「わかったわ、詳しくは詮索しないわ。アタイは強いならそれでかまわないし。」
「私は知りたい……。けど人には言えない秘密があります。だから聞かないです。」
ほっ……。
良かった、この二人なら信用しても大丈夫そうだな。
「あ!」
その時、俺はある事に気づいた。
魔石を拾うの忘れている!
「サクセスさん、どうしたのですか? 大丈夫です、私もリーチュンも誰にも言いません。」
「いや、そうじゃない。あのウサギの魔石を拾うのを忘れてた。」
「それならアタイが拾っておいたよ。 はい!」
そう言ってリーチュンは緑色の魔石を30個俺に渡す。
実は気づかなければそのままガメようとしていたリーチュンだったが、今後も助けてもらうわけだからそれはやめた。
そうとは知らない俺は感謝する。
「マジかよ! サンキュー! 助かった!」
「何言ってんのよ、もう! 助けられたのはアタイ達! それにそれは、サクセスが倒したんだから当然サクセスのもんよ!」
この子、まじ女神!
親父……遂に伝説の巨乳女神に会えたぜ。
いつか自慢してやるから長生きしろよ。
「この恩は必ず返す!」
俺はそれだけを言葉にする。
いつまでこのクールキャラを保てるだろうか。その内、すぐにボロが出そうだ。
「いえ、恩を返すのは私達です。今はまだ何も返せないですが、必ず返します。」
「そうね! 明日仲間達を見つけたら必ず返すわ!」
「え? リーチュン、探しに行くの?」
リーチュンの言葉に驚くシロマ。
「当然じゃない、サクセスも手伝ってくれるってさ。」
「本当ですか? 本当にいいんですか?」
シロマは驚きながらも、俺に確認する。
「あぁ、構わない。明日はまずギルドに行って魔石を換金する。それが終わり次第、食料を買って捜索に出よう。とりあえず今日は二人ともゆっくり休んでくれ。」
「そうね、アタイはもうクタクタだよぉ。」
「私はさっきまで寝てたけど……そうですね。明日に備えて寝る事にします。」
明日の予定も決まったところで俺は立ち上がった。
「じゃあとりあえずまた明日な。俺は他の部屋をとってあるからそっちに行くよ。」
颯爽と二人の部屋から出て行く俺。
決まったな!
「サクセス! ほんとありがとねー!」
「ありがとうございました、また明日よろしくお願いします。」
二人の感謝の言葉は、俺に当然届いた。
美少女に感謝されるって気持ちイイ!
恋の予感がするぜ!
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