【第1章(30話)完結】ガンブレード・ヴァルサス ~ゲームで世界一になる物語~
四ツ谷
第一章 esports同好会 入会編 GET THE GUNBLADE
プロローグ 僕が生まれた日 BIRTHDAY
第1話 人生最初で最後の入学式に、僕は【嘘】をつく
二十一世紀中期、
超小型半導体の進化と共に開発が活溌に行われてきた
それらは現在は『デバイス』と総称を変え、用途により『
それに加え、光りよりも早い素粒子、『アステラス』を利用した新たな超光速通信(ウルトラ・ライトスピード・トランスミッション)と世界中に配備された小型無線基地局『
そして、極め付きが現代社会の基盤とも言えるインフラシステム、『アーティフィシャルインデリジェンス』――通称『AI』の誕生。
このAIは、僕らの生活を明確に、親密に、丁寧に寄り添うことになる。
例えば、二十一世紀に起こっていた交通事故はAIによる交通誘導や自動運転、デバイスによる自動検知警告等により、そのほとんどが未然に防がれている。
あらゆる仕事がAIによって補助され、効率化されていくことで、大人が仕事に縛られ続ける時代は終わりを迎えた。。
すべてがデータ化され、クラウド化され、
それでも、変わらないものはある。
例えばそれは、桜が舞い漂い、アスファルトに積もる季節。
暗く孤独だった中学最後の冬の試験を乗り越えて。
色と温度を取り戻した世界の中を、僕らは自らの足で一歩一歩を踏みしめる。
光る赤と金の藤の葉の校章を胸に。
まだ硬く重たい制服と、まだ知らない人の視線を受けて。
教壇一つと、複数の机と椅子が並ぶ新たな学び舎で。
「僕の名前は本多 秋良です。身長162cm。体重45kg。視力は両目共に良好。髪は少し癖があって、朝は鏡の前で左右に跳ねた髪を直すのが、
僕は県内でも有数の進学校『赤藤高等学校』に入学した。
そして今は、クラスメイトが集中して見つめる中、自己紹介というものをしている。
三分間で、できる限りクラスメイトに自分を伝える――というのが担任からの最低原則(テーマ)ということで、僕は受験のあった二月以降ほとんど使わなかった脳を再起動し、とにかく必死だった。
「得意教科はたぶん現代文と日本史と、ちょっと偏った知識の英語? なのかな。苦手な教科は数学と化学……と、体育。特に球技が苦手で……あっ、いえ、走るのも苦手でした」
少しだけクラスに笑いが起こることにホッとする。
僕は勉強は苦手だったから、受験勉強は苦労した。
足は遅いし、運動神経もないから体育祭とかはいつも肩身が狭い。
つまり、どこの学校のクラスメイトにいる冴えない奴というのが『
「好きな食べ物はハヤシライスとエビチリ。苦手な食べ物は、魚の目が怖いので焼き魚」
担任より指定された三分まであと少し。頭に思いついたことを話していた僕だが、『名前で始めること』と、『最後は趣味で締めること』だけは前もって考えていた。
「趣味は――」
でも、ここで僕は言葉を詰まらせる。
クラスメイトの視線が自分に集中していることを意識し、静けさが重い教室で、最後の言葉を止めた。
「趣味は、えっと……『映画鑑賞』です」
人生でたった一度きりの――僕の高校生活のスタートは、『嘘』から始まった。
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