第200話 信長に報告

大和の国、そこは宗教色が強く、統治しづらい。

それに加え、三好家家老松永久秀が未だに残り勢力を持っていた。

「大和に進軍するというのか?」

「ええ、少し金峯山寺に行く必要がありまして、大和を抜ける必要がございます。」

「参拝で進軍か、お主らしいが大和は豪族も手強く、松永久秀も侮れぬ相手であるぞ。」

「手出ししてくるようなら攻めるだけにございます。」

「そのような事を堂々と言えるのはお主ぐらいであろうな。だが気をつけるのだぞ。

ワシからも援軍を送りたい所ではあるのだが・・・」

信長は越前に朝倉、四国には三好が敵対関係にあり、丹波の波多野、若狭の武田とも良い関係とは言えない。

その上、伊勢、近江は滅ぼした旧勢力の不穏分子が未だに燻っている状態であり、領地こそ広くなったものの、その地盤は脆弱な物があり、各所に兵を配置しなければならない状況が続いていたのだ。


「大丈夫です、いざとなれば国元から援軍を呼びますし、無理な行軍はしませんよ。」

「お主なら大丈夫だとは思うのだが・・・

そうだ、信忠を連れて行ってくれ。」

「信忠殿を?信忠殿は未だ子供のような気がしましたが?」

「先日、元服させたばかりとはいえ、ワシの嫡男だ、お主と一緒に有りて親睦を深めるのも良かろう。」

「一応危険な場所になると思いますが?」

「なに、そこで命を落とすようならそれまでの事よ、それよりお主と親睦を深めれぬようなら後継者として相応しくないであろう。」

信長としても先日聞いたヒロユキの発案にあたり、次世代を意識するようになっていた、その為にもヒロユキとの交友は絶対的な物がある。


「わかった、信忠殿を預かりましょう。」

「うむ、将としての有り方をおしえてもらいたい。」

「できるだけ頑張ります。」

「うむ、誰か信忠を呼べ。」

信長は小姓に命じてすぐに信忠を呼びつける。


「父上、お呼びと聞きまかりこしました。」

「来たか、ヒロユキと一緒に大和へ向かってもらう。」

「はっ!ご命令しかと承りました。」

「なお今日よりヒロユキの事をワシと同じと思い、その言葉を聞くようにせよ!」

「えっ、父上と同じですか?」

「そうだ、このヒロユキはワシより優れた者であり、ワシの妹婿でもある、若輩のお主が従う事になんの問題がある?」

「お、お言葉ですがヒロユキ殿は他家の御方、父上と同じように命ぜられるままというのは問題があるのでは無いでしょうか?」

「無い、少なくともヒロユキの考えはお前の及ぶ所ではない。

側にいてよく学ぶがいい!」

信忠が多少なりの反論をしたのが気にいらなかったのか、信長の機嫌は一気に悪くなっていた。


「信長殿、信忠殿がいうのも一理ある、怒る言葉ではありません。

ですので共に大和に向う道中、気になった事は質問してください、信忠殿は今は学ばれる時期にございます。

私から何か学ばれるのもよろしいのではないでしょうか?」

「ヒロユキ殿から学ぶ・・・」

信忠は短慮で否定したが、目の前にいるヒロユキは一代で甲斐、信濃、三河、遠江、駿河、相模、武蔵、上野の八カ国を瞬く間に支配下に収めた英傑である、そのチカラは信長以上というのは世間の評判を聞かずともわかっている。

その男から学べる機会というのは何物にも代え難いのでは無いのだろうか・・・


「失礼致しました。

ヒロユキ殿から学べるという事を軽く考えておりました。

たしかにヒロユキ殿から学ぶ事は多くあります。

どうか師としてご教授くださいますようお願い申します。」

「固いよ、私は信忠殿の叔父になるのですからもっと気楽にしてください。」

「ならばヒロユキ叔父上、私の事は信忠とお呼びください。」

「わかりました信忠、一緒に大和にいきましょう。」

「はい。」

俺と信忠の会話を嬉しそうに眺める信長の姿がそこにはあった。

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