第197話 参内
上京した俺は以前と同じ郊外の砦に入り一息いれるのだが、すぐに二条晴良がやって来る。
「これは二条殿如何になさいました?」
「修理大夫殿、なぜ此度もこちらに滞在しようとなさる、貴殿なら京のどの寺でも滞在出来るであろう。」
「寺に間借りして気を使う、いえ、使わすぐらいなら以前に建てたこの砦のほうが兵も気兼ねなく使えますゆえ。」
「しかしのぅ、帝を始め京の民も修理大夫殿の上京を首を長くして待っておるのじゃ、なるべく早く参内してくれぬか?」
「わかりました、明日にでも参内したいと思います。」
「おぉ、無理を言ってすまんな。
ここだけの話、変わる情勢に帝も不安なのじゃ、修理大夫殿だけを心から頼りになされている。
どうか帝に安らぎをお与えください。」
「わかりました、非力ではありますが私が話すことで少しでも御心痛が安らぐなら喜んで参内致します。」
到着したその日に参内要請が来るのは予想外ではあったが、元々参内予定はあったのでそれを前倒しにする。
「よくぞ、来てくれたな。そなたの来訪を余も心から歓迎しよう。」
翌日参内すると宮中の奥に案内され帝から直接御声がけを頂く。
「勿体無いお言葉にございます。」
「うむ、修理大夫には相談したき事があるのだ、聞いてくれぬか?」
「私でよろしければお聞き致します。」
「そなたにしか話せぬ話だ。」
帝が軽く手を振るとその場には帝た二条晴良、そして俺の三人のみとなる。
「お人払いとはそれほどのお話でしょうか?」
「うむ、そなたが関東を制止、上杉が北陸、織田が機内を制止た事で天下はあらかた治まりつつあると思う。」
「はい、まだ相手はいるとはいえ、ある程度の治まりは出来たと云うことに間違いございません。」
「そこで聞きたい、織田は如何なる天下を望もうとしておるのだ?」
「先日、信長殿とその話を致しました、信長殿に幕府を開いてもらい天下を治めてもらいたいと願っております。」
「源、足利と同じような形か?」
「そのようになると思います。」
俺の答えを聞き帝と二条は一度顔を見合わせ、二条が俺に話しかけてくる。
「修理大夫殿、そなたが織田を討てば朝廷の名の下に天下を治めれるのでは無かろうか?
必要であれば詔を出す事も可能であるぞ。」
「お止めください、私に信長殿と争うつもりはございません、それに私と信長殿が争う際に一番危険に晒されるのは京におられる帝と公卿の方々と存じます、もし織田と土御門が争う事態が起きましても静観願いたいと思います。」
「しかし、我等が静観すれば土御門が滅びるとしてもか?」
「はい、織田と土御門の争いが起きるとしたら何世代か後の話になるでしょう、その際どのような流れがあるかはわかりませぬが片方の肩を持つという事は朝廷の命運を片方に賭けるという事にございます。
仮に土御門が負けた場合、朝廷への被害は甚大な物になるでしょう。」
「修理大夫はそれで良いのか?
余達にそなたの手助けは出来ぬのか?」
「大丈夫です、そのような事態が起きないように手筈を整えるのが私の役目にございます。」
「修理大夫がそこまで我等朝廷の事を考えてくれているとは・・・」
帝の瞳から涙がこぼれるのであった。
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