第181話 旧武田軍

「伝令!北条軍が陣を敷き待ち構えております!」

信永のもとに偵察隊から報告が上がってくる。


「信春どう見る?」

信永は副将に据えた馬場信春に質問する、この戦、大将として名前こそ信永の軍であるものの、信永自身戦の経験が少ない事は自覚している、その為信玄のもとで経験を積んできた馬場信春を頼りにし、全ての事を相談して決めていた。


「どうやら我等を一叩きしてヒロユキ様に備えたいのでしょう、まあ出てくるしか生き残る道はありませぬが・・・」

「信春どうした?」

よく見ると信春は怒りを堪えているように見える。

「なに、北条の将は我等なら勝てると思っているのでしょう、舐められたものですな。」

「信春先程それしか生きる道が無いと言っていたではないか?」

「そうですが、我等武田軍を野戦で倒せるなどとは、至って心外ですな。」

馬場信春は武田家の・・・信玄の家臣だった事に誇りを持っている、信玄が生きている時に野戦で挑もうなど考えもしなかっただろう、それを行うという事は自分達を恐れていない、ひいては信玄の事を忘れているとのいう事だ。


「飯富昌景、お主はそれを許せるか?」

「否、飯富の赤備えの恐ろしさを思い出させてやりましょう。」

飯富昌景は闘志を燃やしている、北条は武田随一の猛将の力を存分に味わうことになりそうだ。


「だが、敵には充分な備えがあるように見える、安易な突撃はこちらの被害が大きくなる。」

「信永様、敵の備えは我等が陣に攻撃を仕掛けた際、横に伏した兵による側面攻撃であります、知らずに仕掛ければ被害が出るやも知れませんが、既にこちらに知られた以上伏兵の意味はございません、逆にこちらが側面攻撃といきましょう、良いな信綱、昌輝。」

既に戸隠の忍びから、北条の陣配置は判明している、北条は風魔を失った事で情報線において惨敗しているのであった。


真田幸隆は息子達に兵を預け伏兵に伏兵を仕掛けるつもりであった。

「父上、お任せあれ、真田の武勇お見せしましょう。」

真田信綱、昌輝兄弟も戦意が高い、彼らはもっと戦に出たいのだが、ヒロユキは古参である三河者を中心に戦を組む事が多い、ここで武勇を見せ、帯同を許されるようになりたいと考えていた。


「みんなの士気が高いな、この戦、負けるわけにはいかない、頼んだぞ。」

信永は武田旧臣達に声をかけていく、彼らは再び武田菱を輝かすために奮起するのであった。

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