第180話 上野

「綱成がいないだと?これは好機だな、信永様、我等も北条に攻め込みましょう。」

馬場信春は風魔からの知らせを受けて、別動隊大将武田信永に進言する。

現在北条家で恐ろしいのは北条綱成だ、才ある多目元忠が着任しているとの報告は受けたが北条綱成がいるのといないのでは恐ろしさが違う。


「そうだな、信春、幸隆戦略については二人に一任する、ヒロユキ様の御命令通り確実に進軍するのだ。」

「お任せください。業盛殿調略の進み具合はどうですか?」

真田幸隆は長野業盛にたずねる、業盛は元々上野の豪族である、長年の繋がりは強い絆として上野に残っている。


「かなりの範囲で色良い返事をもらっている、どうやら北条の統治は失敗していたようだな、北条の直臣以外は土御門家につくことを受け入れている。」

「それは重畳、今が攻める時にございますな。」


「よし、全軍出陣だ、武田の強さを今一度天下に知らしめよう!」

「「「おお!!」」」

義信、信廉の二人のせいで武田家の家名は地に落ちてしまっていた、武田信玄を支えてきた家臣達はそれを苦々しく思っていた、今回、別動隊とはいえ武田の旧臣で多くを固めた信永の軍にはヒロユキの配慮から武田家の家紋、武田菱と信玄の旗、風林火山を上げる事を認められている。

今一度武田家の汚名返上をする機会が与えられたのだ、武田旧臣達の意欲は高かった。


「来たか、氏繁殿まずは土御門の勢いを削いでおきましょう。」

多目元忠は侵攻してくる土御門軍を信濃との国境で待ち構える。

北条氏繁は箕輪城にて籠城することを考えていたが、多目元忠からするとそれは悪手であると考えた、箕輪城はヒロユキが武田軍にいた時に一度落とした城である、弱いところもバレている可能性があるうえに、箕輪城に籠もっても周辺を落とされれば負けは決まるのだ、最善策は信濃の山中を抜け疲労している所を襲撃して勝利することだ、一度でも勝てば上野の日和見している豪族達も北条に味方するであろう。


それに土御門軍の強さはヒロユキが操る動物達が引き起こす混乱とマサムネが見せる人並み外れた武勇である、近年戦ったどの武将も二人に負けたと言っても過言ではない、それが今回二人とも相模方面にいる、相手をする主君北条氏政には悪いがここは信濃からの軍を叩くまで耐えてもらうしか無い。


信濃からの軍を短期決戦で叩く、これは北条が生き残る為に必須の策だ。


多目元忠は信濃からの軍勢を今か今かと待ち構えていた。

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