第179話 一歩ずつ

「ついに崩れたか。」

小田原に入った俺のもとに北条家臣達から寝返る書状や実際に降って来た者がいた。

その中には北条家臣の中でも大物の松田憲秀が含まれていた。


「憲秀殿が降ってくるとは思いませんでしたね。」

「恥ずかしながら、全主君北条氏政は仕えるに値しない者にございます、あのまま城にいれば誅殺されることになったでしょう。」

「そこまで家中は荒れているのですか?」

「ヒロユキ様の威光に家中でも戦えない事を理解しているものがおります、それが若い氏政には許せぬことなのでしょう。」

「なるほど、憲秀殿の降伏を認めましょう、他にも降りそうな者がいたら調略をしてもらえますか?

領地を持つことは認めませんが俸禄でよければ受け入れます。」

「俸禄ですか、それは降る者は減るかと。」

「減るならそれで構いません、今降るなら現在の地位に準じた俸禄を与えますが、戦後降る者に配慮することはありません。」

攻めなければ河越城に籠もる氏政に危険性は少ない、無理に降伏してもらわなくとも、放置した城を落し領地を広げればいいだけなのだ、なんなら河越城だけ残して長期戦でも構わない、こちらには戦いを継続する余裕は充分にある。


降ってくる者の領地を差配しつつ、確実に北条家の支配力を削り取っていく、中には住民が奮起し、降ってくる所まで出てくる。


「氏政の人気が無いな。」

「氏政が増税したからな、住民達は従う意味を見出さなかったのだろう。」

マサムネは相模に滞在し、北条の動きを調べていた為に住民達の降伏にも理解を示していた。

「北条の強みを自分で手放したか。」

「まあ気持ちもわかるけどな。」

マサムネから見ても本拠地であった小田原城が落ちた時点で軍費のみならず全ての資金か足りなくなる、それを賄う為にも増税は致し方ないのだが、隣は税が安く、開発も進むとあらば、住民達も不満に思うだろう。


「マサムネ、こちらに降った地域に軍を入れて、リクさんは街道の整備を、俺は補給の差配をする。」

「わかった、まだ仕掛けなくていいんだな?」

「まだ、いいよ、圧力をかければまだ戦況は動くだろ?

ただ警戒はしておいてくれ。」

「任せろ。」

マサムネは軍を率いて前線に向かっていく。


「さて、俺も働きますか。」

俺は猪を使った荷車を開発する、リクが作ったローマンコンクリートの道と合わせて使い輸送力を格段に向上させる。


「駿河に貯めてある食料を小田原城まで運べ。」

小田原に溢れる程の食料を用意し、周辺の降ったばかりの領地に食料を配布し飢えることが無いようにする、これにより北条からの増税で苦しんでいたものを救うのと同時に土御門家の領地と認識させることが出来る。


「焦る必要はない、一つずつ確実に行えばいい。」

俺は一歩ずつ北条に迫っていくのであった。

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