第176話 北条攻め

俺は信長と別れ、吉田まで帰ってくる。

「此度はみんなご苦労さま、お蔭で帰ってくる事ができた、それもみんなの努力のお陰だ、恩賞は後で渡すから今はゆっくりと休んでくれ。」

俺は兵士を含めたみんなに声をかけ、軍を解散する。


数日後、主だった者達が吉田に集まり会議が開かれる。

「ヒロユキ、これからどうする?」

小田原から帰ってきていたマサムネがみんなを代表して聞いてくる。

「三河兵は少し休ませてやろうと思うが、マサムネの軍は動けるか?」

「任せろ、いつでもいけるぞ。」

「ならば、北条攻めと行くか。」

俺は帰ってくる途中も報告書に目を通しており、現状北条から奪い支配地にしている伊豆、相模が安定してきたことを知る、足場が固まった以上先に進める。


「今回、三河、遠江は兵を動かさない、代わりに駿河、相模、甲斐、信濃の兵で北条攻めを行う。」

「殿、信濃の兵を動かして大丈夫でしょうか?」

本多正信が心配そうに聞いてくる。

「今更上杉が裏切ってくるとは思えない、甲斐、信濃の兵で上野に攻撃を仕掛ける、別動隊の大将は信永に任せる。無理はせず確実に進軍してくれ。」

「はっ!」

信永は任せられた大役に少し身震いをしていたがそれ以上に大役に挑む覚悟が感じられた。


「駿河、相模の兵は俺とともに川越に向かい進軍する、マサムネ先陣は頼むよ。」

「了解だ。」


「守綱は三河を治めてくれ、戦に参戦した者達には恩賞と休暇を与えてくれよ。」

「かしこまりました。」


「さあ、北条と決着をつけよう。」

俺の号令で土御門軍は再び動き出すのであった。


一方、小田原を奪われたあと、ヒロユキに対抗する為に北条氏政は領内に新たな税を制定して軍費を集めて、各地に城の補強の為の普請をかしていた、それは北条傘下に入り長くない武蔵、上野の民にとって受け入れ難いものがあった・・・

「くそっ、なんだよこの税はよ、北条は税が安いって言ってたのは誰だよ。」

「愚痴るなよ、上がやる事だから・・・」

「そもそも、賦役も多いし、いい事なんて何も無いじゃないか。」

「おい、聞かれたらまずいだろ。」

「どうせ何もできないさ、居城の小田原を奪われて逃げて来るような連中だぞ。

あーあ、土御門家が早く統治してくれないかな。」

「土御門は民に優しいと聞いたけど本当なのか?」

「税がそこまで安い訳では無いらしいが普請にたいしても給金が出るし、働けばうまい飯が食えるぐらいは稼げるらしいぞ。

それに今なら新たに開墾された土地をくれるそうだ。」

「本当かよ、流石に他の奴が開墾した土地はくれないだろ?」

「いや、土御門では熊や猪が開墾するからそれを管理する人が必要とかいう理由で簡単にくれるそうだぞ。」

「そういえば聞いた事あるな、土御門のヒロユキ様は動物を使役なされているとか・・・」

住民達は噂話からヒロユキの領地になった時の事を考え始める。


「おい、聞いたか、土御門家が北条征伐に軍を起こしたぞ。」

「じゃあこっちに来るのか?」

「そうみたいだな、北条様も軍を集めだしているみたいだ。」

「お前は行くのか?」

「・・・できれば行きたくないな。」

住民達の士気は低く、北条家の徴兵は集まりが悪いのであった。

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