第175話 帰還
美濃に戻った俺と勝家を待っていたのは信長であった。
「ヒロユキ、勝家よくぞ帰って来てくれた。」
当然ながら浅井の裏切りは信長の耳も入っている、退路をたたれる危険性は信長も理解していた、その窮地を乗り越えた二人をねぎらうのは当然ともいえた。
「信長殿、我らが帰って来れたのは帰るためにその身を賭してくれた河尻秀隆殿を初め、将兵達のお陰です、どうか彼らにも労いをかけてください。」
「うむ、此度の戦に参加したものは厚く遇する事を約束致す。」
「忝ない。」
俺は礼をする。
「礼には及ばん、ヒロユキもよくぞ帰って来てくれた、お主がいなければ被害がもっと増えていたであろう。」
「勿体無いお言葉ですね、ですが先程も言ったように奮戦してくれた将兵、特に殿を引き受けてくれた勝家殿の麾下の方々のお力にございます。
彼らの事をよろしくお願い致します。」
「わかっておる、勝家、退却ご苦労!よくぞ軍を纏め戻ってきた。
そなたの武勇、その配下の者達とともに軍功帳に記載し、手厚い恩賞を約束しよう!」
「有難き幸せ、帰れぬ者達も喜んでおることでしょう。」
勝家の瞳に涙が浮かんでいた、これにより退き口は終わったのだった。
「して、ヒロユキ。
お主なら今後どう動く?」
俺は信長に誘われ岐阜城天守にて二人だけの会談をもっていた。
「信長殿の立場としては浅井征伐から入るのが良いかと、俺がそれなりに叩きましたので弱体化している事でしょう、調略で味方を作り浅井を絞め上げましょう。」
「退き口で相手を完膚なきまで叩くのはお前ぐらいだろう、だが助かるな。
しかし、良いのか、お前なら浅井を落として北近江を手に入れれただろう?」
信長は俺に酌をしながら聞いてくる。
「飛び地になる北近江はいりませんよ、それに私が京に近い地を持つと公家が騒がしくなりそうですからね。」
「欲のない事だ。」
「欲が無い訳では無いのですが、京に深く関わると余計に天下が荒れそうですからね。
厄介な事は信長殿にお任せします。」
俺は信長に次返す。
「言葉を撤回しよう、このわるい奴め。」
「天下を差し上げるのですから我慢してください。」
「ふっ、わはは・・・
お主にとって天下とはその程度のものか。」
「私は家族が平和に暮らせたらいいのです。
義兄と奪い合うつもりなどありませんから。」
「市のおかげだな、大事にしているようで何よりだ。」
「ええ、いい妻です。」
「さあ飲め飲め、今宵は飲み明かそうぞ。」
俺と信長は夜遅くまで酒を酌み交わすのであった。
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