第170話 持ち直す
「秀隆が討たれたのか!」
河尻秀隆戦死の報は勝家の元にももたらされる。
「勝家様、敵軍の攻勢強く成政様もこれ以上持たないとの報告にございます。
どうか退却の許可を!!」
「いや、今下れば被害が大きくなる、皆我に続け!鬼柴田のチカラを今こそ見せるときだ!」
勝家は本陣を上げて前線に打って出る。
「かかれ!かかれ!!」
勝家の声が前線に木霊する。
勝家の声は力強く、不思議と兵士の心に響く、下っていた士気が再び取り戻されていくのだ。
「あれが大将か!!」
長繁は勝家の本陣を見つけて突撃を行うが・・・
「貴様が秀隆を討った雑魚か。」
「雑魚とは人聞きが悪い、その秀隆は雑魚に討たれたということになるんだかねぇ〜」
長繁はニタニタ笑いながら勝家と対峙している。
「痴れ者が!この鬼柴田の恐ろしさを冥土の土産と致せ!」
「いざ参ら・・・えっ!」
柴田勝家の怒りが頂点に達し、目の前の長繁に全ての殺気が降り注ぐ。
長繁は産まれて初めての恐怖を感じる。
これから勝家に向かい突撃をするつもりなのに身体が動かない、いや、勝家が向かって来ているのに構える事も出来ず身体が震えている。
「死ね!!」
勝家の槍が長繁に届く前に乗っていた馬が本能で逃げ出す。
長繁は何も動けぬまま、馬の逃げるに任せて勝家の前から逃走するのだった。
「腰抜けが、馬の制御すらせんとは・・・
まあよい、さて次はどいつだ?」
勝家が殺気を向けると指揮官が逃げ出した事もあり、朝倉軍第二陣の富田長繁の軍も一目散に逃げ出した。
「成政、軍を纏めよ、すぐに退却する。」
勝家はこれ以上の損害が出る前に退却を選択する。
柴田軍は損害を出しつつも、朝倉軍の勢いを止めることには成功したのだった。
「秀隆殿、申し訳ござらん。
貴殿の死は無駄には致さぬ。」
勝家は死した秀隆に手を合わせる。
自身の不甲斐ない戦で死なせてしまったのだ、もし先陣を止めた時に退却すれば秀隆が死ぬことは無かった。
これまで大戦の指揮は信長が取っていた、総大将としての重みを感じるのは織田家重臣、柴田勝家といえど初めての事であった。
退却戦・・・
これからも多数の犠牲者が出るであろう、勝家はその責任の重さをあらためて感じるのであった。
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