第169話 柴田軍対朝倉軍
朝倉軍が迫る中、柴田勝家は木ノ芽峠を抜けた平地に布陣していた。
「勝家殿、この兵力では野戦は厳しいのでは。」
勝家の与力として来ている不破光治は倍からの兵力に差がある状態での野戦に難色を示す。
「光治殿が言いたい事はわかる、だが籠城した所でどうなる、背から浅井が迫るのならまずは朝倉にを叩き、怯ませた所で退却する。」
「無謀ではございませんか?」
「ワシは織田家中随一の猛将柴田勝家である、戦わず逃げるなどできん、光治殿は後陣につかれよ、我等の猛勇をご覧あれ。」
不破光治は斎藤家を滅ぼした際に織田に降った新参者でもある、勝家からすれば下手に戦い逃げられるよりは後方で退路を守ってもらった方がありがたかった。
「勝家様、先陣準備出来ました。」
「成政、いつでも行けるようにしておけ。」
「任せてくだされ、利家がいない分も拙者が頑張りましょう。」
佐々成政は前田利家の性格をよく知っている為に先に退却するしかなかった利家の無念も理解していた。
「利家も戦いたかっただろうが殿から預かった兵だ、戦えぬ者を放置も出来ん、無念でも連れて帰ってもらわねば困る。
それにヒロユキ、土御門殿も殿の大事な盟友である、このような場所で討ち死にしてもらうわけにはいかん。」
「死なれてはいかないのは勝家殿もですぞ、ここは下がりつつ、戦うのが吉かと。」
光治は退却論を変えない、浅井が裏切ったなら木ノ芽峠を死守してもあまり意味がない。
それよりは一度仕切り直し浅井を攻め落とすのを先にすべきだった。
「朝倉の出鼻をくじかねば、追撃も厳しいものになる、なに腰抜けの朝倉軍如き簡単に蹴散らしてくれよう。」
こうして柴田軍八千と朝倉軍一万五千の戦が始まるのだった。
「成政!来るぞ!」
「はっ!鉄砲隊構え・・・撃て!!」
勢いよく攻めかけてくる朝倉軍に成政率いる鉄砲隊か一斉射を行う。
先陣の勢いは落ちるものの、倒れた兵士を踏み越え朝倉軍は突撃をしてくる。
「槍隊前へ!弓隊、矢を射掛けよ、鉄砲隊は一度下れ!」
成政は矢継早に指示を出し、朝倉軍を削る。
混戦状態になるまでに少しでも削ろうとしていてのだった。
成政の奮戦もあり、兵力差がありながらも、膠着状態を作り出す事に成功する。
「秀隆横腹を突くのだ!合図を遅れ!」
勝家の狼煙が上がる。
「勝家殿からの連絡だ、行くぞ!」
河尻秀隆は少し離れた森に兵を潜ませていた。
成政が敵の足を止めたところを横から突き朝倉軍を怯ませる。
朝倉軍の先陣を指揮していた前波吉継は横からの攻撃に右往左往するだけで対処が上手くいかない、地位こそあれど戦なれしていない者が指揮をしていた結果でもあった。
「今のうちに朝倉先陣を討ち滅ぼせ!」
勝家は混乱を回復される前に先陣壊滅を命じる。
混乱する前波吉継など、いいカモである。敵の数を減らしてしまおう、そんな欲が勝家の脳裏にちらついたのだ。
本来なら、出鼻をくじいた時点で退却を行うはずだったのだ・・・
混乱する朝倉先陣を無視するかの如く、
朝倉軍第二陣富田長繁が突撃してくる。
「ぎゃはは・・・死ね死ねしねぇーー!!」
槍を振り回し敵味方関係なく突き殺していく。
そのため!混戦状態になっていた秀隆の軍が討ち取られていく。
「秀隆に退却を命じろ、予定通り、そのまま退かせろ!」
勝家は予定通り秀隆を下がらせようとするものの、前波吉継を討つために深入りしていた為に上手く退却出来ない、ましてや敵味方関係なく暴れる富田長繁に秀隆軍のみならず吉継軍も混乱、マトモに指揮が取れなくなっていた。
「おまえが指揮官かぁ〜」
富田長繁は河尻秀隆を見て不敵に笑う。
「如何にも俺が河尻秀隆だ!」
「その首手柄にしてくれよう。」
「容易く討てると思うなよ!」
富田長繁と河尻秀隆の戦いが始まる。
二人の武勇は一進一退、互角な戦いを繰り広げていた。
しかし、混乱する秀隆軍は徐々に数を減らしており、秀隆の周りからも少しずついなくなっていた。
「おまえ強いな・・・俺とここまでやり合えるとは。」
長繁は不敵に笑ったままだった。
「これでも武勇には自身があるのでな、勝てぬなら退けばよかろう。」
「くくく、誰が負けるかよ、行くぞ!」
「来い!・・・ぐっ!」
秀隆が長繁に集中した瞬間、秀隆の背後に回っていた長繁の部下の二人が秀隆に槍を突き刺す。
「ひ、ひきょうな・・・」
「誰が一騎討ちなんて言ったんだよ、俺は一言も言ってないぜ。」
「ぬかった・・・」
秀隆は自身の不覚を自覚するしかなかった・・・
「敵将河尻秀隆、富田長繁が討ち取ったぞ!!」
長繁は秀隆の首を槍の穂先に刺しを高々と掲げる。
「秀隆様!」
「ま、負けだ、さっさと逃げるぞ!」
指揮官を討たれたことにより、秀隆軍は各々逃げ出す。
「おら!さっさと追撃にいけよ!ウスノロが!」
長繁は吉継の軍に命じる!本来なら、命令権など無いのだが、乱戦していた事もあり、雑兵達は長繁の命に従い秀隆軍を追撃していく。
数の少ない勝家軍としては痛い失態となるのだった。
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