第162話 状況変化

俺は一度京に来ていた。

本来なら浅井領を通り援軍に向かうのが最短なのだが、織田の同盟者であり、浅井と明確な同盟関係にない土御門の軍を通る事を認めなかったのだ。


「手間をかけさせてすまんなヒロユキ。」

京で俺を迎えた信長が気まずそうに言う。

「まあ、膠着状態の援軍ですから急いだものではありませんし。」

「うむ、すまんな、浅井も長政が倒れて大変なのであろう、ヒロユキには面倒をかけるが許してほしい。」

「構いませんよ、それより信長殿も一緒に参りますか?」

「うむ、軍を準備してある、共に朝倉を滅ぼそうではないか。」

俺は兵士を休ますため数日京に滞在して出陣に備えたがその間に機内に動きがあった。


「信長様!三好が侵攻してまいりました!」

摂津を守っていた佐久間信盛から伝令が信長の元にやってくる。

「三好のやつめが!!」

「信長様、援軍を送らねばなりませぬな。」

池田恒興が信長に進言する。

「わかっておる。すぐに軍を向けよ!」

「信長様、勝家殿への援軍と土御門殿への対応は如何になさいますか?」

丹羽長秀は落ち着いて聞く。


「・・・勝家も厳しいと思うか?」

「長対陣が続いており、士気も低下している頃でしょう、勝家殿とて些か厳しいかと。」

長秀の言葉に信長も思案をする。

「ヒロユキは6千の兵を率いておったな?」

「はっ、6千にございます。」


「よし、ヒロユキに勝家への援軍に向かってもらう、ヒロユキなら6千あれば木ノ芽峠を落とせよう。」

「信長様それは少々土御門殿への負担が大きいかと思われますが。」

「仕方あるまい、今動かせる兵は京にいる我軍一万とヒロユキの6千なのだ。

三好の相手をヒロユキにさせるわけにもいくまい。」

「しかし!土御門殿が反発なさればどうなさるおつもりですか!」

長秀は強く反発する。仮にヒロユキが裏切った場合、本拠地の岐阜、尾張が危険に晒されてしまう。

そうなると畿内どころではない一気に織田家は滅亡の危機になるであろう。

ヒロユキは属国ではない、あくまでも対等な同盟者なのだ、長秀はヒロユキの反発を心配していた。


「ヒロユキなら大丈夫だ、ワシが自ら話をつけよう。」

長秀の心配を余所に信長は楽観視していた。

ヒロユキの勢力を考えれば当主自ら援軍などありえぬ事だった、ヒロユキ自身が来ているのは野心の無い証拠であり!少々厳しい注文をしても受け入れてくれるとの目論見があった。

当然、ヒロユキの家臣が納得出来るような報酬を用意するつもりではあったが、単独の援軍も受けてもらえると思っていた。

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