第160話 朝倉攻め

俺と景虎が帰国している最中、織田、浅井連合軍は朝倉攻めを開始していた。


「長政、よくぞワシについてきてくれたな。」

信長は苦渋の選択だったであろう浅井長政を労う。

「はっ、天下人たる信長殿につくは必定かと思いますれば。」

「その判断後悔させぬように致そう。」


長政と話している所に伝令がやってくる。

「信長様、柴田様が金ヶ崎城を攻略致しました。」

「うむ、勝家め、はりきっておるのぅ。」

「お見事ですな、信長殿は良き家臣を持っておられる。

しかし、こうなると我が浅井家も武勇を見せねばなりませぬな。」

「勇猛と名高い長政殿の武勇か、それは頼もしい。」

信長、長政ともに上機嫌で話していた。

この時は上機嫌だったのだ・・・


金ヶ崎城攻略から2か月がたった、朝倉が作った、木ノ芽峠周辺の城塞群により、侵攻が止められたのだ。

織田、浅井連合軍は数こそ多いものの、狭い山中では展開することもできず、城にこもる朝倉がしっかりと守りきっていた。


長滞陣が続くと問題も出てくる。

織田、浅井両軍に士気の低下が見られてくる。


特に浅井が連れている兵士のほとんどは農民であり、自分の田畑が気になり帰郷の念にかられている。

「長政様、このまま戦局が膠着するなら一度帰国すべきかと思われます。」

浅井家重臣、赤尾清綱が家臣を代表して長政に進言する。

「まて、そのような事をすれば信長殿の不興をかおう、今しばし辛抱致せ。」

「しかし、一度兵を帰さねば収穫に影響がございます。大軍が必要ない今の状況なら帰国も出来ましょう。」

「しかし・・・」

浅井しては元々苦しい経済状況での出兵だった、先日の馬揃えの為に多くの費用を使ったうえ、そのまま最大動員での出兵である。

短期決戦で終わっても損害は甚大だったのに、長期滞陣など、自殺行為にも等しかった。


「長政様!早急帰らねば取り返しのつかないことになるのですぞ!!」

赤尾清綱としても引くことができない、そもそも家臣達の代表で来ているのだ、長政一人の意見で結果を帰るつもりはなかった。


「・・・それでもだ、今しばし待て。」

「それがお答えですか・・・」

「そうだ、今は苦しいかも知れぬが、信長殿と手を結ぶ事を考えれば、この事は今後良い関係づくりになる。」

「皆、長政様はご病気になられた。捕縛致せ。」

兵士が入ってきて長政を縛り上げる。

「な、何をする!!」

「長政様、我々はもう限界なのです。

これ以上は長政様の考えについていけませぬ、暫し療養なされてお考えをあらためてもらいたい。」

「清綱!これは謀反ぞ!」

「差にあらず、長政様はご病気なのです。

そう報告すれば信長殿とて、理解するでしょう。

さあ、長政様を隔離しろ。」

赤尾清綱の命令の元、長政は軟禁される。


赤尾清綱はその足で信長の所を訪れていた。

「信長様には申し訳ないことなのですが、主長政様が流行り病に倒れてしまいまして、領地での療養のために一時帰国を願いたい。」

「なんと、長政殿がご病気だと、それは家臣としても大変な事であろう、急ぎ戻られ療養なされよ。」

信長は自身の懐に来た者に寛大であった。

そもそも、長政自身から、信長への敵意など欠片も感じていない、流行病が嘘だと言う考えは浮かんでいなかった。


「援軍に来ていながら、武功を立てれぬこと、申し訳なく。」

赤尾清綱は深々と頭を下げる。

「お気になさるな、それより長政殿の回復お祈り申し上げる。」


こうして浅井軍は撤退する。

浅井の撤退により、数の差が少なくなった、織田と朝倉の戦いはさらなる膠着をもたらすのだった。

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